お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』 第19話を見たよ① 選択と理由/卑怯者のウォン

☆最終話までの展開を含めたネタバレしています

まずはネタバレなしで見たほうが、圧倒的に面白いです

 

<<暖かく見守ってくださった皆様、本当にありがとうございます>>

 

 19話です!

『麗〜』は全20話ですが、「この19話が実質の最終回なんじゃないか?」と思う程に、ラブストーリーとしてのパートも、政治ゲームとしてのパートも、ある種の顛末までが一気に描かれてしまいます。いつになくハードです。かなり因果応報な展開になっていますね。でも因果応報ってなに?「運命か意志か」というテーマも重くのしかかります。そこにはキャラクター達の人生をかけた選択がありました。チェリョンの遺言にあったように、「何にする価値があるかどうかの判断を自分でする」のです。

 

ヘス「私がどう生きようと、選ぶ権利は私にあります」(6話)

ワンソ「お前は自分が生まれた理由を?こんな世界でいつまで生きるのか問うたことは?」

ヘス「あります。最近もたまに考えます。でも答えはありません。好きで生まれてはないけれど、どう生きるかは自分が決めるのだから。カッコよくも悪くも生きられるけど、人の言いなりにはならない。そう決めました。楽に生きている人はどこにもいません。目には見えなくても、皆苦労しています」(8話)

 

生きていると、自分の意志とは関係なくやらなければならないこととか、突きつけられる厳しい現実っていうのがあるわけですよね。もう、これは時代とか場所とか関係ない。あぁ人生のままならなさよ。

そのままならなさに対抗する術があるとしたらそれは、自分が納得のいく選択をすること。たとえたった一つの選択肢しかなくても、選択の余地がないように思えても、その理由を自分で与え直すことで選択の意味自体が変わることもあります。運命じゃない。単に意思を持っているだけでもない。人生を決めるのは選択です。

 

「どんなに追い詰められようとも、最後の選択権は人間にある」ということをこのドラマはずっとやってきたし、それこそ本当にたくさんの物語が同様のメッセージを伝えています。人間の選択は多くの不幸を生み出しもしますが、少なくとも「自分の人生は自分で決める。誰にも決めさせないのだ」というふうに生きることができれば、世界の見え方はきっとかわってくる。それが私たちに与えられた自由であり、希望です。

19話の最後、ヘスとウクは何故笑顔を向けあうことができるのか、ワンソがなぜ涙するのか、っていうのはその点でも大きな違いがあったからなのだと思います。

 

と、いきなり頭でっかちな感じになっていますけれども(笑)。19話はものすごく面白いです。実際に見た方はおわかりだと思うんですが、ストーリーテリングのうまさね!キャラもトピックも多いのに淀みがなく、しかし見せるところはちゃんと見せる。序盤に「ヘス・ワンソが婚姻しなかった」問題をさり気なく何度も思い起こさせてたり、ウク命乞い中のヘスとのシーンを回想として処理してたりとか、すごくうまい。ここでは物語の流れを前後させながら紹介しますが、前後させているのが本当に申し訳ないくらい、情報を出す順番が考え抜かれています。

 

えーとそしてですね、1回のエントリーでまとめたかったんですがもちろん終わらず、試行錯誤やもろもろの末(苦笑)、結局とりとめなくだらだらと書いている感じになってしまいました。初志貫徹どころか、有言実行もできなのが情けないねぇ。そして長いわりにあまり進んでいません汗。いつも偏見だらけではありますが、解釈のひとつとして楽しんで下されば幸いです(若干日和っております!)

 

ヘスの選択理由にはグラデーションがある

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19話は「ヘスが宮を離れる決意をしてから実際に離れるまで」というのが物語の大枠です。となると、ヘスは今まで以上に存在感を発揮してもいいはずなのですが、ヘスの心情描写は非常に抑えられている。特に出官の理由ですよね。ヘスは「出官したい」と何度も訴えていて、そのたびに理由は語るものの、言葉少なく、どこか抽象的です。一貫性もない。

しかも、ヘスは17話で皇帝ゆえの孤独に陥るワンソに「私は去らない」と言っていたのですよね。その愛情はどう見ても本物だったのに、18話の終わりには出官を決意してしまう。チェリョンはヘスにとってあまりに大事な人物だったけれども、「心変わり早すぎ??」っていう印象を与えかねない展開でもあります。ワンソだって全然ヘスについていけてないですよね。それで、ヘスの心がわからないままに、ヘスとウクが婚姻を約束するほどの仲だったっていう過去を知ってしまうから、「あぁそうだったのか」とそこに全部理由付けをしてしまう。(それにしたって、ワンソはヘスとウクの関係に気づくのが遅すぎるよ

 けれども、「選択」という観点から19話を眺めてみると、その経緯が最も丁寧に描かれているのはやっぱりヘスだと思うのです。

 

ワンソが皇帝になってから二人の関係には影が忍び寄ってる感は大いにありましたが、皇后ユ氏を巡りすれ違いは進み、チェリョンの処刑が決定打となって、もう二人はもとには戻れないところまで来ています。それに気づいたのがヘス。まだ気づいていないのがワンソですね。ここから19話は始まります。

ヘスは直感的に「もうこれは無理だ」と確信するわけですが、話が進んでも確信が覆ることは何も起こらない。むしろ出官の意志は強化されていきます。ヘスが出官を望む理由はひとつではないんですよね。感情からくる理由、理性で考えた理由、そして状況が決める理由がぽつりぽつりと提示される(最後の決定打はドーン!って感じですが…)。そのどの理由もヘスにとっては説得力のあるものでした。その経過を1時間でじわじわと見せていく。

さらには、20話になって明かされる理由もあります。ヘスには秘密があるわけですよね。大事な選択をしている人には、隠された理由がある。チェリョン、ウク、ウヒ、ジョン皆そうです。そして、その秘密は全ての人に知らされることはありません。

  

ヘスの選択における理由のグラデーションっていうのは、心の複雑さそのものです。「○○だから!」とは簡単に言えない。大きな選択をしたときに理由を聞かれたら、「いろいろあって…」とか言いますよね。その「いろいろ」はあまりにもたくさんあって、全て言葉にすることはできません。時には矛盾するようなことも並んでいるかもしれない。人を傷つける理由もあるし、自分でもうまく整理できない時もある。でも全部本当なのです。

 

そういう心の感じかたを丁寧に扱った結果、ヘスの描き方はどこか曖昧さを残したものになったんだろうなぁと思います。曖昧さがあるほうがリアルだもの。人の心というのは本当に一筋縄ではいかないです。いつも色んな気持ちがごちゃ混ぜになっているのが、心だよ。ヘスは自ら出官を望み、その選択に後悔はないけれど、ワンソが恋しすぎて悲しみがこのあとずっと止まらなかったりね。でも、「じゃぁ出官しなければよかったじゃん」とはどう考えたってヘスには言えないじゃないですか。もうヘスと一緒に泣くしかないですよ(ジョンはえらい)。

 

また、選択理由に多様さ、複雑さがある一方で、たったひとつの理由、わかりやすい理由ひとつで選択してしまうこともあります。こちらのほうが圧倒的に悲劇的ですね。それをするのがワンソ。11話におけるウクとかもですね。ワンゴン、皇后ユ氏、ヨンファあたりもそう。その多くが皇位と絡んでいます。(皇后ユ氏はちょっと違うかな…愛を常に求めていたからな…)

 

あとはそうですね…出官の理由に関してもうひとつ前置きするならば、そもそもヘスは何故ワンソとの婚姻を望んでいたのか、っていうところを押さえ直すと少しわかりやすくなるのかな。

ヘス「皇女様(ヨンファ)にとって婚姻は目的かもしれませんが、私は違います。あの方は私によって幸せを感じ、私はあの方によって自分に価値がある人間だと思える。だから婚姻したいのです。皇子様が変わらないなら、私は変りません。先に離れません」(15話)

 

チェリョンの処刑があったことで、ヘスはもう「自分に価値がある」とワンソには思わせてもらえることはありません。チェリョンが殺されたのは、ワンソがヘスを守るためでもあったから。自分のせいで、大切な人が殺されてしまった。ヘスはこれが一番いやなんだよ。「愛する人が妹を殺した…」とヘスは絶望します(18話)。ワンソは変ってしまった。人を残忍に罰する力を得てしまった。だから、ヘスも変わる。先に離れる。

 

ワンソとヘスが別れるどんな理由をみても、結局つまるところは「ワンソが皇帝になったから」に行きつくんだよなぁ。そして、ヘスはワンソが皇帝になるのを助けているんだよなぁ。これを因果応報とは言いたくないけどなぁ。しかも、状況が悪化してもなお、二人は互いを想ってるんだよなぁ。想いがあるからこそ、別れちゃうんだよなぁ。

はぁ…。

 

 チェリョンだから、ヘスは望んだ

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ぺクアにジョンへの伝言を託したヘスは、茶美院で一人悲しみに打ちひしがれたままです。そこへやってくるワンソ。前置き長すぎましたが(汗)、ここから19話を見ていきます。

 

「具合が悪いのになぜここにいる?行こう。今日は何を話すか楽しみにしていた」

ワンソは手を差し伸べますが、ヘスの手は動かない。

「あの部屋には戻りません」

「チェリョンのためにそんな態度をするな。チェリョンはお前をだましていた。一度も誠実ではなかった」

ヘスはチェリョンが優しく手を握り励ましてくれたことを思い出します。手にはその感触がまだ残っている。

チェリョンは私に誠実でした。何と言われようとも、誠実だったのです」

「だから、俺でなくあの娘を信じると?」

「出官したいです。ここから離れたいです。これ以上耐えられません」

「では俺は?俺が手放すとでも?お前は俺から決して離れられぬ」

二人は互いに一歩も譲りません。

 

ワンソにとってチェリョンは、ヘスとの幸せを脅かす存在でした。チェリョンを排除すれば、安心してヘスと幸せな時間を過ごせると思っていたでしょう。「今日は何を話すか楽しみにしていた」と言うほどに。でも全くの逆効果でした。ヘスはワンソの手は求めず、チェリョンに触れた自分の手に触れる。ワンソが言うように、ヘスはチェリョンを選びます。

 

チェリョンがヘスの手をぎゅっと包むように握ったのは、ワンソがヨンファと婚姻してしまいヘスが落ち込んでいた時(18話)。ヘスはものすごく悲しんだけれど、ワンソにも、ジョンにも、チェリョンにも「私は大丈夫」「元気だ」としか言えませんでした。婚姻を諦めることは自分で選んだから。悲しくても、そう言わざるを得なかった。

 

だけど、チェリョンはヘスが大丈夫でないことに直ぐ気がつきます。

この時、チェリョンもまた口には出せない大きな悲しみと不安を抱えていました。ウォンのために大罪をも犯すも、婚姻は望めそうにもない。宮を出られるか、明日どうなるかさえわからない。

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彼女たちはただ親しいだけでなく、共通点があった。官女であり、皇子に恋をし、婚姻を望み、そしてその夢は果たせそうにもないという共通点。チェリョンの方が事態はかなり深刻ですが、それでも二人の境遇はどこか似ています。

(また、二人とも皇子様から漢字を教えてもらっていたっていうのがね!おなじ構図でね!ヘスはウクからだけどね!だからこそ、ヘスはワンソの字をなぞり書き、文字を書くことに別の意味を与えたのかな…)

ヘスとチェリョンは「私は元気です」という言葉で、手を触れあうことで、共に母に祈ることで、心をシンクロさせます。理屈抜きに、感情を共有していた。

 

ワンソもジョンもヘスを心配していたけれど、「共感」という意味でチェリョンにかなう者はいません。ワンソが婚姻したことでどれほど悲しみに暮れたか、ということを真に知っているのはチェリョンだけです。チェリョンは「お嬢様には私の心がわかる」と書き遺しましたが、チェリョンもまたヘスの心がわかっていた。

 

また、これ以前のことで言うと、 二人は互いの身代わりになっています。これも大きいと思うのですよね。

4話で二人はヨンファにぶっ叩かれましたが、チェリョンがヘスの代わりにワンソの髪飾りを返したことで罰を受け、次に「チェリョンのせいではない」とヘスが罰を代わりに引き受ける。

ワンム殺しはチェリョンが実行犯ですが、ヘスがその責を負わされます。まぁこれはヘスがチェリョンの犯行に気づけなかったという責任もあったと思うんですけどね。でも、なぜ気づけなかったかというと、ヘスはチェリョンに対し強く自己投影していたから。こんなこと自分は絶対しない。だからチェリョンもしない。

 

ヘスとチェリョンとでは、一体何が違うのでしょう。

ヘスにとってチェリョンは自分だったかもしれない女の子だったし、チェリョンにとってヘスは自分がなれるかもしれない女の子でした。二人を分かつのは身分だけ。けれども、その身分の違いは二人の人生を全く別のものにします。

ヘスにはそれもわかっているから、チェリョンの罪を知ってなお「あの娘の罪は奴婢に生まれたことだけ」「チェリョンも人を愛しただけなのに」と心を寄せ続ける。

(追記:実際にヘスは宮の身分最下層に落されたこともあるのですよね(12話)。自分だったかもしれない、どころじゃない。二人は本当に立場的には入れ替え可能だった。でもヘスはどんなに好きでも罪は犯さないと思うのです。そうなると二人を分かつのは身分だけじゃなくなるなぁ。)

 

ワンソは「チェリョンのためにそんな態度をするな」と言うけれど、チェリョンのためだからこそ、ヘスはこんな態度なのです。ワンソよりもチェリョンを信じるのは、チェリョンはヘスでもあるから。ヘスはチェリョンを選ぶと同時に自分自身を選びます(だからこそ、ヘスが自分の手に触れるカットはうまい)。

 

繰り返しになりますが、これはワンソがヘスを愛しているから起こったことでした。

ヘスは被害者である一方で、極端に言えば加害者でさえもある。

もう一緒にはいられない。

 

(追記:ただ、チェリョンは罪を犯しているからな…単純な被害者でもないのですよね。誰もが加害者であり被害者ならば、罪ってなに?っていう話でもある。ほんと難しいなぁ。この辺りはウヒのお話とつながってる気がしますね。)

 

ワンソは本当に孤独になっていく

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18話でチェリョンが手を握りヘスを励ましたシーンはとても重要だったわけですが、その時ワンソが何をしていたかというと、その二人の様子を遠くから見ていた。確かに、遠くから見れば、チェリョンがヘスをそそのかしているようにも見えてしまうのですよね。チェリョンが裏で何をしていたかを知っていれば尚更。ヘスがチェリョンに心底救われていたなんて、思いもしない。手の届くごく近い場所からしか見えない真実があるんですね。最終回でもそうですが、大事なことをワンソは自分の目で確かめようとはするんです。でも見誤る。

 

このあたりから、ワンソの描き方が更にシビアになってきます。

ワンソは偏見やレッテルに苦しんだ人です。ヘスに出会うまでは、誰にも自分をまっすぐに見てもらえなかった。

だけどここきにて、今度はワンソ自身が人や物事をまっすぐ見れなくなってしまうんですよね。愛があるからこそ、不安と特に後半は嫉妬から、ヘスが絡むと冷静な選択をできなくなっていく。自分で見て判断しているからこそ、激しい思い込みが生まれます。

(ワンソの政治的判断はいつも適切なのだと思います。ただ、プライベートが絡むと途端に選択を間違える。でも、皇位と心は両立しないから、どっちにしたってどちらも満足させるような選択などないのかな。つらい…。)

 

ワンソは「自分vsヒドイ世の中」っていう世界感で育った人物です。あまりに孤独すぎて、他者がいない人生でした。だからヘスをネサラミと呼び、ヘスを自分と同化させていた。ヘスは他者じゃなく、自分でした。

だけど、ワンソが皇帝になったこと、そして妻を持ってしまったことで、二人の同化は困難になっていく。二人の立場はあまりにも離れてしまいます。

そして、皇后ユ氏とチェリョンの死によって、ワンソはヘスが「他者」であるということにやっと気づき始める。ヘスは自分と同じように物事を見てくれないし、自分以外にも大切な人がいる。どんなに近しくても、他者の心を完全に知ることなどできない。これはペクアとの関係でも言えることですね。こんな時こそ、ワンソはヘスを信じるべきですが…。ヘスを「他者」と見始めた今、ワンソはヘスをどう信じたらいいのかわかりません。厳密には、ワンソはまだ「自分」しか信じたことがないのです。

 

ヘスから出官の意志を告げられたあと(やっとドラマ本編の話に戻ります)、ワンソはひとりヘスの部屋に佇みます。そして、用意しただけに終わったヘスの花嫁衣裳を見つめる。

二人の関係はあくまでも「恋人」です。だから、なんの縛りもない。この先どうなるかは分かりません。ワンソもわかっています。ジョンがヘス奪還の為に突くのもここですね。ヘスは誰のものでもない。

 

それもあってか、ヘスがウォンに「ワンソの女のくせに調子にのりやがって」的なことを言われた(後述)とジモンから聞きつけるやいなや、ワンソはヘスのところにすっ飛んでいく。

「ジモンに聞いた。お前を側室にする」 

「その必要はありません」

「愛人よりましだ。俺が聞きたくない。まずは皇后の下の夫人に任命し、子が生まれたら第二皇后に冊封する」 

「私は地位が欲しいのではありません」 

「ジモンと相談して、名前を決めよ」

「陛下…」

「意地を張るでない。言い争うのはやめよう。ずっと離れていたのだ。些細なことで時間を無駄にしたくない」

 しかし、ヘスはワンソの手を振り払います。

 

「ウォンが酷い言い方をしたとはいえ、今更慌てて婚姻をしようだなんて、同化できない不安からヘスを所有しようとしているのだ!」というのは意地悪な見方かもしれないけれど、いずれにせよ「ヘスを守りたい」「失いたくない」という思いが、ワンソを動かします。でもヘスが元々婚姻したがったのも、宮を離れたいのも、そこじゃないんだよ。「些細なこと」とか言っちゃってるしさ。その些細なことが問題なのに…。

 

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ヘスも「ワンソわかってない」感がつらかろう…。でも、出官したい理由を全て言うと、ワンソを傷つけることにもなってしまう。そして自分も傷つく。

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ワンソの手を振り払うヘス。終盤でこの立場は逆転する。

言うまでもなく、手は心のありようそのもの。

 

予言

ワンソとの別れ話を進める一方で、ヘスはジモンに自分の全財産をチェリョンの家族に渡すよう頼みます。「こんなことまでしなくても。ワンソが怒るのでは?」ってジモンは心配しますが、「あの子は死ぬまで家族を心配していました。私に助けてくれと。陛下も何も言わないでしょう」とヘス。

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ジモンはヘスを心配する。彼はヘスが宮を追われる未来をきっと知っている(んだよな…)。

 

これ知ったら、ワンソは当然怒るよ。でも、ヘスはチェリョンの死の当事者であり、最期のメッセージを託されている。ヘスには責任があります。

 

この後、ヘスは通りすがりのウォンと遭遇。 ウォンはあまりにいつも通りのウォンでした。黙っていられないヘス。

「チェリョンが死にました」

「そうか?」

「気にならないんですね。あなたのせいなのに」

「あなた?気でも触れたのか?」

「後悔するでしょう チェリョンにあんなことを… 必ず後悔する日が来ます」

「陛下の愛人ゆえ、恐れるものがないのだな。だろ?」

 

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ヘスは怒り心頭。チェリョンはウォンの代わりに重罪を受けたのだ。

 

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「あなた」呼ばわりされ、ウォンは不快感をあらわにする。

 

ウォンを責めるヘスは、かつてウクを責めたオ尚宮(11話)を思い起こさせます。ヘスの命を自らの力で助けることを諦めてしまったウクに、オ尚宮は「後悔する日が来る」と。ヘスはそんなこと知らないはずなのに、同じようなセリフを言うなんてね…。ヨンファが皇后ユ氏化していきますが、ヘスのオ尚宮化もまた進みます。 

 

ウォンはこれまでずっと日和見で、だからこそ、ここまで生き残ってきこれたとも言えます。ずるいやつです。ついにはチェリョンを売ってしまいました。ひどい。

でもチェリョンはこの人のことがずっと好きだったんですよね。しかも、「悪い男」だから好きなんじゃなくて、かつて自分を助けてくれたから好きだった。苦しい時に、唯一自分に気づいてくれた人だから。あの優しさは気まぐれだったのかもしれないけれど、優しいところがあったのもまた事実なんですよね。4話でチェリョンがヨンファにお仕置きされている時も、ウォンは一応助け船を出してますし(本当にうっすらだけど)。ウンとかにも結構優しかった気がする。ずるっこいけど、根っからの極悪っていう感じでもないのです。

 何がウォンを完全なる卑怯者にさせたのか。

 

ヘスはオ尚宮のように「後悔する日が来る」と予言しますが、オ尚宮がウクに向けた言葉はこうでした。 

オ尚宮「なぜ私に頼むのです。あの娘を愛していると、死んでも救うと仰せになれば、私より力になります。皇后さまや一族が邪魔を?皇位継承のため、というのもあり得ますね。皇室の男が卑怯になる理由はいつも同じです。いつか卑劣な自分を後悔されます。一度、顔を背けたことで一生さいなまれます」(11話)

 

皇室の男が卑怯になる理由は同じ。それは皇位継承

 

ウォンの策略

最終回で本人も「皇帝になるはずだった」というようなことを言いますが、ウォンって実は皇帝を目指しているんですよね。その野望が漏れ出したのが19話でした。ウォンはただの日和見皇子ではありません。皇位に対してどこまで本気かはわからないんですけれどね。でも、そうなんでしょうね。

ヘスとバトってる時、彼はチェリョンの死をないがしろにしているだけでなく、立場や身分にこだわりを見せています。それもやっぱり、皇位絡みを気にしているところからきているのかなぁ。

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書斎でワンソの真意に想いを巡らせるウク。ウォンはさり気なく、しかし意志を持ってそばにいます。

 

「『貞観政要』を読んでいると?皇帝は何が狙いなのかわからぬが…。鷹を一羽手に入れろ。すばしっこい鷹を。ワンソが何をする気なのか分からぬが狩りを楽しむらしい。合わせてやろう」

「兄上、ソ兄上をご存じでしょう?信じても、心を許しても、いけませんよ。手足を切らねば」

 「ペクアのことか?」

「教坊の妓女と浮かれている男です。簡単に引き離せます」

 

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「何が狙いなんだ…鷹を用意しろ!」

 

ウクには『貞観政要』が帝王学の教科書だってことがわかってますからね。ワンソが皇帝として本気を出す前段階としての『貞観政要』ならば、それは脅威でしかありません。だから、狩り用の鷹をウォンに用意させ、敵対するワンソにあえて近づいて『貞観政要』を読む真意を探ろうとする。勉強されるより、狩りで遊んでてもらったほうがまだいいですし。

 

この会話から、鷹によるウク失墜のシナリオが完成するわけですけど、ここでウォンはウクに同意するのではなく、「ワンソを信じるな。ペクアを排除しよう」って言うのです。「ウク兄上、それはいい考えですね。早速鷹を!!」とはならない。ウォンは、ウクとワンソが近づくことも、ワンソのそばにペクアがいることも、快く思っていないことが伺えます。

 

このウォンの発言がね…。いきなりペクアが出てくるんですよね。ワンソにとってネサラミであるペクアを失うことが大打撃なのは間違いないですが、ペクアって宮でそんなに力ありますかね。ワンソの手足と言えば手足だけど…。ウクも、ウォンに言われるまで、ペクアのことは気にしていません。

だけど、ウォンの立場から考えてみると、どうでしょう。ワンソのネサラミであるペクアがいる限り、ウォンはペクアを超えた立場を得ることはできません。ウォンにとってペクアは邪魔な存在。

 

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 「ペクアのことか?」

 もともとウクはペクアをどうこうするつもりはなかった、という感じの表情。

 

18話でウォンはウク側からワンソ側に寝返りました。で、19話の中盤で何が起こるかというと、ワンソ、ウォン、信州カン氏、その他の豪族がグルになって、ウクを陥れる。力を持つウクを排除するには、皆で一丸とならないと無理ですからね。議会全体が目撃する中でウクを現行犯逮捕します。冤罪だけど。でも、高麗では冤罪かどうかなんて関係ない。疑われただけで罪決定、即刻死刑宣告までされてしまう世界です。

 

それで、このシーンのお話に戻りますが、ウォンがここでやろうとしているのはウクへの「そそのかし」ですよね。

ウォンは単純にワンソ派へと寝返ったわけではありません。っていうか、本当はワンソ派でもありません。ワンソとウクに潰し合いをさせながら、皇子としてのライバルであるペクアをも消そうとしています(と私は思います!)。自分にはペクアを排除するほどの政治力はないけれど、ウクにならできる。「ウクはこのあとハメられて処刑だな」っていうのがウォンはたぶんわかっているから(だからこそヘスと遭遇した時に機嫌がいい)、その前にひと仕事やってもらおうとしているのです。だから「ワンソを信じるな」と。どんな理由であれ、2人が接近するのは避けたい。自分が危なくなる。

卑怯者!!

 

ウクとペクアがいなくなれば、ウォンは兄弟のなかでは宮にいる唯一の皇子です。あとは皇帝のワンソだけ。そしてワンソが消えれば、ウォンは皇子たちの生き残りゲームに勝利することになります。ウォンが皇帝になる可能性はなくも…ない。ウォンは人生の勝負どころにいます。ウクを裏切る一方で、ウクを利用してワンソも裏切り、ペクアまでも裏切る。ウォンは兄弟みんなを裏切ります。チェリョンも裏切ってるわけだから、もう裏切りまくりですね。

 

ウォンにとって皇位は、そんなにも大切なのでしょうか。それとも、排除されるのが怖いのでしょうか。「何に価値があるかどうかの判断は、自分がする」とチェリョンは言ったわけですが、いずれにせよウォンもそれを実行しています。この人なりに自分の人生を選んでいる。でも、その選択が間違っていたことを、彼は最期に思い知らされます。ほかならぬチェリョンによって(20話)。

 

ペクアとウクの排除後、ウォンがどうやってワンソから皇位を奪おうと考えていたかは分からないんですけれどね…お金ですかね(このへんの本気度は本当にわからない)。ウォンは皇子様なのにお金にすごく執着していた一方で、贈り物はいつもお金でした。「お金さえあればどんな物事でも動かせる」と信じていたのかもしれないです。お金を積めば、いつか皇帝にさえなれると。

 

このウォンの「敵対するどちらにも味方だと思わせ、実はどちらの味方でもない」という戦法は、ウク自身もかつて使っていました。13話あたりですね。ワンムとワンヨに潰し合いさせながら、将来自分が「傷のない完璧な皇帝」になるよう画策していた。その際に、ウクはワンヨに「ソを殺してくれ」と頼んでたので、ウォンは本当に同じことしています(ウクの場合は結局、自分でワンソに斬りかかりましたが)。ウクがウォンにこういう裏切られ方をするのは、因果応報とも言える。

 

その一方で気になるのは、ウクはなぜウォンの策略に気づかなかったのかな、っていうことです。かつての自分がしたことなのに。あの賢いウクが。それに、ウォンは裏切りの前科があるし(14話でワンヨが生還した際、ウォンはウクからワンヨに速攻で乗り換えた苦)、彼がより強いものに日和っていくのは当然の流れではないですか。

 

まぁ「まさかウォンごときが」みたいなところあるだろうけど(ウォンには人を油断させる何かがあるよ…本当に…)、ウクはこの時やりたい放題で万能感に浸ってるところがあるのですよね。まだまだ政を動かしているのは、皇帝のワンソでなくウクですから。『貞観政要』問題は警戒するけど、基本的には自分が誰よりも優位だと思ってるんだよなぁ…。

ウクはワンソが皇位に就いた時から、「ワンソが全てを手にするのを妨害する」っていうのが生きる理由になってしまったし、心を失くしている状態なので、自分を大事にすることをどこか放棄してる気がします。彼の12話以降の悪事は「皇帝になるため」っていう大義があったけど、ヨンファが皇后になった時点でもうそれはないですからね。自暴自棄というか、やけくそな感じですね。

 

この後、ウクはウォンに利用されていることにも気づかず、ペクア排除に乗り出してしまいます。「ウヒを使えばいい」というウォンが与えたヒントにもキッチリ従っているという。これではウォンの思うつぼなのに…。

ペクア排除はウクの意志から生まれた選択ではないはずですが、まるでそうであるかのように、ウクはワンソに対し圧力をかけます。「操られた意志や選択」というのもまたあるのです。しかしそれでも、選んだのはウク。その責はウクにあります。

 

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民のために自ら施しを行う高貴すぎるほど高貴だった皇子様は(何度もこれ書いてしまう)、いまや豪族を牛耳り、もう民は守らない。すべてはワンソへの敵対心と嫉妬から。うう…

 

あぁウクや…。

 

ウクが最低最悪の状態のところでいったん区切りますが、演じるカンハヌル氏は明日(9月11日)入隊ですね…。この日までに、せめて19話までは終わらせたかったよ(泣)。ごめんなさい…(誰かに謝る)。

 

ともあれ、カンハヌルは自分の人生を自分で選ぶ最高にかっこいい男です。

待っています。

 

つづきます。

 

初見時に急いで書いたざっくりとしたあらすじ。勝手につけたサブタイトルからも、打ちのめされているのがよくわかる(笑)。今は「どんなに想っていても関係ない」とは思っておりませんよ!

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 9話まるごとが19話の伏線だったと言っても過言ではない。気がする。

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