お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『月の恋人』第11話について

☆ネタバレしています☆

 

このところ『月の恋人a.k.a.『麗~』のあらすじ&感想エントリを書いておりますが、基本は日本放送を過ぎた回だけを扱っています。

 

ただ向こうで放送された最新11話が、あまりにも悲しく、またドラマ的には興味深かった。素晴らしかった。日本放送になったら、詳しくまた書くと思いますが、悲しすぎて未だ落ち込んでるのでw(本当に打ちのめされた)、自分を納得させるためにいま少し整理しておきたい。第12話が放送される前に。

 

とにかく悲しいことばかりで、号泣につぐ号泣の第11話。ただこの回は今まで(そして日本放送ではこれから)描かれたことが一気に凝縮されています。生きたいと思うことは罪か、後悔のない死、なんのために生きるのか。

 

劇中、登場人物たちはみな、ある大きな出来事に対し選択・行動をするのですが、そこにはすべて彼らなりの理由がある。第10話までで積み上げてきたそれぞれの理由。

しかもこれは、彼らの人生や命を守るための選択です。生きるための選択。それは物理的な死を避けるためのものだけではなく、精神的な死を避けるための選択も含まれます。彼らの選択を、私たちはどれだけ責めることができるのだろう。

 

特に第8皇子ウクの選択は重要です。

初見ではついヘスの視点で見てしまい、相当ショックを受けたのですが、見直してみると、彼の選択は自分の精神を殺すことになってしまっています。悲劇。

家族を生かすためには、あの選択しかなかった。あまりにも責任が大きく、自分の願望を果たす余地がない。その理由は、これまでの10話を見てるだけに、納得せざるを得ない面もある。

もともと今回、一連の直接の発端は、ウクが皇位を捨てヘスと結婚したいと願い行動し始めたことでした。自分(と、もちろんヘスのためでもありますが)が求める生、幸せのために行動した結果、悲劇が起こり、ヘスを死のギリギリのところまで危険にさらした。その後も彼女を助けることは一族の死を意味し、責任を負う彼に、もはやヘスのために何かをすることは、ほとんど不可能でした。できない理由がみつかり、しなかった。

ウクは何度もヘスを大きく傷つける選択をします。大切な女性を見殺しにする。夫人のこともあり、あれだけもう後悔したくないと心に決めていたのに。ヘスは「ウクは変わらない」と信じようとしましたが、むしろウクは変われなかった。自己嫌悪で死にたい気分でしょうが、一族の命がかかっているので、自分で勝手に死ぬこともできない。彼は自分の精神の死を、あの雨の日に経験したんだと思います。

第一話で「人は簡単には変われない。一度死ねば別の話だが」とあるので、彼が変わるとしたら、皮肉ですが、この悲劇のあとになるのでしょう。

自分のせいでヘスを傷つけたため、ウクはヘスに近づくことすらもうできないと思うかもしれない。だけど、それが余計ヘスを傷つける。

ウクにはもう、悪い夢しかみることしかできないのだろうか。

 

あと第11話を通して思ったのは、皇子様は女性を救うことができない、ということです。男性たちは皆(皇帝でさえ)、しがらみにとらわれて簡単には動けない。今までもそういったことは描かれてきましたが、今回ほどそれが如実に表れた回はなかったと思う。

ヘスはもちろん尚宮もヨンファも皇后たちも、そして名前のない女官さえ、みな命懸けで行動する。一方皇子たちは、正直ほとんど何もできません。見守るのみ。ワンソだけが、命を懸けヘスを守ったように見えますが、彼にとっても王の命令は絶対であり、それを覆すことはできない。彼はほとんど背負うものがなかったからこそ、ほかの皇子たちよりも大きく動くことができたのだ、という見方も十分できます。(ただ毒茶を飲んだことで、彼の英雄性は確固たるものになったのは間違いないけれど)

「皇子様(王子様)は女性を救ってくれる」というファンタジーを、完全に壊した第11話でもあった気がします。