お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『純と愛』 第13週  きせきのくりすます(後)

☆ネタバレしています☆

 
更に続き!
 
何かあったんだろう?
前半戦の最終日。
この日は宮古の海から始まります。第1話の放送のドあたまでも流れた、空撮でとったキレイな宮古の海。おじぃのビーチ。しかし純はそこにいません。
 
純は見知らぬ狭い畳の部屋で、布団に寝ています。眠りながら、またも羽ばたく動作をする純。これは宮古まで鳥になって飛んで帰っていたんだね。
 
眼が覚めると自分をじっと見つめる、謎の女性が(余貴美子)。前髪がやたら多いおだんご頭。音楽もなんだか怪しい雰囲気。
 
この女性がね、純を救うんです。
 
「熱下がったね」
という女性。「風邪こじらせて、あんたうなされてたけど、身元が分かるものがなくって…」
字面だけだとすごく深刻なんだけど、なんともとぼけた感じ。ひょうひょうとしてるんです。
 
ここは大阪の大正区。道でずぶ濡れになって倒れていた純を「死なれちゃ困る」と助けてくれたんだそうで…。「宮古島に帰るんだーって叫んで布団の上でバタバタしてたから、あんた川にでも飛び込んだんじゃない?」
 
ぐーっとお腹が鳴る純。すると「なんか作るから待ってて」っと言って、滑りのものすごく悪い引き戸を開けて、どこかに行くおかみさん。
 
純が部屋を抜け出し、階段を下りると、そこは食堂でした。よく見まわすとシーサーがあったり、お箸や薬味、メニューまで沖縄のものばかり。

大正区は大阪の中でも沖縄出身の人が多く住む地域なのだ、と教えらえられます。

おかみさんは純に沖縄そばを作ってくれました。
食堂のカウンターで暖かいそばすすり、「おいしい」と純は泣き出す。

そんな純をじっと見つめたおかみさんは言います。
「よかったら話してごらん。何かあったんだろう?」

嗚咽する純。
「食べてからにします」
純は泣きながら沖縄そばを食べ続けます。

おかみさんの「何かあったんだろう?」の言い方が、純に対しての好奇心っていう感じですごくいいんです。決してお情けじゃない。でも、だからこそ優しい。
 
 
大事なんは自分の気持ちなんちゃう?
行方不明になった純を探す愛くん。純は携帯も持ってないし。やつれた姿で、善行のマンションにやってきます。もちろん純はいません。

玄関先に出てきた晴海には「愛さん、別れること考えてくれない、純と。愛さんと一緒になってから、今まで以上に苦労してる気がするの、あの子」と言われてしまう。

帰り道、雑踏の中で「その通りかもしれない」と愛くんは落ち込みます。「僕のせいで純さんは…」

そのとき、街にいる人々が一斉に、愛くんに向かってこう言う(この演出面白いね)。
「何のために生きているのかわからない」
人々の心の声ですね。
ネオンでこのセリフがまるまる画面に表示されます。

「みんな、そうなのかな…」と吐き気を感じていると携帯が鳴る。誠。
 
「愛ちゃん、純さんとケンカしたんやって?」
誠は例の自称ミュージシャンとの恋を楽しんでいるようです。臭いに敏感なくせに、めちゃくちゃ汗臭い男(笑)と付き合ってる。でも好きになったら、その臭いさえ愛おしい。

ノロケる誠に愛くんは、純の心の声が読めなくてこっちは大変なんだ、とちょっと怒っちゃいます。でも誠は言うんです。
 
「大事なんは自分の気持ちなんちゃうん?愛ちゃんは純さんが必要じゃないわけ?」

街のみんながまた、こう叫ぶ。
「それでも誰かを愛したい」

愛くんは気持ちを持ち直します。
「僕は、僕には、純さんが必要です」
 
 
ここは直球ですよね。
よこしまに見えていた街の人々。みんな迷ってる。何のために生きているのかわからないし、それでも誰かを愛したい。その気持ちは自分だけじゃないんだ。
これに共感するのは愛くんだけじゃなく、きっと視聴者もそう。だって私たちもまた、どこかの雑踏の中にいる1人なんだから。
 
あとは誠ちゃんね。
純のことで迷っていると、誠は必ず愛くんの背中を押す。スパっと問題の本質を言うんです。兄には純が必要っていうことが、外からみてわかってる。
夫婦は夫婦だけで生きているんじゃない。周りの応援があってこそだし、助けがあってもいいんだよ。
 
 
「あ」から「ん」で何が1番好き?
おかみさんに、今までの出来事を洗いざらい話す純。

「私はこれからどうやっていけばいいのか、全然わからないんですよ。何のために生きていけばいいのか全然わからなくなっちゃって」

話に力が入る純ですが、おかみさんは「なるほどー、よく喋ったねえ。夜になっちゃったよ」とか「いやぁ、今どき珍しくいい話だった。ドラマチックだねぇ、あんた」って軽く返すんです。
何の事情も知らない人に話すって、ある種のセラピーですよね。おかみさんはセラピストの役割を担っているから、純の悲しみには引きずられない。

「なんか、面白がってませんか?」と深刻に聞く純。

おかみさんは純にお茶を出しながら、こう言います。
「同情してほしい?でもさぁ、あんたより不幸な人間なんか、この辺にはゴロゴロいるからさぁ。大丈夫、大丈夫!あんた連ドラの最終回までしぶとく生きてる顔してるからさ!」
このドラマは、純を悲劇のヒロインにはしません。
 

おかみさんは、純を置いてカウンターから出入り口近くのレジの前へ行ってしまいます。慌てて純は追いかける。「じゃあ、あの、私どうしたらいいんですか?」
 
「あんたさ、ひらがなの『あ』から『ん』の中で何が1番好き?」

突然の質問に、おかみさんの話が見えない純。
「いいから考えてよ。ひらがな1文字の中で何が1番好き?」

必死に考える純。でも答えがわからない。
あたしは『と』だな。『と』っていう字があるから、大事な人と結びつくことができるんだよ私たち。
ネロとパトラッシュ。安寿と厨子王。ロミオとジュリエット。ヘドバとダビデ。

「あんたはどうなの?純となんとかって人いるの?」はっとする純。
今まで腰掛けていたおかみさんは、立ち上がります。
 
その人失ったら、本当に終わりだよ。世界中でその人を幸せにできるのはあんただけだし、その人を不幸にするのもあんただけなんだから。
「じゃ、あたしは紅白見るから」

今日が大晦日なことを驚く純。「4、5日ずっと寝てたからね、あんた」
純は「えーうそー!」と店から駆け出します。
 
「ドラマチックだねぇ」
おかみさんは、今までのことが何にもなかったみたいに、紅白を楽しそうに見始めます。
 
 
あたし達は二人でひとつなんだから
すっ飛んで家に帰る純。愛くんはそこにいません。外に探しに行く。

「愛くん、会いたいよ」
純のナレーションが復活します。

街のイベント会場に辿り着くと、純は「愛くん!」と心で叫ぶ。その声に気づくいとし。会場は新年のカウントダウンが始まっています。

たくさんの人でもみくちゃになりながら、年が明けたその時、二人は再会します。

HYのライブも始まる!
 
純は愛くんに聞きます。
「ひらがなの『あ』から『ん』の中で何が1番好き?」
「『と』ですか?」
愛くんは純の心の声がまた聞こえるようになりました。

「ごめんね、ひどいことばっかり言って」
「僕のほうこそ」
「あたし、もうめげない。現実でどんなに辛いことがあっても目を逸らさないで、夢みたいな現実を作れるように頑張る。だから、これからもずっと側にいてください。
あたし達は二人でひとつなんだから。愛と純なんだから」
 
「違います。純と愛です!」

笑顔で抱き合う二人。
そして画面には「良いお年を!」の文字。
 

前半戦の最後、ついに『純と愛』っていう言葉が出ましたね。
「と」にはそういう意味があったのか。前半戦最後の隠し玉でした。
仲直りできてよかった、よかった。
 
ライブでHYが歌うのは『AM11:00』で、サビの歌詞もぴったり。
だからお願い 僕のそばにいてくれないか
君が好きだから
この思いが君に届くように
願いが叶いますように
なんだか急に大団円風(笑)。
 
 
もともと孤独だった二人が出会って、共に時間を過ごしながら、それでも分かり合えないかもしれない、やっぱり人は孤独なんだっていうところまで来た今週のお話。そういう意味では降り出しに戻ったんですね。だからきっと、宮古の海をアタマに出したんだと思う。あのカットは第1話のファーストカットです。

そこで最終的に問題になったのは、自分の気持ち、意思でした。それでも誰かと一緒にいたい、と思えるかどうか。だとすれば、それは誰なのか。

愛くんは、誠にストレートな形で諭されたけど、純がおかみさんに言われたことはもうちょっと進んでいて。第三者だからすごく客観的なんです。

「何のために生きたらいいのかわからない」って言う純に、おかみさんは「あんたには大事な人がいないのか?」って聞きますね。そしてもしそういう人がいるならば、幸せも不幸もお互いにかかってるし、その人のためにあんたは生きてるんじゃない?ってにおわす。(実際には「失ったら終わりだよ」とハッキリ言う)

 
これは純にとっては、視点が広げさせながら愛くんを思わせるアドバイスであり、街行く人々の心の声に対する答えにもなる。視聴者みんなへのメッセージ。
 
これまで散々「この世には不完全な男と不完全な女しかいない」とか、「わたしの愛があなたをつくり、あなたの愛がわたしをつくる」って呪文のように何度も何度も出てきたけれど、このおかみさんのセリフはその変化形で、この3カ月の総決算みたいなメッセージでした。
 
「あたし達は二人でひとつなんだから」って最後に純が愛くんに言うのは、このメッセージへの答えですよね。純は愛くんという帰る場所があれば、辛いことがあっても夢を見ることがきっとできる。ダークサイドに落ちても、這い上がることができる。
 
二人が結婚する前、多恵子に大拒絶された愛くんが死んでしまいそうな程絶望した時、彼を救ったのは「純のために生きていこう」という気持ちでしたね。
今度はその立場が逆転したんだな。
 
 
たまたまネットを見ていたら、村上春樹毎日新聞のインタビューでもこんなことを語っていて。
いったんどこまでも一人にならないと、他人と心を通い合わせることが本当にはできないと思う。理想主義は人と人をつなぐものですが、それに達するには本当にぎりぎりのところまで一人にならないと難しい。
 
純と愛くんは、出会う前も孤独だったから心が通じ合ったし、今回もお互いぎりぎりのところまで一人になったからこそ、最後は二人の気持ちが通いあう。誰かと絆を結ぶって孤独な気持ちが必要なんだ。
(ちなみに、村上春樹の小説の引用が、ドラマの後半に出てきます)
 
 
あと、大晦日のパーティー(厳密にはライブだけど)で仲直りするって、個人的に大大大好きなロマンチックコメディ『恋人たちの予感』ですよアレは。愛くんを探す純が人々とは逆行して暗い道を歩くカットがあったけど、ビリー・クリスタルが最後パーティー会場に行く時のカットと激似だし。これは絶対意識してるはず!(パクりっていう批判では全くございません。むしろそうなら嬉しい!)

あの映画も、男女の友情はあり得るか、っていうテーマなようで、根底では何故私たちにはパートナーが必要なんだろうってことを考える話なんです。

仲直りの会話は、純と愛くんとはもちろん違うけど、もう私たちは二人でひとつなんだっていうふうになるのは同じ。(あの会話は本当に素晴らしいよ。脚本のノラ・エフロンを私は尊敬しています)
 
 
何故ここにきて、他の映画のとか春樹さんとかの話を持ち出すのかというと、どんな人がつきつめて考えても、行きつくのはきっと近いところで、ここは同じ人間が住むひとつの繋がった世界なのだな、と最近つくづく思うから。違うのは伝え方だけ。
 
最近まで放送していた『昨夜のカレー、明日のパン』とか(本当に素晴らしかった)、『純と愛』とノリは全然違うけど、言ってることは案外共通点が多かったりね。それこそ木皿さんなんて夫婦でひとつのペンネームを使って仕事してるんだよ。究極の二人でひとつじゃないか。
 
国が違ってもそう。
純と愛』は運命を選ぶ物語だけど、ハリウッドでも「運命か自由意思か」ていう作品がたっくさん作られてる。っていうかほとんどそれが命題なんじゃないかね。私ドラマシリーズの「LOST」が好きなんだけど、モロそうね。そうそう、『エデンの東』も忘れちゃいけないし。
かと思えば『マグノリア』みたいに、そういう命題に対して「頑張るのはもうやめようよ」と言うことで癒しになる映画もある。
 
一つの作品を集中して見ていくことで、返って他の作品を思い起こさせたり、対比させられたり。面白いです。今までの点が線になっていく。線が引けることに気づける。
 
なんだか話が蛇行しましたが。
 
さて、物語も半分を過ぎました。(まだ半分かよ!)
これまで考えながら、悩みながら、まとめてきたんですけど、セリフも演出も演技も素晴らしいから、だんだん細かいあらすじをどんどん書きたくなっちゃった。
純と愛の心の闇、家族問題、オオサキ、サザンアイランド。いろいろあったよ…。
あまりの理不尽で自分を見失いそうになった純でしたが、愛くんという存在があったから、自分のダークサイドからなんとか這い上がることがました。
 
でも、『と』で結ばれた人がいない場合はどうするのか。いたとしても、関係が壊れてしまった人は?
それに、家族と分かり合えなくて、何をやってもムダな時はムダで、好きな人が好きだと言ってくれたときの自分ではいられないって時もあるって問題はそのまま。
 
後半は、またガラリと雰囲気を変えながら、より人間関係を深く描いた物語になっていきます。もうホテルものとは言いがたい(笑)。そのくらい物語がまた深くなっていく。
 
だから、と言うのもなんですが、次週分からは気持ちも新たに、ネタバレは相変わらずするけれどもあらすじは少なめにやってみようかな、と。ほんとに最近あらすじを書くのに必死になっちゃって(笑)、大事なものを見失ってた気がするから。
 
そして、遊川さん結婚おめでとう!
 
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