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お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『純と愛』 第18週 えがおのゆくえ(後)

テレビドラマ 純と愛

☆ネタバレしています☆

 

更に続き!

 
純、手ぇ放さんといてくれ
閉園間際の動物園で、善行を探し周る純。
 
目の前には迷子になった小さな女の子が。またよぎるあの思い出。
 
女の子に声をかけたのは善行でした。
無事父親に引き渡す。
「手ぇ離したらあきまへんやんか」
 
純はそんな善行の手を取ります。
驚く父。
 
「俺にどうせい言うんや」
 「これからずっとそばにいて、ずっと一緒にいて、ずっと支えるって。お母ちゃんにそう言ってあげてよ」
 
親に向かって上からモノ言うなと怒る善行。
「それになぁ、お母ちゃんは俺と一緒にならんかった方がずっと幸せになれたんや」
 
「何言ってんのよ今さら!」
その時、手の平の「大人」を思い出す純。
 
「お父ちゃん、お願いします。お母ちゃんと向き合ってください。このままお母ちゃん、手放していいの?私はイヤだよ」
 
気づけば二人とも頰には絆創膏。あぁ親子。
いつかまた家族で動物園だって来たいし、それからいつか私が作ったホテルにも来てほしい。
今がどんなに辛くても、明日は晴れるって、そう信じたい。
ダメかな。そう思っちゃダメかな
 
涙する純の手を、善行は握ります。
純、手ぇ放さんといてくれ
 
純が自分を押さえながらも、善行を説得する、とてもとても重要なシーンです。
「あなたは晴海の夫であり、私の父親でいていいんだ、あとはお父ちゃんの気持ち次第なんだ」と、純は善行に居場所を確保し、存在を受容しています。純は父親を決して見放したりしない。
 
善行は「明日晴れるかな」って誰かが言うと「雨や!」って即答するっていうエピソードが今までに何回か出てきているんですが、何故そういう人になってしまったかっていうと、それだけ期待が裏切られ続けてきた人生だったからなんだと思う。善行側の親、親戚については話にすら上がらないし、孤独で寂しい思いをして育ったのではないかなとも想像してしまいます。晴海に過剰に愛情を求めてしまうのも、そういう理由からじゃないかね。実は愛情にすごく飢えている。
 
一方、晴海は愛情に恵まれて育ってきていて、まぁ善行は晴海のそういう健やかさに惹かれたんだと思うんですが、夫の孤独がどれほどかいまいちわかっていない。
 
そういう二人が結婚して、善行はよくわからない「家族」というものの長となり「夫」、「父親」を演じてきた。善行が考える強い夫と父親を目指して。晴海にも、そういう夫についてくる妻であることを強要した。それしか家族をまとめる方法が思いつかなかったんでしょうね。
 
それが完全に破綻してしまって、とっくに迷子になっていた弱い自分をやっとさらけ出した。それでも自分を見捨てなかった娘がいてくれたからです。自分を憎んでいるはずの娘が。
 
「明日は晴れると信じたい」っていうのは、「諦めない」っていうこと。善行はそんな純に初めてすがります。変わろうとします。
ぶつかりあってきた父と娘が、「この家族を諦めちゃいけない」と遂に同じ気持ちを持つ。ブレイクスルーな瞬間でした。
 
でもね、このシーン夕暮れなんです。武田さんの名曲でいうところの「暮れなず」んでる。画面には光だけじゃなく影が多いです。もちろんそこには意図がある。
夜はもうすぐ。
今まで希望が沸き立つ時はいつも朝日が見えていたのに…。
  
 
あなたは誰ですか?
善行をマンションに連れていく純。
 
晴海は料理で手を切って以来、部屋にこもったままでした。
 
善行が晴海の部屋に入る前、純は父の手の平に一文字ずつペンでこう書きます「あ」「い」。あい。
「お父ちゃんの中にはこれがたくさん詰まってるんだからね。それを忘れないで」
 
純は善行にエールを送る。家族を守りたいと心から願う。でも今は両親の話し合いに口出ししません。この辺りも「大人」を意識してますね。見守ることに徹します。
 
「お帰りなさい。ちょっと遊んでました」錠剤の薬で「宮古」と文字を作っていた晴海。
 
善行と晴海。西日の差す部屋で、二人きり。ここからがお父ちゃんの勝負です。
 
「結婚してからお前の話をまともに聞こうともせぇへんかった。すまんかったのう」
誠心誠意、謝る善行。
 
「だったら聞きますけど…。正ぃは大丈夫でしょうか?剛ぃは?」
善行はそれぞれちゃんと答えます。父親として息子たちの良さをちゃんと見ている。
 
「じゃあ純は?あの子はあんな性格で本当に幸せになれるんでしょうか」
 
「純が一番大丈夫や」
声をつまらせる善行。
「一番わかってるのはお前やないか」
「そうですねぇ…」
 
「私はいい母親でしょうか…いい妻でしょうか」
 「当たり前や。この世界に二人といないええ女房や」
 
「眉目秀麗、蓬髪花顔、みめ麗しく、情けありや」
あなたは美しい。例え髪が乱れようと、あなたは美しい。
 
「すまんかったなぁ。晴海、すまなかったなぁ…」
 
今までの蛮行を泣いて詫びる善行。
 
「でもな、今からは違う。俺は今からはずっとそばにおって、面倒見さしてもらいます。
家事かてやる。お前の作ってくれた宮古の料理、美味しい美味しい、言うて食べる。
散々迷惑かけてどこまで返せるかわからんけど、命かけて頑張るから。
せやから…明日は晴れると信じてくれ。頼む!」
 
善行、涙ながらに渾身の謝罪が続く。純の思いをしっかり受けています。
晴海はうっすら笑みを浮かべて、それを静かに聞いている。
 
夫の正面に向き直す妻。
「ありがとうございます」
三つ指をついて頭を下げる。
ほっとした顔の善行。
 
「もう一つ聞いていいですか?」
晴海の微笑みは気づくと消えている。

あなたは誰ですか?

どうしてここにいるんですか?

 
凍りつく善行。
「何言うとんねん、俺やん!お前の亭主の善行やん!」
 
錯乱し、泣き叫ぶ妻。

うちのお父さんはそんな優しい人じゃありません!

純助けて!この人、自分のことお父さんとか言ってるよ!うちのお父さん、こんないい人じゃない!!怖いよぉ、純、助けて…。

 
晴海にしがみつかれながらも、純はまだ善行を励ます。
「お父ちゃん、諦めないでよ!」
 
でも、善行は心が完全に折れる。
「純、無理やで。もう俺のことは、放って置いてくれ…」
 
「あなたは誰ですか?」って…。ホラーですか、これは(笑)。背筋が凍るオチというか、妻からの物凄い反撃というか。笑いごとじゃないけど、本当に頭の下がる展開となりました…。
 
善行はまぁ人生色々あったんだろうけど、ちょっと改心したくらいじゃ救われない。それだけ妻を虐げてきたんだよ。完全なる因果応報です。「うちのお父さん、こんないい人じゃない」って、あんたどんだけ嫌な男として晴海に刷り込まれているんだ。
 
認知症の症状で、どれだけ本心が出るのか、思っていないようなことを言ってしまうのか。私、そのあたりは正直よくわからないので、憶測で書いてはいけないと思うのですが、物語上ではこれが図らずも晴海から善行への復讐になっている。善行からすると、やっとの思いでプライドをかなぐり捨てて謝ったけど、妻からすれば「長年の恨み、1回謝って済むもんか!」だよ。
 
『ゴーン・ガール』見てても思ったけど、夫婦関係って本当に大変ですね…。1番近いはずの他者は、実はどこまでも遠かった。
純と愛』は夫婦のあり方を追求しているので、善行と晴海みたいな関係をちゃんと目をそらさずに描いているのは偉いなと思う。朝からキツイけど(笑)、今見てもよくやったよココは!夫婦は夢ばかりじゃない。

 
世界最強の兄弟になろうよ
また余計なことをした、と純を責める兄と弟。
言い返したい。でも純は自分の手をぐっと握り締め、兄弟に静かに語りかける。
 
「私たち兄弟が今ケンカしてる場合かな。ほら、小さい頃から私たちは、お母ちゃんに助けられてきたんだよ。いつもお母ちゃんの笑顔に救われてきたんだよ。家族みんながお母ちゃんに救われてきたんだよ。
せめてみんなで力を合わせて、お母ちゃんが笑顔になるために、みんなでがんばろうよ」
お母ちゃんのために、世界最強の兄弟になろうよ
純はここでも、何が1番大切なのかを考えて発言する。兄弟をまとめていきます。
ここからこの3人の関係も変わっていくんですが、純が兄と弟を批判しなくなるっていうのが大事で。お互いを認め合うようになるんですね。晴海の病気や両親の不和がきっかけというのが皮肉ですが、子供だった3人が母を守るために大人になっていく。
動物園のシーンもそうだったけれど、今週は親子の立場が入れ替わります。
 
 
頑張ったのは絶対無駄じゃない
夜。よく頑張りましたね、と家で純をねぎらういとし。
愛くんのおかげだよ、と純は「大人」と書かれた手の平を見せる。
 
もうこれがなくても大丈夫、と流し台で純の手を洗ってやるいとし。
純は泣きながら告白します。
 
「本当は怖いんだ。自分が本当に正しいことを言っているのか。全然自信ない。
大人って文字が消えちゃったら、もう大人になれないかもしれない。
また私のせいで何か起こるんじゃないかと思うと不安でさ」
 
いとしは石鹸がついた純の手を水で流す。そして励ます。
大丈夫です。
純さんが頑張ったのは、絶対無駄になんかなりませんから。純さんが蒔いた種は、今は芽吹かなくても、絶対大きな花を咲かせます。
だからこれぐらいのハードル、簡単に乗り越えちゃいましょうよ。
女があきらめたら、世界は終わっちゃうんでしょ?
 
でも今日は涙が止まらない純。微笑んで抱きしめるいとし。
 
純は上手く兄弟をまとめたのにも関わらず、自分が正しいことをしたのかわからない。
でも、かつてオオサキで桐野さんが「自分が正しいと言う人間は、成長するのをやめたと言っているのと同じ」と言っていましたよね。純の迷いは成長の表れでもある。
 
だからこそ、いとしも純を精一杯励ますわけです。
 
「頑張ったのは無駄ではない」。
それは家族に関してでもそうだし、実は里やで今週頑張ったことが、後に純を救うことになります。久世さんのエピソードがこの週に入っていて、「絶対花を咲かせる」っていうセリフを愛くんに言わせているのはよく考えたなと思う。
努力は思い通りには報われない。でも思わぬ時に、思わぬ形で報われることもある。
 
純は今週「大人」になる一歩を踏み出しましたが、それは愛くんを信じているからですよね。この人がそういうなら、頑張ろう、変わろうっていう。信じられる人がいる人間は強い。
いとし自身は大きな行動に出ていないませんが、今週の彼の立ち振る舞いは「人が人を支える」ってこういうことなんだっていう、見本のようでもありました。
ちょっと純を操ってる感がなくもないんだけど(笑)、パートナーの問題を自分の問題として考え、かつ出しゃばらない。
善行と晴海とは全く違う、信頼関係が描かれていました。

(追記: 愛くんが手に「大人」と書くことで、純にある種の魔法をかけ、そして全てが終わると手を洗ってあげるという形で魔法を解いているんだね。なんで手を洗う、っていう行動をフューチャーしたのか。ずっと考えていて、やっと気がついた。純はそれ程いつもとは違うやり方で説得したんだな。そう考えると、善行に「あい」と書いたのはかなり重みがある。)

 
 やっぱりあきらめない
里やの朝。
純は久世に言います。
「あの私、やっぱりあきらめないことにしました。お客さんを笑わせるの」
 
静かに驚く久世。
 
「私はいつかまほうのくにを作りたいと思っています。それは、そこに来たお客さんがみんな笑顔になって帰るホテルなんで…」
 
じゃあどうするの?という久世に、とりあえず今日は卑怯な手で勘弁してくださいという純。
 
そこへ、純に呼ばれたマリアが。勇気を連れています。
 
「じゃーん。私の姪です」
かわいい赤ちゃんに、里やのみんな集まってくる。
 
確かに卑怯な手ね。久世は微笑んでいます。純はなんとか約束を果たしました。
 
「でもいつか、必ずこの子に負けないようなホテルを作ってみせます」
 
第18週は家族の問題で純の心は嵐のように吹きすさぶんですが、最後に何が希望になるかというと「まほうのくに」なんですね。純には夢がある。
このシーンはちゃんと朝の設定になっています。純の夢はこれからです。
 
家族も大事だけれど、人生はそれだけじゃない。仕事だとか夢だとか。(純にはまだいないけど)友達とか。もっとささやかなものでもいいかもしれない。そのうちのひとつが潰れかけても、別の何かが引っ張りあげてくれる。大事なものはひとつだけじゃない。だから辛いことがあっても、なんとか生きていくことだってできるんだよ。閉じていてはいけないよ。
 
この週は『純と愛』というドラマのエンディングに向かっての練習でもあったと思うんですよね。視聴者の心がまえという意味での練習です(笑)。いま見てみるとね。
 
晴海の病気と純の説得によって善行が改心し、そして見事に裏切られる。全く思い通りにならない人生。それでも頑張ったことは無駄じゃないし、そんな時でも人は希望を持つことができるんだっていう。
このドラマはどう幸せになるか、じゃなくて、どう希望を持つかっていうのを大きなテーマとして描いていますからね。
 
まぁ善行と晴海のくだりは本当に残念すぎるんですが、ここから来週どう動くか。
いやぁ、大変です。
 
それにしても、純は久世さんに自分の夢を宣言し、卑怯な手と言いつつも約束を果たす。これが本当に大きいよ。
このドラマは本当にガッカリが多いけど(笑)、頑張る人間を見捨てたりしない。
意外な形で過去の自分の努力が自分を救うことってあるよなぁ。『6才のボクが、大人になるまで』のお母さんをちょっと思い出すよ。
あ、でもこの展開はまだ先です。フライング。
 
いよいよ、次は第19週!
善行さん、「命かけて頑張る」って言ってたんだねぇ…。

 

純と愛 完全版 DVD-BOX3<完>

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