お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『月の恋人』 18話 捨てられた子どもたち

☆ネタバレしています☆

 

どんどん話が進んでいくので、気持ちがついていかん。

 

18話も大きな出来事がたくさんありました。

ワンソとヨンファの婚姻。ジョンの追放&軟禁。皇后ユ氏の死。ワン・ウォンの告白とワンソ暴君への兆し。ヘスの皇宮脱出決意。

 

本当に色々あるんだけれども、やっぱり今はチェリョンのことを書きたい。

チェリョンは18話で公開処刑されてしまいます。麻の布にくるまれ、死ぬまで叩かれ処刑されました。

 

15話あたりから泣かない回はないけど、チェリョンの件がショックすぎて、まだ放心状態です。オ尚宮や、ワンウンの時も超泣いたけど、チェリョンは予想以上にかなり序盤から伏線を出していたこともびっくりしたし、ヘスに残した言葉もエモーショナル過ぎて…。あの屈託のないかわいい女の子は、なんて切ない人生を送っていたんだろう。

 

チェリョンはワン・ウォンの内通者でした。もともとはウクの家でなくウォンの小間使いであり、今まで起きた様々な悲劇に関わっていた。罪を犯していました。ウォンがウクとヨの間でふらふらするたびに、彼女は彼らの手足となり、また密告も続けていた。ヘスとワンソの結婚を阻む流れにも加担していました。

浴穴のことをヘスに教えたのはチェリョン。そしてチェリョンに教えたのはウォン。

 

ウォンとチェリョンが何かあるっていう描写はあったし、水銀事件の時なんか結構露骨描写だったので、むしろ今までスルーだったのがおかしいくらいでもありますが、ここにきて公開処刑されるとは…。

 

チェリョンがそんなことをしたのは、ただワン・ウォンが好きだったから。物乞いをしていた子供の頃に、自分に目を止めて銀を恵んでくれたから。物乞いをするチェリョンの「その必死さが気に入った」と言ってくれたから。日和見でせこい(銀をちょろまかして金儲けをしていたことが判明)ウォンのどこがいいのよ、って思うけど、チェリョンにとってはただ一人の皇子様だった。「一度好きになった人に対して想う気持ちを、止めることができなかった愚か者です」。

チェリョンは字の読み書きができないって言っていたけど、ずっとそう言い続けていたけど、本当は知っていた。スパイですからね。ウォンに読み書きを教わっていた。その時のチェリョンの幸せそうな顔。ヘスがウクに字を教わった時と同じように、彼女もその瞬間、胸をときめかせていたんですね。

 

チェリョンはヘスに手紙を残していました。布に血で書いた遺書。自分の命が終わることを悟り、家族を託す。そして続けます。

「お嬢様ならきっとわかってくれるはず。チェリョンは後悔していません。誰も恨んでいません。何をするかしないかの価値は、自分だけがわかるものなのです」

悪いことだと、愚かなことだとわかりながら、皇帝の湯船に水銀を入れ、ヘスの動向を密告したのは、ウォンの役に立ちたかったから。それだけ。でもそれが、なにより大切だった。

 

チェリョンの処刑現場を見て床に臥せたヘスは、むごいことをしたワンソをなじります。

チェリョンがワンムの湯船に水銀を入れ、ヘスを見張り、陥れるための手足になったのを聞いても、ヘスはチェリョンを責めることはできない。

「あの子の罪は奴婢として生まれたことだけ。私の妹だったのよ…」

 

チェリョンは悪に手を染めていましたが、一方でヘスを想う気持ちも本当でした。ヘスが冤罪で処刑されそうになった時は、ウクに泣いて命乞いをしたくらい。いつもヘスを心配していたし、ヘスの手を包み込んだチェリョンの優しさに嘘はなかった。彼女がウクに浴穴のことを教えた結果、ウンを逃すことに失敗したことも話に出てきますが、もとは純粋にヘスとウクの恋を応援していただけ。

誰かを騙すことと、想うことは、両立するのです。

ヘスはそれがわかってるから、チェリョンを憎むことなんてできない。罪は罪だけれども、あんな殺され方…。立場が最も弱いからこそ、好きな人を想う気持ちを利用され、貶められたことがただ悲しい。妹を使い捨ての小間使いにはさせたくない。

 

ウォンの味方はたぶんチェリョンしかいなかったわけで、彼はこれからどうなるのか。そもそもあのケチくさいウォンが物乞いに銀を与えたって、かなりすごいことですよ。その後、自分のところの小間使いにしたわけだし。4話でチェリョンがヨンファにムチで叩かれてた時も、「あの子はすでに結構叩かれてますよ(だからもういいんじゃないか?)」という発言をしています。

ウォンはチェリョンを亡くしてから、自分で思っている以上に彼女の存在が大きかったことに気づく…に違いない(ウクパターン)。兄弟殺しはしないとヘスと約束したソですが、ウォンにはどんな罰が待っているのか。チクって終わりってことはないでしょう。

 

ヘスは「愛する人が妹を殺した」というショックな出来事と残された手紙が、最後の、そして大きな一押しとなり、皇宮を離れることを決意します。ヘスは未来人としての歴史の偏見だとか、そんなことは抜きにして、光宗という男と一緒にいるべきではないと悟るのです。

 

 17話、18話っていうのは、皇子たちが捨てられていく連鎖が描かれています。もしくは既に捨てられた皇子。そしてチェリョンも。

それはヨが母親に皇帝として見限られることから始まって、ウクも母親に捨てられ、ソは既に捨てられた母親に皇帝になっても認めてもらえない。

ソは、母の愛を独占し、ヨからの譲位を疑うジョンを追放し、ヘスを陥れようとしたチェリョンを殺す(実はワンソはチェリョンが怪しいことは前からわかっていた)。そして自分の大事な人を捨てたソから、ヘスは離れる決意をします。

それと時を同じくして、ウクが憎いワンソはヨンファに「世継ぎが欲しければ、ウクと家族を捨てろ」と迫る。ブラコンのヨンファはどうするか。

 

ワンソは根深いマザコンですが、母が亡くなったことで、今まで以上にヘスに対して求めるものが多くなるんじゃないかと思います。ジョンを母の死に目に遭わせなかったことで、すでに亀裂が生まれていますが、ヘスに無条件に自分だけをすべて受け入れることをワンソは今まで以上に求めている。皇帝という孤独な立場が、また余計そうさせているのだよなぁ。

 

チェリョンのことでもヘスになじられ、ワンソは余計に反逆行為を画策したウクへの怒りが高まっていく上(「ウクのせいで自分はヘスにとっての怪物になった」)、しかも次週はウクと婚姻寸前までいってたことを知り(遅いよ!)、今度はヘスに対しても愛するが故の憎しみが生まれそう…。

ウクは次週予告で「告白したいことがある」ってワンソに言ってたけど、ヘスとの過去だろうか…ここにきて「欲しいものを欲しい」と言うのだろうかね。一番言っちゃまずいタイミングで…。そのあとも、ハメられて殺されんばかりだったし。ウクは歴史上まだ生き続けるので、何かしらの理由で危機を脱するはずなんですが、「兄と家族を捨てろ」とソに言われたヨンファがどう動くか。彼女は兄に本当に借りを返せるのか。ウクはヘスを裏切ったことから、どんんどんドツボにハマっていったので、ここで裏切り者としての自分と対峙して、本来の自分を取り戻してほしいけど

 

ヘスとウクが想い合っていたこと自体はぺクアも知ってましたよね。この件に関してペクアは何か言うのか。

ペクアはウヒとの関係も危うい。ウヒもまた愛しながら騙していた人。このドラマのカップルはだいたい花に囲まれるシーンはあるんですが、この二人だけはないんですよ。植物はあっても、花は見たことない(…って思ったら、12話で二人がいるシーンに花の絵がかいてある屏風が映ってた。屏風…うーん)。うまくいく予感がしない。

あとはぺクアって出番が多いわりに、成長とか変化とは遠いキャラなんですよね。「心揺れること」がテーマのひとつなのに、大きな揺らぎがよくも悪くも見えない人物。ワンソの激しさが増す中で、彼はどんなエンディングを迎えるのか。彼の性格的にずっと政治にかかわるのはきついのではないかね。

追記:ペクアは賢いので、もしかしたら、ウヒがワンヨのスパイだったことに気づいているかもしれないね。

 

大将軍が初めて登場した時に(7話)に、「最後まで松岳で暮らせる皇子様は、皇位に就く方、おひとりだけです」とソに言っていたし、光宗が長く在位するのであれば、他の皇子は退場するしかないのかな。兄弟はもう一緒にいられない。

光宗は、孤独な皇帝、血の君主として生きるしかなくなっていきそう。歴史は変えられないのか…。

 

今回ジョンは本当に色々と気の毒でした。追放され、母も看取れなかった。

と同時に、「本当に望むときが来たら、皇宮から出してあげる」っていうことを2話連続でヘスと約束したのは、すごくドラマ的。合言葉は「望んでる」。18話の最後、ヘスが「ジョンに伝えて欲しい」とペクアに頼むのがこの「望んでる」という言葉でした。

ジョンはどんどん魅力的になっていくなぁ。お芝居もいいし、ペクアの差し出した水を飲まない、っていう演出素晴らしかった。

 

余命宣告を既に受けているヘスが、予告ではワンソに過去の恋愛をかなり責められていたので、もうハッピーがまるで見えないけれど、このドラマは雰囲気をガラっとかえるのが上手いので、なにかしら最後は明るいものを残すのだろうと期待しています。もっと色々整理もしたいけど、さばく情報がありすぎて…。もう一回くらい書けるかな。

チェリョンのことで動揺して、いつも以上にうまくまとめられないよ。うん、もう一回書けたら書こう。

 

ファンボ母も今回かなり強烈だったけど、(「ワン・ゴンは国を守るために犠牲を払っていた。私もそのために息子を捨てたし、娘を差し出している。皇位を退くのは死ぬ時だとご存じでしょう」とソに娘の結婚を迫り、ヘスにスパイ容疑をかける)、皇后ユ氏の最期は本当にすごくて、これもちょっと別エントリじゃなきゃ無理ね。このドラマで亡くなる女性キャラは皆「後悔はない」と去っていきますが、皇后ユ氏は別。この人は後悔してる。死の間際に皇后が話せなくなっちゃうんだけど、ちょっと「エデンの東」っぽいなとも思った。

 

どんな母でも、母は母。

そして、母も揺れながら生きている。最期の瞬間まで。