お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『純と愛』第17週 えいえんのあい? (中)

☆ネタバレしています☆

 
続き!

 
好きな気持ちは法律じゃ止められない
セクシーのDV夫を追い出し、ほっとする一同でしたが、直後に多恵子はふらふらと気を失って倒れてしまいます。思えば純が雨の中で祈祷している時も、ふらっふらだったし、この人はこのドラマに登場した時から薬がいつもそばにあった。そしてDV男に殴られる。もう限界。
 
そして同じくして、純も倒れてしまう。冷たい雨に打たれたせいです。
 
里やの狭い客室に布団を並べ、寝かせられた多恵子と純。
やり方は違えども、二人ともセクシーを助けるために体を張りました。純も多恵子も自分の信念と行動力を持っているし、実は結構似てる部分もあるのだよね。愛くんが純を好きなのは、そういう理由もあるんじゃないかね。マザコンだよ、愛くんは。
 
目が覚めた嫁と姑。純は起き上がり、セクシーを助けてくれたことを多恵子に感謝します。
 
でも多恵子は、決して楽観的にことを見ていません。
「根本なことが解決したわけじゃないのよ。10年くらい問題を先送りにしただけ。最終的にあの男があの奥さんを好きな気持ちは、法律じゃ止められないし」
純に背中を向け、多恵子はつぶやくように言います。
 
セクシーへの執着は、結局DV夫の心の問題なわけです。追い詰められてなお、「あゆみを愛している」と叫んだ満田。それが本当にセクシーさんへの愛情かどうかは別として(むしろ満田の自己愛が肥大しているだけな気がする)、満田がその気持ちと現実との折り合いをつけない限り、火種は消えないのです。
籍も入ったままだろうし、いつかまたセクシーは夫と対峙しなければいけない時がきっと来る。
ただ気持ちの整理には、絶対的に時間が必要なので、対処の第一段階として、多恵子の応急処置はあれしかなかったんじゃないでしょうかね…。
 
 
お母さんは不幸にしばられている
ふらふらのまま起き上がり、帰ろうする多恵子。止める純。布団に倒れ転げる二人(笑)。
 
そこへ愛くんがおかゆを持ってやってくる。
 
ここでは、息子から母への思いが伝えられます。愛くんはもう多恵子のことを、怯えた目では見ません。ただただ心配している。
 
「あの、お母さん、お父さんから聞きました。離婚したいって言ってるのは…お母さんじゃなくて、お父さんだって。」
 
うわ、そうなんだ。
「好きな気持ちは法律じゃ止められない」って言ったけど、それは逆の気持ちを持つ夫を止められないっていう諦めが、多恵子にあるからなのかな。
 
「お母さん、実は最近見えにくくなっているんです、人の本性みたいなものが」
かすかに驚く多恵子。
 
「それはきっと、僕が純さんと暮らしていて幸せだからだろうって推測したんですけど…でもお母さんはまだはっきりと見えるんです。それはお母さんが不幸にしばられて、身動きがとれなくなってるからじゃないかって。お母さんの苦しくて寂しい思いが、僕に聞こえてるからじゃないかって」
 
多恵子は愛くんにも純にも、背を向けて黙って話を聞く。目には涙がたまっています。でも泣いたりはしない。
 
このシーンはね、やっぱり泣けますよ。見せ方も上手くて、画面にいとしと多恵子の顔があって、焦点が息子から母に移っていく。多恵子の孤独が、ぐっとクローズアップしていきます。
しかも、セクシーを助けたというエピソードの後なので、今までの横暴な姿を忘れて、多恵子の悲しみに視聴者は感情移入できる。いい音楽も流れるし。
 
 
「ほら、そうやってすぐ悲しい音楽流して泣かそうとするのやめてくれる?こっち全然悲しくないから!」
多恵子の涙で光る目を見せたあと、多恵子を見つめる純のアップを入れ、サトがいつもの定位置でテレビドラマを見ながら文句言ってるっていうカットにパッパッと切り替わっていくという(笑)。しかも、サトと一緒にテレビを見ている謙次は号泣してるし(笑)。
 
この切り替えで、泣いている視聴者(というか私)は、強制的に我に返ります。
なんていう、このバランス。
悲しみに埋没できないね。でも、生きていくってカオスだから、そう単純に悲しみに埋没できないのさ。
 
多恵子は里やに一晩泊まっていくことに。謙次は多恵子の顔も見ずに帰っていきます。逃げていく父。
 
 
じゃあ、あの頃に戻してくれる?
誠に「パパ帰るって」報告され、「どうせ逃げたんでしょ」と即答する多恵子。お見通しなんだな。
 
布団で休む多恵子のもとに、士郎を連れたセクシーが現れます。
礼を言うセクシーに「別にもういいわよ」と、そっけない多恵子。
セクシーは顔にかかる髪の毛を上げ、「もうこの傷隠すのやめます、私。この子のためにも、もっと強くならないといけないから」。
 
セクシーと士郎の姿を、じっと見る多恵子。
 
ここから回想シーンに入ります。
純くんと愛くんが、まだ士郎と同じくらいの年の頃。
具合の悪そうな純くんを寝かしつけた後、「眠れないの?」といとしに聞く多恵子。「うん」と、絵本『ねむりひめ』を差し出し甘える愛くん。
「しょうがないわねぇ」
 
声のトーンが今よりずっと高く、笑顔の多恵子。本当に優しいお母さんだったんだな。愛くんはこの多恵子が大好きだったんだ。
多恵子はいとしの小さな手を握り、『ねむりひめ』を読んであげます。
 
「(いとし…じゅん…二人ともママを置いてかないで!)」
うなされて、涙を流しながら目覚める多恵子。
 
多恵子には多恵子なりの思いがある。二人の息子をほぼ同時になくして、どれほど辛かったか。でも、弱い気持ちに負けないように、耐えすぎるほど耐えて耐えて、ここまでやってきました。本当に、名前通りの人。
 
そーっと里やの部屋を出て行こうとすると、士郎が『ねむりひめ』を持って階段に座っています。
「眠れないの?」
 
士郎を自分の布団に寝かせ、昔いとしにしたように、『ねむりひめ』を読む多恵子。
 
そんな多恵子の姿を、いつの間にか純が見つめていました。
「そうやって愛くんにも読んであげてたんですね。おかゆ持ってきました」
 
純は多恵子に語りかけます。「私にできることがあれば何でも言ってください」と。
このセリフはセクシーを助けて、と頼んだ時も言っていました。「お母さんが、困ったことがあれば、すぐに駆けつける。何でもする」。そこでは「そんな時はない」って多恵子は断言するんだけど、今回はちょっと違います。
 
「じゃあ、あの頃に戻してくれる?私たち家族を」
「え?」
「あなたの辞書に『無理』って言葉はないんでしょ?」
 
相変わらず、純に背中を向けたまま話す多恵子。でも、その声には今までの気高さはありません。いま出せる精一杯の弱音。
 
「すいません。それは無理です。…っていうか、それができるのはお義母さんだけです。あの頃には戻れなくても、あの頃のような幸せな家族は、まだ作れるんじゃないですか、お義母さんなら」
 
純はひと呼吸置いて、続けます。
「愛はちゃんと伝えないと、何も始まらないよ…とおじぃが言っていた気がします」
すると多恵子は純のほうを見るんですね。ずっと背中を向けていたのに初めて身る。純はたじろいで、すいません、としか言えません。
 
多恵子は静かに頼みます。
今夜はここで寝ていくからもう一つ布団を敷いてほしいということ。それから、明日謙次に迎えに来るよう伝えてほしいということ。
「わかりました!」
純は嬉しそう。
 
多恵子の悲しみと孤独を慮るいとしと、励ますことをやめない純。
ここでやっと多恵子の気持ちが軟化するのにな…。
 
父の土下座
朝、里やの食堂に集まる待田家の人々。里やの皆は気をきかせて、外しています。
 
多恵子が2階の部屋からおりてきて、席につく。いよいよ口を開きます。
「私は…」
「多恵子、頼む!別れてくれないか!」
 
多恵子の言葉を遮り、なんと土下座で離婚を迫る謙次。一同、っていうか視聴者も「な!!」です(笑)。
 
子どもの前で妻に土下座って、プライドも何もかなぐり捨てて、もう相当な覚悟じゃないか。
「僕はもう、お前の愛に応える自信がもうないんだ」
 
「お父さん、どういう意味ですか」いとしは聞く。
 
「お母さんは純粋すぎるんだ。なぁ、もう楽にしてくれ、多恵子。お前と一緒にいると、耳鳴りが酷くてたまらないんだ」

純粋すぎるって…純と同じじゃないのよ。
 
必死に訴える夫に、「…わかりました。離婚届にサインしときます」とだけ告げ、里やを出て行こうとする多恵子。
動揺する誠。
 
純は「お願いします。ちゃんと自分の気持ち、伝えてください」と引き留めます。
多恵子は純と愛を見みつめ、冷たくこう言い去っていく。
「二人とも早く気づいたら?あなた達の愛も、永遠には続かない」
 
いやぁ、謙次が土下座してまで離婚を頼むとは。
まぁ浮気ばかりしてるお父さんでしたが、これは他の女性が本気で好きな訳ではなく、ただ多恵子の愛が重すぎて逃げていたわけで…。それに決着をつけたかったんですね。離婚という形で、完全に多恵子から手を引きたかったんだ。
 
クリスマスの週(第13週)に、謙次は「お母さんが好きだったから結婚した」って言ってましたよね。
「あなた達の愛'も'」って言ったということは、「私たち=多恵子と謙次」にも愛があったと多恵子も思っているわけで。切ないですね。
鉄の女と化した多恵子にも、愛はあった。だからこそ、「あの頃に戻りたい」と思うし、純や息子のおかげで、頑なな態度も変えつつあった。でも、気づいた時にはもう遅い。謙次の気持ちはもう決まっていたのです。
 
「気づいた時には遅い」。また出てきました。
第2週の時点で、平泉成さん(オオサキの客・北見さん役)が言ってますからね。わざわざ平泉さんを起用するぐらい大事なメッセージなわけです。
 
夫が土下座する姿を見て、多恵子は夫婦関係の修復は不可能だと完全に悟る多恵子。だからといって、ごねたりしない。人の気持ちは簡単には変えられないし、最後にすがりつくなんてプライドが許さない。きっとそう思っているはず。
 
あと、「あなた達の愛も」と言うってことは、多恵子は息子と純が愛情で結ばれていることを、ちゃんとわかっているってことですよね。
 
 
このシーンにあたり、謙次役の堀内さんもこの展開にはかなり驚かれ、また相当な覚悟で臨んだそうです。国民的ドラマで、しかも多恵子の気持ちが動いたところでこの仕打ち。「ボロボロの妻を置いて逃げるのかよ!」と非難されるだろう、と(笑)。役者さんは大変だ。
 
 
私たちの愛も永遠には続かないのかな?
家に帰っても諦めきれず、多恵子にメールを送りまくる純。基本、純ちゃんはしつこいからねぇ、良くも悪くも(笑)。
 
愛くんはそんな純に感謝つつ、身につけている腕時計をみつめます。
「これ、高校に入った時に、プレゼントって言って、うちの母がくれたんです。
なんか家を出る時に、無意識に持って来ちゃったんですけど、その時から全然動かないんです、この時計。…でもなんか捨てられなくて。この時計が動いていた時までは、うちの家族は幸せだったんだなぁって思ったら…」
 
純が亡くなってしまったこと。そして、それを家族がひとつになって受け止めきれなかったこと。待田家はそこから、時が止まったままだし、夫婦の離婚によって更に家族はバラバラです。待田家の心の再生はまだ遠い。
 
純は愛くんに聞きます。
「ねぇ、私たちの愛もさぁ、永遠には続かないのかなぁ」
「はい」
即答するいとし。いい音楽も止まる(笑)。
「なんで?」
「いや、普通に考えたら、どちらかが先に…亡くなっちゃうんで」
「そういうこと言わないでよ!そういうこと聞いてんじゃないの、ばか!」
 
また、こういうこと言わせるんだよ、遊川さんは。
 
 
結婚する前から、純は「愛くんがいなくなっちゃったらどうしよう」ってちょいちょい不安になってましたからね。「愛はいつか終わってしまう」っていうのは、このドラマで扱うテーマの中でも、とりわけ大きな命題です。

そして遂に、純と愛の間でも具体的にこういう話が出てきた。愛は終わることがある。そして気持ちは続いたとしても、私たちは限られた時間を生きている。
さて、どうするか。

特に愛くんは弟を亡くしてから、死を見つめてきた人ですからね。いずれ自分にもそういう時が、っていう意識は人一倍あると思うよ。

不穏すぎてつらい。
 

更に続く!

 

純と愛 完全版 DVD-BOX3<完>

純と愛 完全版 DVD-BOX3<完>

 

 

 俳優さんたちの裏話は、だいたいここから。