お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『純と愛』第14週 しんねんのちかい

☆ネタバレしています☆

 
今週は年またぎのため、2回だけの放送です。でも濃いよ。
 
 
<第14週のあらすじ>
無事仲直りをし、明るくお正月を迎えた純と愛。「家族なんだから」と、気持ちも新たにお互いの実家へ新年の挨拶に行くものの、関係の修復どころかその糸口さえ見えない。
一方で、年末に純を看病してくれたサトを訪ねる二人。食堂だと思っていたそこは、実は「里や」という名の簡易宿泊所であった。運命を感じた純は、「ここで働かせてほしい」と願い出る。
 
 
喪失の物語
さてドラマも後半戦の始まりです。
純と愛』は前半と後半で、雰囲気がだいぶ違います。純の職場が一流ホテルから、潰れかけた宿泊所になるということもあるんですが。
なにより、話の流れが変わるんですね。

前半では純が愛というパートナーとの関係を築きながら、大切なものを守るための戦いが描かれました。そしてどんなに頑張っても、守りきれないことがあるということも。

後半の大きなテーマは「喪失と再生」です。「失う」ということは前半でも色んなところに散りばめられていて、純は心の支えであったおじぃのホテルも家もなくしてしまうのですが、ここから更に喪失が加速していくんです。喪失とどう向き合うか。失うことを避けられない私たちは、どう生きていくべきか。そこで大事になってくるのが、1つ1つの選択であり、意思の力なのだ、というところに向かって物語は進んでいきます。
純はどんどん大人になっていく。
 
第14週は「これから喪失について考えていくよ」っていう宣言をしているようなお話です。お正月からなかなか甘くない(笑)。
 
 
荒れる多恵子
待田家にとって最大の喪失は、愛の弟・純くんです。しかも、純くんが亡くなって間もなく、愛くんは家出をしてしまったため、待田家は息子二人をほぼ同時になくしたようなものでした。
 
最近、狩野家がかなり揉めていたので忘れがちだったけど、純くんの不在は待田家の人々とってまだ生傷としてはっきり残ってる。
 
特に母親の多恵子は、その傷が癒えるどころか、喪失感を埋めるため仕事に没頭し、心身共に限界まできてしまっています。薬だけじゃ足りなくて、正月から呑んだくれて荒れてるんです。

そんなところに息子の愛くんと純がやってくる。純はこれからまた前向きに生きていくと新年の抱負を言い出すし、愛くんは多恵子に「家族なんだから、純とこれからは仲良くしてほしい」とお願いします。
 
オオサキとおじぃのホテルという、純の大事なものを奪うことに手を貸した多恵子。純がどれだけ大きな喪失を抱えたか、多恵子にはわかっているはずです。それなのに、純は今自分を取り戻して目の前にいる。前向きに頑張ると言う。しかも息子は、「何と言われようとこれからも純を支えていく」と言う。

ずっと息子の喪失に苦しみ悲しんでいる多恵子は、腹が立つでしょうね。きっと前に進んでいこうとする誰もが憎いだろうし、それがこの二人となればなおさら。
 
多恵子は激昂します。
純さん、純さん…私にとって純はあなたの死んだ弟の名前なの!
この人が待田純と名乗るだけで、わたしがどんなおぞましい気持ちになるか、あなたは理解しようとさえしない。この人が我が家に侵入するだけで、どんなに不愉快で嫌な思いをするか考えもしない。そんな人間のためにあなたはそんなみすぼらしい格好でみすぼらしい人生を送っていくのを見なきゃいけない、この母親の身にもなったらどうなの!
純に対しても、怒りをぶつける。
あなたも馬鹿じゃないんだから気がついたら?あなたなんかにうちの家族の幸せを壊す権利はないし、私の人生を台無しにする権利もないの。私にとって待田純はこの世に存在しない人間なのよ!
 
先週、謙次は多恵子が何を考えているのかわからない、と息子に告白しました。
でも、この怒りのセリフには、今の多恵子の気持ちを率直に表しているような気がします。
 
純くんを亡くしてどれほど辛いか。純の存在が純くんの不在を思い起こさせるか。いかに、いとしと純が自分の気持ちを踏みにじっているか。

多恵子だって、純くんが亡くなったという事実は理解している。だけど、だからこそ待田純は世界でたった一人でなければならないんです。
せめて愛くんが自分のそばで「立派」になってくれたら。なのに彼はよりによって、「純」という名前の女の子と結婚して主夫になっちゃった。

多恵子は子供への愛情がすごく深くて、期待もかなりかけていたから、息子たちに関しては何もかも上手くいかないことが辛くて悔しくて寂しくて…。
親のエゴとも言えるし、言い方キツすぎなんだけど、多恵子の気持ちを批判できないよ…。だってこの人は本当に悲しんでる。
純も愛くんもそれがわかるから、この日多恵子には反論しません。

多恵子とは対照的に、ドラマが始まった頃から比べると愛くんはいい意味で変わってきています。この日も、多恵子にもはっきり自分の気持ちを伝えている。前はあんなにおどおどしていたのに。
純のおかげで、愛くんは弟の死から少しずつ立ち直り始めているのだと思います。
 
今まで目にしただけで吐き気がしてた自分の顔も、小さな鏡越しに見られるようになっている。でも、もちろん弟を忘れた訳ではありません。
「純、純さんとの新しい年が始まったよ」と、鏡に向かいひとり静かに語りかけるいとし。そこにはどこか「生きている者の後ろめたさ」みたいなものが感じられます。じんとしてしまうよ。
純がおじぃに語りかけるのとは、関係性が違います。

純くんの死とどう向き合い、どう前に進んでいくか。
待田家の大きな課題を、お正月一発目にガツンと思い出させる制作陣…。
 
 
狩野家の苦難
狩野家は、宮古の家とホテルを失いました。こちらも家族はバラバラ。お正月といえど、正や剛は両親が住む大阪には来ません。
でも、この家族は宮古にいた時からバラバラでしたよね。話す方言さえ違う。
 
善行は失った自信を取り戻すため大阪に来たものの、再就職先での待遇はさらに自信を喪失させるものでした。
純と愛くんが家に来ても、純が前向きなことを言っても、善行はほとんど無視です。先週、勇気が生まれた時にあんな大喧嘩をしたばかりだしな。でも年賀状には、以前純が善行を励ますために言った「一陽来復」って大きく書いてるし。
あぁお父ちゃん…。
 
生まれ故郷を失った晴海は、大阪に移ってもなお、宮古での文化や思い出を大切にしたいと思っています。でも善行はそれが気に入らない。宮古おせち料理を作って、夫に叱責されてしまいます。宮古を忘れろって言うんです。「宮古の料理なんかイヤや、俺の好きなだし巻きたまごを作れ」と。
 
まぁ妻に甘えてるダメな夫なんですが、宮古を忘れろっていうのは言い過ぎなんだよ。だって宮古は晴海にとって自分そのものだから。宮古であんなに揉めたのに、それが善行にはまだわかってない。
 
晴海はこれから自分自身を喪失し始めます。認知症になるんです。
なんて皮肉なんだ。
その症状が、この週から徐々に出てきます。年末「純と別れて」と愛くんに言ったことをや、孫の名前を忘れてしまっている。
 
狩野家はまだまだ喪失していきます。
とりわけ、善行と晴海の行く先は大変に厳しい。
 
 
サトと里や
おじぃのホテルをなくした純の落ち込みは凄まじかったですが、そこから純を救い出したのはサトでした。
彼女は、純を充分に休息させ、暖かい食事を与え、話を聞き、最後に帰るべき場所に戻した。サトが純を拾って里やに連れてきてくれたからこそ、純は回復することができたんです。
 
でも里やが夢いっぱいの場所かというと全然そうではないんですね。お客さんはバックパッカーや間違えて来ちゃった人以外は、年金や生活保護で暮らしている人で、里やがある町自体も電車が止まらないから活気がない(実在のことを町をそこまで言っていいのか…苦笑)。
 
「ここはあんたの目指す夢とは正反対の、現実だらけの場所なの。笑顔もなければ希望もないの」
だからサトは「ここで働きたい」と言う純に、「やめておいたほうがいい」と一度断ります。しかも結構いいランクのホテルを紹介してくれる。
 
でも純はやっぱり里やがいいんです。
「ここに来た時、心地よい夢を見ているというか、夢を見てるっていうか。懐かしくて暖かくて、ゆっくりと静かに 力が湧いてくるというか。不思議な気持ちになったんです」
「でも、ここに来る客たちは何もかも失った人ばっかりだよ」
「そういう人たちを笑顔にしたいんです。赤ちゃんの笑顔に負けないような」
 
心が弱ってる時って、賑やかで元気な場所に行くと余計に弱るものです。逆に静かで何もないところにいるとほっとする。
「何もかも失った人」のための場所も必要なんです。
 
純には愛くんというこの世に自分を繋ぎ止めてくれる人はいるけれど、やっぱり故郷をなくした穴は相当大きい。恐らくオオサキにいた時のような働き方はできないと思います。
何もかも失った人に優しくするのが、沖縄の人のやり方なのよ。
ここは沖縄なのよ。
これは里やの常連、通称・師匠(石倉三郎)の言葉なんですが、今の純には里やのような場所でしかきっと働けない。
沖縄っていうのがまた、ここで大きな意味を持ちますよね。純にとっては故郷であると同時に、沖縄は大変な思いをした過去があるから。
 
サトはお客がお金を持ってようが、なんだろうが関係ない。ただ受け入れる人物です。愛くんはサトを見て、「女神様みたい」と言うくらい。
 
両親への挨拶に失敗し落ち込む二人にも、「まぁそれが人生だからね。いいことはいつまでも続かないように、悪いこともそんなに続かない」とカラッと励まします。(←これって一陽来復ってことですよね。言う人によってこんなに響きがちがうかね)
 
それにしても、サトは『純と愛』の中でも特殊なキャラクターです。
おちゃらけてるようで達観してる。
夫を亡くし色々苦労しているはずなのに、朗らかさを残しているのは何故って考えると、きっと現実と戦うことをやめたからだと思うんですよね。もう俗世間から降りちゃってる。
 
多恵子や桐野さんのように、傷ついて傷ついて、自分の殻を厚くしてまで戦う女性たちとは全く違うわけです。
 
テレビドラマばかり見ているっていう設定も、別の世界から現世を覗いているような感じがするよ。
 
宿泊していたおばあちゃんが亡くなっても「日常茶飯事だから」とサトは決して感傷に浸らない。全ては他人ごと。でも優しさは忘れない。
「おばぁのために一曲やるか」
 
 
純の熱意に押され、「そんなに言われちゃね(笑)」と里やで働くことを許したサト。
従業員もなんだか皆訳ありです。

さぁ、ここからまた始まるよ!


 
この週はたった2日なのに、今までとこれからの苦難や喪失を思うと、なんか気落ちして何も書けなくなってしまったよ。やっぱり、コレ朝からやっちゃいけない話だったのかもね(笑)。
色々とりこぼしてるけど、まぁいいか。

でもまた、書くよ…。
 
 
純と愛 完全版 DVD-BOX2

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