お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』 第17話を見たよ①

☆ネタバレしています☆

☆まずはネタバレなしで見たほうが、圧倒的に面白いです☆

 

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なんかビハインドシーン的なものが入ってるみたいだし、わたしDVD買ったほうがいいのかな…ここまできたら、全てを網羅すべきなのかな(笑)。 

 

さて!

17話では「ワン・ソがついに高麗の皇帝になる」というビックイベントと、それによってソを含めたキャラクター達がどう変わるか、変わらざる得ないのかっていうところが描かれます。 劇中「皇帝が変われば、世も変わる」ってソは言うけれども、今回ほど皆の立場が一斉にガラリと変わる回はないでしょうね。

 

興味深いのは、挙兵から皇位確定までの間で強い印象を残すのは、皇帝になるソよりもワンヨやファンボ母娘であること。ワンソには強い意志があり、皇帝になることもわかっているので、むしろ皇位が奪われて窮地に陥る人たちが何を思い、何を選ぶか(または捨てるか)、っていうことがしっかりと映し出される。究極の選択を、差し迫った一瞬でしなければならない、その残酷。

ワンソは皇帝になってから、一気に存在感が。「この人、光宗だわ…」っていう説得力がありますね。カリスマ。

 

そして、ソの皇宮襲撃&皇位獲得という一大事に全く関われなかったウクとジョン。この二人が皇宮にいなかったからこそ反乱は決行された、というのが韓国版での筋書きです。それほどまでに、ウクとジョンはソと敵対し、かつ皇宮で影響力を持っていた。それぞれの理由でソの即位に納得いかない二人は、物語をさらに大きく動かしていくことになります。

 

こちらは、リアルタイムで見た直後の感想。ネタバレあり、たぶん勘違いもありですが、変な臨場感があるので(笑)、もし現在進行形で見てる方が読んで下さるならこっちが楽しいかもしれないです。

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17話を堪能するために、10話を見返してみよう!

ワンソの皇位奪略には、劇中の全キャラクターが関わっている、と言っていいと思います。全ての登場人物たちの全ての行動が必然だった。それまでの大小たくさんの出来事と、計画と、偶然と、とっさの判断。それらのどれが欠けても、ワンソは皇帝になれなかったでしょう。

 

だからこそ、17話は書くのが難しい。登場人物の数だけの思惑が、そこで交錯しています。色々起こりすぎて、どうまとめるべきなのか…。

そんな矢先に、気づいたのです。この「歴史に全員参加してる感じの難しさ、前にもあったよな…」と。ふと、私は自分で書いた第10話のエントリを見直しました。…もうほんとぞっとしましたよね。

第10話のテーマは「決心」。ウクとヘスが婚姻を決め、ワンム暗殺計画が進み、何よりワンソがヘスを守る為に毒杯を飲み干して、別格の皇子として完全なる優勝を果たした、あの回です。皆が自分の希望、思惑、利害を原動力にして、心を決めていた。

そして、第17話で行われていることもまた「決心」なのです。しかもここでの決心は、10話での決心に見事に対応しています。彼らの決心は時を経てどんな決心にたどり着くのか。変わるのか、変わらないのか。この2つの回は意識してリンクさせているはず。

ワンソ、ウク、ヨ、ヨンファ、皇后ファンボ氏、ジョン…そしてオ尚宮。17話の地点で10話を見直すと、「うーわ、この人こんなこと言ってるよ!!」の連続。恐ろしい…恐ろしいですよ、このドラマは。伏線は全編いたるところに散りばめられており、物語の終盤なのでどこをを見返しても繋がりは見つけられるのですが、それにしたってこの2つの話は丸々繋がりすぎている。ここまで構造的に対応させているとは…。あの時「優勝」したワンソは、この回で皇子として本当に優勝するし。皇帝になるのです。よくできている!

まぁ実際の意図はわからないですけれど笑(と言いつつ、私はかなり確信を持ってるよ!)、とにかく17話は10話と比べて見ると更に面白いので、おすすめです。

 

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というわけで、鳥肌な第10話について書いた時と同じように、キャラごとの印象的なセリフと考察。

前置き長くて、すみません汗。このあとも長いです…。

 

ヘ・ス①

 

「嫌です。でも別れるのはもっと嫌」 

 10話ではワンソに皇宮の外へと無理やり連れ去られたヘス。ソの愛の告白もうまくいきませんでした。16、17話では、ヘス自らの意思でソを追いかけ皇宮の外へ。ヘスから想いを告白し、二人は結ばれます。

 「俺が皇帝になるのは嫌か?」というソに、ヘスは「嫌だ」と。初見の時は、「スや、ここまできてゴネてる場合じゃないよ!」と思ったけど(笑)、今見るとこの正直さがいいし、納得です。皇宮の外で正直にならなくてどうする、っていうのもあるけど、ヘスというキャラは「正直に生きる」っていうテーマを背負っている気がするから。「いい子」になっちゃいけない。

ヘスは、皇位が絡むとロクなことがないって身をもって知っている。オ尚宮にもその危険は叩き込まれています。にもかかわらず、皇帝になることを応援するのは自分のため。ワンソが皇帝になればずっとそばにいられると信じている。ヘスは自分の為に生きる決意をしているのです。

 

「皇帝になられます。私にはわかります。それでも絶対に、絶対に、兄弟を討ってはいけません」

「(もう血の君主として歴史に残りません。私が協力します)」

ヘスの中の人は未来人だから、そりゃ「私にはわかります」なのですよ。それよりも心配なのは「兄弟殺し」。ワンソには「血の君主」に絶対なってほしくないし、これ以上皇子達にも死んでほしくない。ただ、彼女はワンソの未来を変えられるとも信じています。

ヘスは「自分さえ変わらなければ、相手は変わらない」っていう人だけど、ソに関しては「場合によっては相手を変えよう」としてるのですよね。ウクと一緒になろうとしてた時は、「第8皇子様は変わらない、この人となら幸せになれる」っていうどちらかというと受け身な態勢だったのに対して、今度は「私が幸せを守るんだ、作るんだ」みたいになってる。この気持ち自体は素晴らしいけど、一方で、それはどこまで可能なのか、許されているのか、っていう問題がもたげてくるのだよなぁ。

 

 ワン・ソ①

「兄弟で殺し合うのを止めるためだ。だが、王城を築いたら、君主が変われば世の中が変わると知った。人に命綱を握られず、俺の手で不条理を絶てるなら、皇帝に必ずなりたい」

 ワンソは、父には距離を置かれ、ワンムからもヨからも利用される存在でした。皇帝に命を握られ、自由を奪われ続けた人生。「首輪を外したい」ってジモンにも度々言ってたのですよね。自分のためにも、ヘスのためにも、兄弟のためにも、世のためにも、もはや皇帝になるしかソに道はありません。

もともとワンソは皇位に興味がなかったし(顔の傷のせいでその資格さえ認められていなかった)、ヘスの為なら皇宮を離れてもいいとも言ってきた。しかし、ウンを斬ったことが決定打となり、皇帝になることに目覚めます。遷都の責任者として皇宮を離れていた間にも、虎視眈々とその準備をしていた。ワンソは皇帝になることを強く決心しています。

これだけの高い志をもって皇位を狙いにいったソ。兄弟を殺す「血の君主」が言うセリフとは到底思えないが…。

 

ワン・ヨ

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 「よく考えてみたら、始まりはお前だった。兄上とウン…ウンの妻。それに病まで…。無数の死者が俺を苦しめるのも、全部おまえのせいだ!俺が兄弟を殺してでも皇帝になろうと決めたのは、お前がソの傷を隠して俺の座を奪った故だ」

 雨乞い回(8話)でヘスがソに化粧をしたのは、ソを助けるためであり、当時恋仲だったウクの元へ帰るため。雨が降れば、そのお祝いとして官女は解放してもらえる可能性がありました。人助けであり、自分のためでもあった。ヘスは「いいこと」をしたはずでした。

しかし、「いい」側面しか持たない出来事などない。ヘスが善意を施し、自身の幸せを求めたことが、ワンヨにとっては人としての一線を越えさせるきっかけとなってしまった。意図せずして、ヘスは彼に強烈な危機感を与えていたのです。結果、何人もの命が犠牲に。

…ちょっと待て。これからヘスはまた、まさにその「ソを助け、自分の幸せを求める」ってことをまたしようとしているじゃないか。

「誰かを、とりわけ大切に思う人を助けること」や「自分の幸せを追い求めること」は悪いことなのか。でも、人を傷つけるかもしれないと恐れてばかりいたら、何もできない。幸せになることもできない。そもそも、幸せって何?

ワンヨは皇帝になることを望み、実際にその座を得ましたが、それで幸福を得たとは思えません。即位後、彼は罪の意識にさいなまれ、その負担は心臓に。その責は本当にヘスにあるのでしょうか。

 

 

 ワンソ率いる反乱軍が迫り、ジョンへの禅位を半ば強制する皇后ユ氏。

「…では…俺は…?俺は息子なのか?…母上にとって俺は何?ただ虚栄を満たす存在?皇帝ではない息子はもう必要ないのか!!」

「これで…ソの気持ちがわかる気がする…。皇太后を追い出せ!!」

ワンヨにとって母の愛は、いつだって条件付きの愛でした。期待に応えなければ、愛されない。母に捨てられたソの気持がわかる…つまり彼は今、母親に捨てられようとしているのです。少なくともヨはそう感じてる。

皇后を部屋から追い出すヨですが、ヘスは無理やり引き留めます。彼はひとりになりたくないし、誰かに思いをぶつけないわけにはいかない。(ヘスは「皇帝が茶を欲している」と呼ばれ、この場に居合わせています。ヨは自分の死を予感し、本心を打ち明ける相手としてヘスを選んでいる)

 

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「結局あいつが全て手に入れると思った。俺がそんなに悪いことを?俺も捨てられるかと怖かった。ソが捨てられたように放り出されそうで…。母上が言ったのだ。俺は完璧で…無欠だと。なのに、お前のせいだ!お前がでしゃばりおって!」

ワンヨが皇位にこだわり続けたのは、母親から捨てられたくなかったから。健気。だけど、健気も度を過ぎると毒になる。

ワンヨはあくまでヘスを責めます。もちろんヘスがソの顔の傷を隠さなければ、っていうのはあるけれど、この局面まできても尚、ヨは母を憎みきれないからっていうのもあると思うのですよね。それでも愛されたいっていう。母からソへの虐待を目撃するという、間接的な虐待にさらされ続けたにもかかわらず。いえ、だからこそ。

ヨは人の弱点に敏感でした。それは彼自身が弱点を見抜かれることを恐れていたからでしょう。ワンヨの真の弱点は、母親の愛を欲する無防備な心。自分は完全ではないと認められない心でした。その弱点が彼を狂気へと走らせた。

「あいつが全て手に入れると思ってた」っていうのは、雨乞いの段階でヨはソの高すぎるポテンシャルに既に気づいてますからね。ソが本気で皇位を狙ってることもウヒからの報告で知ってたし、ヘスと想い合ってることもわかってる。ソは「皇位を心」という両立不可能な二つを、今まさに手に入れようとしています。ヨにとって、これほどの不条理はありません。

 

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 心臓発作に苦しみながら、遺言を書いたワンヨ。

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ヘスに託そうとするが…。

 

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「俺はただ、生きようとしただけだ」

後にわかることですが、この遺言には誰の名前も書かれていませんでした。「誰も選ばない」ということを選んだ。ヨは「皇帝である自分」を捨てることができなかったのです。皇位だけを目指した人生。皇位を譲ることは、自分の人生を否定することになってしまう。母親にも捨てられてしまう。皇帝のまま死ぬことが、彼の最期の決心。この決心は弱い心から生まれた、やむにやまれぬ決心であり選択だったように感じました。皇帝の意地っていうふうには、もはや私には見えなかった。どうなんでしょうね。

手段を選ばず、皇帝までのぼりつめたワンヨ。皇位を目指し、その座に君臨することがが、皇后ユ氏の息子として生き延びる、唯一の方法であり理由でした。その為にはどんな死の淵からも這い上がってきたし、人々を冷酷に傷つけた。そうしても「生きたいと思うことは罪なのか」。かつてヘスは「生きたいと思うのは罪じゃない」と言ったけど、ヨには何も言葉をかけることができません。

皇位なしでは生きる方法も理由もないワンヨは、自滅のような形で亡くなります。心を捨てながら生きてきたからこそ、ワンヨは心臓を病んだのかもしれません。また、心臓を患って亡くなった、ということが次なる伏線にもなっています。

 

皇后ファンボ氏

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 「お前の決定によって、私も心を決める。ウクを見て知った。お前に教えなかったことを。皇宮の主になりたければ、何かを諦めよ。今決めるのだ。天下を手に入れ、心を失うか。心を手に入れ狭い世界で生きるか」

「私は…ウクを捨てる」

「あとに引けぬ選択だった。黄州ファンボ家はこれから、皇帝ではなく、皇后の排出に尽力する。状況がかわったゆえ。私はウクの母であり、ヨンファの母でもある」

 

第10話でウクはヘスとの婚姻宣言しますが、それを母が許したのはウクが「皇位はいらない」と言ったから。皇位と心。2つは同時に手に入らない。皇后の考えは一貫しています。

ヨンファと皇后ファンボ氏は「ソかウクか」という問題に直面しますが、それはもはや「どちらにするか」と迷うようなものではありません。生き残るならば、選択肢はひとつ。あとは覚悟の問題です。

皇后は「ウクと連絡がつがず、大将軍であるパク・スギョンまでがワンソの挙兵に合流した」と娘から聞いた瞬間に、息子を捨てる覚悟を決めています。ヨンファがウク以上の野心家であることはわかっているので、「皇位か心か」という問いを娘に投げかけること自体が息子を捨てるも同然。このシーンの皇后の表情はすごかったですね。心を鬼にしてる感というか、鬼になった感が半端ない。

かつてウクから言わば捨てられかけた母娘。今度は二人がウクを捨てます。ウクの未来は、またも他者の選択により決まってしまいました。

 

ただ、これは皇后ユ氏にも言えるけど、皇后ファンボ氏は単純に息子を捨てたかというと、そうではない。息子に皇位皇位への可能性を捨てさせることで、一族の未来だけでなく息子自身の命を守ろうとしてるとも言えます。悲しいけれど、捨てることでしか、守れないときもある。

だけど、息子たちにとっては「皇位」こそが生きる理由であり、それを奪うことはあまりにも酷なことでした。

 

母娘は無血開城をすることで、一族の新たな舵をきった。そこにウクはいない。

 

「なによりも、ウクの変化が残念であった。道がそれるほど、つらいのはお前だ。いっそ皇宮から遠のくがいい」

かつて兄の婚姻話にヒスを起こしたヨンファに、「取り越し苦労で自分を苦しめるな」と諫めた皇后。今度はウクを諫めます。この言い分は正論なのでしょう。ウクを思いやってるとも言える。しかし、10話でのヨンファに対する態度と同様、母はウクの心に寄り添っていません。

こんなにブレずに自分の倫理を守ってきた皇后でさえ、このあと理知を失っていく。かつて「政はうんざりだ」と言っていた皇后ファンボ氏もつまるところ、「心でなく皇位」を選んだ一人になったのです。

 

 ヘ・スとワン・ソ

 

 

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ヘス:「新皇帝にご挨拶を!万歳!万歳!万々歳!」

 ソ:「陛下は私に皇位を譲り、崩御されました」

ヘスとソは、知らずしてワンヨを追い詰めていた。そして皇位を奪います。その獲得方法は実はかなり強引なものでした。二人は共犯であり、同じ業を背負います。

ヨが絶命した直後に、ソが皇帝の部屋にたどり着く。ヨの手に握りしめられたままの遺言を見たソは、ヘスが中身読んでないことを確認すると、すぐさまそれを破り捨てます。遅れて駆けつけた皇后ユ氏、ジモンは、ヨが亡くなっていることに呆然。ソも含めた誰もが言葉を失う中、ヘスが意を決して行動に出る。それが、この挨拶。

この時点までにワンム、ワンヨの皇位獲得の瞬間を見てきたので、歴史やしきたりを知らずとも、この挨拶こそが皇位認定の合図であることを視聴者はもう学んでいます。

何の証拠もないなかで、ソが皇帝になる最後の一手を出したのはヘスでした。そして、それにある意味「乗っかった」ワンソ。

 

この17話でワンソは割とサラっと皇帝になります。皇位獲得まで、セリフもほとんどないくらい。ソは誰とも争わずに皇位を獲得してしまう。

なぜだろうって考えるに、ワンソがどうやって皇帝になったかを詳細に見せるのは、この物語の目的ではないのですよね。韓国版とインターナショナル版で、皇位略奪の経緯が若干違うのがずっと気になっていたけど、それは本質的には全然問題じゃなかった。大事なのは、登場人物の心の動きです。そして、それによって何を表現するのかということ。

だから、まだ話数が残るなかで、あっという間にワンソは皇帝になるのだと思います。皇帝になった後のソの心こそ、描く必要があるのです。

 

 

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こうしてワン・ソは高麗第4皇帝・光宗に。

 

 

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 野望が現実になりつつあるヨンファ。彼女は「自分で未来を切り開ける」と信じており、その点に限ると実はヘスと同じタイプ。

 

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 ペクアは喜ぶが…。

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兄ワンソの譲位に疑念の目を向けるジョン。 眼光!

 

ワン・ウク①

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 「(機会だ。次の皇帝は俺だ)」

 「馬の支度を!ワン・シンニョム様に会う!」

ヨが心臓発作で一時意識不明になった直後、ウクは有力豪族であるワン・シンニョムに会いに行きます。それが、 大事な時にウクが皇宮を離れていた理由でした。ウクの運命を決定づけたのは皇后ファンボ氏の決断だけど、ウクのこの判断がなければ、ワンソの反乱は違うものになっていたかもしれない。

ウクは「自分がいま宮を去ったら何が起こるのか」ということを危惧するよりも、皇位のための後ろ盾を得ることを優先させました。いつも形式にとらわれて失敗を繰り返してきたけれど、ここにきても彼はまた同じ過ちを犯す。結局、形式よりも強引に欲しいものを一気に狙いにいったワンソが皇帝になりました(何しろ遺言すら残っていないなか、ソは皇位を獲ったのです。ソには協力者がたくさんいたっていうのもありますが)。

この「 (機会だ。次の皇帝は俺だ)」っていうナレーションはインター版のみ入っています。

 

「私に対する期待を捨てたのですね」

ソの皇位獲得に伴い、「黄州ファンボ家はこれから、皇帝ではなく皇后の排出に尽力する」と宣言した母に対して。幼少期から、一族の「皇帝になれ」という過度な期待にさらされてきたウク。一度はその期待を捨てようとしたが、ヨンファのため、母のため、一族のために、結局は捨てることができなかった。ならば、と今度は自らの意思で皇位を目指したものの、ソが皇位を獲ったことで、人生をかけた戦いは強制終了させられてしまいました。

結局、皇子は一族の駒でしかないのか。ワンヨとウクは重なる部分が大きいです。10話で「俺たちは案外合う」とヨが言っていたのは、この意味においてなのかもしれない(だが、それだけじゃない)。

 

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 ソの即位式を欠席し、皇后の座を狙うヨンファに責められるウク。

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「西京に着いた時シンニョム叔父は亡くなったあとだった。ただちにソの一派に監禁されて解放されたら、いつのまにか皇帝は代わり、逆賊を追い出した逆賊は英雄になった。俺が望んだ座にワンソが就いた。それを見ろとは残酷過ぎる」

いまや、すべての努力と我慢は泡となって消えました。ワンソの即位式にも姿を見せず、部屋にこもるウク。

ヨはワン・シンニョムが病に倒れていることを知っていました。ソが皇位を狙っていることも。スパイであるウヒから聞いていたのです。だからこそ余計にヨは追い詰められていました。

しかし、ウクはそのことを知らず。ヨはウヒからの情報を決してウクには言わなかった(たぶん誰にも言ってない)。それが、皇位争いの最中にいる、と言うことなのでしょう。誰も信じてはいけない。

ウクはソの反乱に抵抗することすらできなかった。完全なる無駄足。皇位交代劇のあいだ蚊帳の外にいた、このむなしさ。ウクはつくづく「持ってない」。そしてなにより、一番皇帝になってほしくないワンソが、自分の思い描く形で皇帝になってしまったというとてつもない敗北感…。即位式なんて出られるわけないじゃないか!

この人は色々悪いことに手を染めましたけれど、序盤のロイヤルな頃から、暗黒化した後まで、終始報われていません。ウクって人生の報われなさを表現してるキャラだと思うんですよね。人生のキツイ部分を背負う存在。

じゃぁ、どんなに頑張っても報われないかもしれない人生とどう折り合いをつけるのか、っていう話になるんだけれども…。

 

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ウクは意思を持って行動すると、必ず間違える。全てを失い、気力のないウクに再び火をつけるのはヘス。言うまでもなく、ヘスはウクの一番火をつけてはいけないところに火をつける。そしてウクはまた間違える。

 

つづきます。