ベン・スティラー主演、監督。
現実、ファンタジー、冒険のバランスがよく、いい映画でした。
主人公ミッティは華々しいLIFE社で、写真のネガ管理という地味なお仕事をしています。でもそれがものすごい不満で腐ってるかっていうと、そういうわけでもなく、それなりに頑張ってきた自負もある。このへんの描き方がまず好きでした。
色んな境遇で、ドリームジョブについている人はそう多くはありません。そのなかで、なんとか折り合いをつけていかなきゃいけないんですが、それって口で言うよりずっと難しいことですよね。
ミッティは家の事情もあり、なかなかの苦労人なのですが、LIFEでの仕事にはプライドをもって仕事をしてきたことが静かに描かれます。しかも、わかる人には彼の頑張りや能力をちゃんとわかってくれてる。
観客がすごく共感できる絶妙な塩梅でした。
で、ファンタジー。ミッティは夢想家で時々ぼーと心ここにあらず状態なんですが、あの夢想は彼の願望ばかりですよね。こんなふうにできたらどんなにいいんだろう、ていう。それはやりたいことがなかなか出来ない、てことの裏返しで、主人公の性格を表すのにすごく効果的だったと思います。
これだけだと結構悶々とする話になりそうで、どうなるかなってところに冒険パートが入る。これで一気にお話に勢いがつきます。
LIFE誌最終号を飾るはずの写真のネガかない!なくした訳でなく、どうも最初から1枚だけネガがない!こりゃ、たいへん!!
ってことでミッティは写真家を訪ねに行くのですが、なにしろその人っていうのは携帯電話すらもっていない秘境を旅する写真家なのです。追いかける→大冒険になるのは必至。写真家はどこにいるのか、彼が過去最高とまで言ったのは何の写真なのか。ミステリーでもあります。
大自然での捜索の旅は見ていて爽快。とにかく素晴らしい。
あの山の中のまっすぐな道を、スケボーで風を切りながら滑る気持ちよさ!
そして道中、時々かかってくる出会系サイトのコールセンターのおじさんが、いい具合に現実感を与えてくれます。このキャラクターは本当に重要ですよね。よく思いついたなぁ。
あと、旅の前後ではミッティの顔つきが全く変わっていて、役者さんはすごいな、と。最初はしょんぼりおじさんだったのにねえ。コンフォート・ゾーンから出るってこういうことなんだなぁ。
旅を通して成長する、っていうお話はやりすぎてもウソっぽいし、変化がなきゃお話にならないけど、たたずまいでそれを表現しているのはすごいです。
また映画館でみたいな。
あと印象的だったのは中盤、主人公が好きな女性とその息子と一緒にいるシーン。
主人公はスケボーが得意なのですが、めっちゃ凄い技をしてる時に限って彼女は見てないんですよね。でも息子はちゃんと見てる。
こういう、見てる人は見てるんだよ、っていうメッセージが全編を通して随所にあって、素敵だなと思いました。ダイナミックな冒険映画であるからこそ、(ほとんどの)こまごまとした毎日を送る観客の励ましにもなっています。
明日もがんばろう。
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