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お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『純と愛』 第19週 おもいよとどけ(3)

☆ネタバレしています☆

 
更に続き!
 
病院に集結…山田さんの過去
海に落ち、病院に運ばれた善行と晴海。子供達は急いで駆けつけてくる。
 
晴海は幸い大事には至りませんでした。しかし善行は、溺れたことで身体中に酸素が行き渡らず、多臓器不全になってしまいます。医者からは、もう意識は戻らないだろうと言われる。
一同呆然です。
 
純はそれでも「奇跡を信じよう。お母ちゃんを助けようとしたお父ちゃんのためにも」と諦める気はありません。
 
一方、晴海は元気だけど事故のことをまるで覚えておらず。こちらもひとまず入院です。
別々の病室で、別々の時間を過ごす夫婦…。
 
隣の山田さんも、病院にいる純と愛の前に現れます。
晴海が行方不明になって、ちょうどいとしと鉢合わせた山田さんが家で留守番してくれていたんですね。もしかしたら晴海が帰ってくるかもしれないって。
 
家の鍵を返す山田さん。そして、自分の過去を二人に語り出します。
 
自分にも純と愛に負けないくらい愛し合った人がいたけれど、別れてしまった。婚約直後、事故で身体が不自由になってしまった彼を支えきれず、心が折れてしまったっていうんですね。介護の肉体的なしんどさに加え、「俺なんかと付き合うんじゃなかったって思ってるんだろ!」ってなじられたらしいです。
それで仲睦まじい純と愛の間を引き裂きたくなった、と。
「永遠の愛なんかあるわけないって。でも、そんなん間違ってました」
申し訳なさそうに、去っていく山田さん。
 
山田さんは、善行が命をかけて妻を助けた、ということを受けて「自分は間違ってた」と言う。永遠の愛はあるんだ、と。
 
確かに善行さんの行動は尊い。でもこれ「永遠の愛」かね。っていうか「永遠の愛」って何かね。青くさいですね。
 
でもこの問題は、善行の勇気ある行動で説明できるものではないと思う。だって善行は、それこそ晴海をなじって憂さ晴らししながら生きていた時間がかなりあって、晴海もそれにうんざりしていたもの。二人がお互いを真っ直ぐ見ていたのは「メロちゃん」「晴海さん」と呼びあっていた頃だけよ。
善行が晴海を助けたのはもっと瞬間的な感覚なんじゃなかろうかね。
そりゃ、冷え切った夫婦が愛情ゼロかっていったら、またそう簡単でもないんだろうけれど、この善行の決死の行為は「永遠の愛」っていう切り口では説明が難しいと思う。
 
山田さんの決着のつけ方はちょっとわからなかったな。命の問題に直面して、彼女が自分の言動を反省したっていう部分はあるんだろうけど…。

 
善行と結婚した理由
善行が危篤状態であることを知らない晴海。
「本当のことを言う」と、この日の朝に純は晴海と約束していたため、正直に事実を告げるべきか悩みます。
医者は、「余計なストレスは与えないほうがいい」と言っているようです。
「自分を助けたためにお父ちゃんの命が危ないなんて知ったらショックだろうし…」と純は弱り果てる。
 
正は「だったら…まだ言わない方がいいんじゃないか」と悩む純に兄として指針を与えます。正らしい選択だし、多くの人がきっとそうするんじゃないかね。
正直にはタイミングってものがある。
 
ベッドに座る晴海。純は病室に入ります。
「純、お父さんは?」
お母ちゃんの看病を徹夜でしてたから寝てる、と苦しい嘘をつく純。晴海自身については、ちょっとした事故で入院することになった、と説明してあります。
 
「そうだ、お母ちゃん聞いたよ〜。結婚する前、お父ちゃんのことメロちゃんって呼んでたって?」
明るく話をそらす純。なんでメロちゃんなわけ?
 
「お父さんさぁ、太宰治が大好きでさぁ、会う時はいつもその話しかしないわけ。『走れメロス』になったら、もう止まらなくてねぇ。その顔が一生懸命で、あんまりかわいいから、メロちゃん」
 
そうなんだ、と笑って聞く純。母の語るかつての父は、純の全く知らない顔をもった若者でした。
 
病室で意識不明のまま横たわる善行のインサート。ベッドの脇には、お金の入った封筒、晴海へ宛てた手紙、そして文庫本『走れメロス』。『人間失格』と一緒に路上に捨てられていたものと思われます。それを拾っていたんですね。
 
善行はかつて多恵子に「あんたは『メロス』に出てくる王様じゃ!」みたいなことを言っていたけれど(第11週)、ここではっきりつながったというか。お父ちゃんはさ、本当は真っ直ぐに生きたかったんだな。正直に生きたかったのよ。でも、それはすごく大変なことで。
善行は真っ直ぐ生きる純の日常を、夢で疑似体験しましたけれど、自分の「メロスになれなさ」にうなされていたね…。
 
 
晴海は話を続けます。
人間不信になっていた王様さぁ、真の愛情や永遠の愛があるなんて信じられなくてね。でも約束守ったメロス見て、自分が間違ってたって悟るの。嬉しそうに話すお父さん見てたら私、結婚しようって決心したのかな。不器用で無愛想だけど、この人なら信じてもいいかなって思ってね…。
 
遂に結婚の動機を打ち明けた晴海さん。
何故あんな男と。
もうこれはずっと謎だったし、純もドラマの序盤で、晴海になんで善行と結婚したのか聞いてましたよね。その時ははぐらかされたけど。
でも晴海なりにちゃんと理由はあったし、善行を信じたいと思っていた(時もあった)んだ。
 
そして、山田さんが「間違ってた」というのは、見ようによっては、山田女史が愛を信じられない王様で、結婚という約束を命をかけて守ろうとした善行がメロスに見えるっていう仕掛けからなんだな。
 
それに、「自分の命をかけて妻を救った」という表層的な事実に、しっかりまず第三者のリアクションを入れたという意味もあるのでしょうね。
 
 
おもいよとどけ!
晴海から若き日の善行の様子を聞いた純は、善行の病院に入ります。今度は父と二人きり。だけど、その父は未だ意識が戻りません。
 
純は涙ながらに善行に語りかけます。
お願いだから、目を覚ましてよ、と。
 

このまま死なれたらさ、お父ちゃんが何考えてたのか全然わかんないじゃん。

最後までケンカして、仲直りできないなんて私イヤだからね。
お父ちゃんのことさ、もっと知りたいよ私。好きな本の話とかさ。お母ちゃんと付き合ってた頃の話とかさ。
あまちゃん』で夏ばっぱが倒れた時も、娘の春子は似たような趣旨のことを言っていた気がする。
本当にね、親がどんな人間かって、よくわからなかったりするよ。「親」と「子」の役割というか呪縛って強いから。知ろうとしないと、実はわからない。
もちろん、それは親子に限った話じゃないんだけれど、弱さを見せたくない親は案外子供に心を開かないし、子供も親に必要以上にいい人間であることを望んでしまう。難しいね。
 
純と善行は本当に上手くいっていなかった。でも、上手くいく可能性を凄く秘めていました。なにより性格が似ていたし、だからこそ自己承認に問題のある二人はお互いが鏡となって憎悪が発生していたんですよね。

純は愛くんに承認されることで、前に進み始めたけれど、善行さんはここに至るまで自分はもとより妻、子どもたち、そして社会からも承認を得られず、結果として内面成熟で純に先を越されてしまった…ところで今度は善行の「命をかけて妻を救う」という、無言のイニシアチブ奪還。

「嫌な父親」という仮面を剥がした善行は、一体どんな人だったのか。

純は、大学祝いに善行が買ってくれた靴の話を始めます。貰ったときはダサすぎて履けたもんじゃなかったけど、今は里やで毎日履いてる。動きやすくて重宝してるんだ、って。

なんかね、これ履いてるとね、お父ちゃんの優しさを感じるっていうか…やっぱりお父ちゃんに愛されてたのかなぁって思うんだよね。今更遅いよねぇ。
純はもうここで大泣きしてるんですけれども、やっぱりね、こういうところで、純は本当にいい子だなって思うんですよ。素直でね。
 
この靴は、純が「世捨て人」に夜通し絵本を読むシーンでしっかり映っています(第15週)。
 
純は善行から貰った靴を「ダサい」と思いながらも、捨てずにとっておいた。それだけでも健気だなぁ、って感じなんだけれど、更に意味深いのは、善行の思いが時を経て伝わっているところです。
純の大学入学からは5年近く経っているはずなんですが、優しさが伝わるのにそれだけの時間を要することがある。その時はわからないくても、時間を経て理解できるようになる想いがあるっていうことを今、純は身をもって感じているわけです。しかも、もう真意は確かめられない状況で。
 
でも何とかして、思いを届けたい。気持ちを通じあわせたい。純は善行の手を握ります。
ごめん、お父ちゃん。今までひどいこととか言って。もう私謝るからさ。心入れ替えて、親孝行とかもちゃんとするからさ。優しくするからさ。だから、目を覚ませよ、アホ親父!お父ちゃん、生きてよ!ねぇ、死ぬなんて許さないんだからね!信じてるんだからね!
このシーンの夏菜ちゃんは、素晴らしいですよ。きっと、少なからずこういう思いをする人がいると思う。子どもだからって、親の何もかも認めて許してるわけじゃない。でも、失いたくない。なんで今なの?そういう気持ちが、うわーって溢れてる。渾身のお芝居。悲しいんだけど、素晴らしかった。
 
最期の「ことば」
目を覚ませ!と善行の病室で半ば錯乱状態になる純。それでもお父ちゃんは目を覚ましません。
 
深夜。
晴海の病室で眠る純。廊下には兄弟たち。
いとしは一人、善行の元へ向かいます。
 
善行の胸にそっと手をあてるいとし。
すると、善行はゆっくりと目を覚ます。
 
でも、善行は話すことができない。いくら言葉を発しようとしても、「あー」とか「んー」とかしか言えない。言葉にならない。
 
でも、いとしには分かるんですね。消えかけている「人の心を読む」能力が、ここである意味ラストスパートのような形で発揮される。僕、お義父さんの言ってることわかります、って。
 
いとしは、ここが病院で、晴海が助かったことを伝えて、お医者さんを呼ぼうとするんだけど、善行は嫌がるんですね。最期の力を振り絞って、いとしを止めて、もうとにかく泣いている。自分ことを含め色んな状況を、たぶんいっぺんに理解する。
それで、いとしにすがるような感じで、思いを伝えていく。でも視聴者にはわからない。いとしだけがそれを理解し、「お義父さん、そんなこと言っちゃだめです、直接純さんに言ってあげてください」とか「夢を…ですか?」とか応答していく。「純さんが聞いたら喜びます。そんな僕は何も…約束します。約束します!」
 
すごく異様な光景んだけれども、善行が自分の気持ちを伝えるにはもうこれしかない気もするんですよね。言葉を奪われてこそ、タイムリミットが迫っているからこそ、素直に伝えたい気持ちがはっきりとわかる。純が、善行が昏睡しているからこそ自分の思いを素直に伝えたように。伝わらない状況だからこそ、気持ちが明確になる。
 
そのもどかしさを、「いとし」というキャラクターが仲介していきます。
ファンタジーの形をとって、物語にカタをつけていく。これは物語だからこそできる、落とし形です。
しかも、善行は愛くんのことをあんなに嫌ってたけど、その愛くんだけにしかもう「ことば」は届かないっていう。皮肉であり、和解ですね。このへんは、本当に物語にしかできない。
 
嫌がる善行に痺れを切らし、「誰かいませんか!」と叫ぶいとし。子ども達が飛んできます。みんな、涙。
いとしは善行に代わって、父としての思いを伝えていく。
 
正、お母ちゃんを頼むな。
剛、お母ちゃんを守ってくれ。
マリアさん、あんたいい嫁や、感謝してる、ありがとう。
勇気、お母ちゃんと遊んでやってくれな。
 
マリアさん以外には、この場にいない晴海のことばかり。あぁ、お父ちゃん。今度こそ晴海のために生きたいと決心したのにね。
 
そして、「じゅん…」。
純は善行の手を握る。
 
その言葉の次を待つ純でしたが、何かを言いかけながらも、力尽き、善行は亡くなってしまいます。
 
子どもたちは、皆泣いているんだけれど(そのなかでも、純はひとり茫然としてる)、そのどの声も消されて、静かな音楽が流れます。純のナレーションがそこに入る。
父は58年と何日生きたことになるのだろう。私と一緒にいたのは、そのうちの23年と…いやもっと少ない。失ってみて初めてわかる。私たちが親と共に過ごせる時間は、なんと短いんだろう。


放映時、この善行の死は本当に驚きました。

晴海をこれから支えていかなければならない、家族が団結しなければならない中で、なぜ今?こんな急に。58歳って、まだまだ若いじゃないか。
でも、振り返れば晴海と善行の進む筋立ては、第1週の段階から伏線としても入っているし、周到に考えられている。
何故このタイミングで、善行が亡くならねばならないのか。このあたりは、晴海のリアクションを待って考察したいと思います。
 
それにしても、純のナレーションは易しい言葉だけれど、胸をつく。真実だと思います。このことは、忘れちゃいけないですね。

笑っとき!
次の朝。
子供たちは晴海の病室へやってきます。
「実はね、お母ちゃん…」って純は事実を伝えようとするんだけど、晴海はその言葉を遮ります。
退院したら、みんなでピクニックに行かないね?
思いだした。この前お父さん、みんなでどっか行こうって言ってた。
「明日はきっと晴れるから」って。
純、お父さんは?
善行の渾身の謝罪に対し、「あなたは誰?」と衝撃的な反応をした晴海。
でも、全部じゃないかもしれないけれど思いは伝わっていた。
あぁ非情な時間差。
 
善行が亡くなったことはしばらく晴海に黙っておこう、という正。
「お父さんが死んだって知ったら、お母さんどうなるかわからないしさ」
「何があっても本当のことを言う」約束を母とした純は複雑ですが、正の言い分もわかるし…苦しいですね。結局は兄の方針に従うことに。

そんな話を子供たちが病院の廊下でしている間、晴海は勇気と病室で戯れてる。
亡くなった命。新しい命。
 
数日後の夕暮れ時。
喪服の人々が里やに帰ってくる。狩野家、謙治と誠。里やのスタッフ。
晴海はもちろん、多恵子がこの場にいないのも意味深いな。
 
善行の遺影は、勇気が生まれた時に撮ったものと思われます。その満面の笑みが切ないです。
 
「堅苦しいのはやめて、みんな飲もうよ。お父さんの為に」
そんなサトの言葉もあり、里やの食堂で善行を偲ぶ面々。でも子どもたちは静かに何かそれぞれ考えているようです。
 
剛に至っては、誠を里やの外に引っ張っていって「またビンタして」とお願いし出す。家族の役に立ちたいのに、何もできない、どうしようもないって、いつになく弱音を吐く。
剛は善行が亡くなる時、「お父ちゃんごめん」って泣いていました。この人なりに、色んな思いがあるのです。
 
でも。
「あたしはそうは思わへん!」
誠は力強く剛を励まします。
あんたにできることは、なんぼでもある。ううん、あんたにしかできんことが、必ずある!メソメソせんととりあえず笑っとき!あんたの笑顔はその笑顔しかないんやから。
「あなたにはできることがある」っていうメッセージは、以前剛が誠に言っていたことですよね(第18週)。それが剛に返ってきました。しかも、その時も誠は剛に「あんたは笑ってナンボやろ」と励ましていたし。
そして事実このドラマでは、シリアスなシーンには必ずなんらかの形で剛が場を和ませていた。バカことばっかりの役立たずでは、実際にないわけです。
 
でもそういう細かな良さをちゃんとわかってくれる他者って、そういない。
だから、そのことにいち早く気づき褒めてくれる誠は、剛にとってやはり特別な存在なんだと思います。もちろん誠にとって剛も。

剛は泣きながら、笑顔を取り戻します。
 
更に更に続く。
次でこの週は完結させる!本当に大変な第19週です。

 

 

純と愛 完全版 DVD-BOX3<完>

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