お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』 第12話を見たよ①

☆ネタバレしています☆

 

あちらは超佳境ですが、こちらは再スタートを切った感じの第12話。

 

 

<第12話のあらすじ>

オ尚宮が亡くなった。ソはヘスを茶美院に残すため、皇帝からの危険な任務を引き受けるが、ヘスには皇宮を去るよう密かに命令が下されてしまう。「皇子たちには挨拶もせず出ていけ」と言われたヘスだったが、ソには顔を見せる。笑顔で「待ってろ」と言うソに、「私のことを忘れて」と言うヘス。ウクはヘスに顔向けさえできないまま別れる。

一年後。

ヘスは皇宮のなかで最も身分の低い教坊の雑仕女として働いていた。ウクは静かに皇位を狙い、ソは任務を終え皇宮へ帰還。そして、それぞれ再会する3人。運命がまた動き出す。

ヨは豪族を後ろ盾に堂々と皇位を狙い、ジョンは家族と離れウク派に。ウンはスンドクと結婚生活を続けるものの、ヘスのことが忘れられない。

ウクに政治的人質としてヨと婚姻させられる可能性を恐れたヨンファは、長く想ってきたソに婚姻を申し込むが断られる。

皇帝は体が衰弱。ヘスを呼び出し「お前はどこから来た?」。皇帝はヘスが未来から来たことを知っていた。「何もしてはいけない。未来にとらわれて今を見失うな」と忠告を受けるヘス。

一方、ペクアは後百済王宮の生き残りであるウヒと惹かれ合っていた。貴族と妓生。互いに身分を隠して。しかし、ウヒがいよいよ皇帝暗殺をする瞬間に居合わせたペクアは、ウヒの目的に気づき、自分の体を呈してウヒの暗殺実行を阻止する。

 

11話があまりに劇的なので、12話は一度トーンダウンというか、仕切り直していく回です。オ尚宮が処されたあと、皇室はどうなったのか。そして一年後、それぞれのキャラクターにどんな変化があるのか。

オ尚宮を自分のせいで失ったヘスが、とにかく落ち込んでいてつらい。あの溌剌とした元気さはもう完全にありません。相変わらずオラオラのワンソに、今までの自分ではいられなくなったウク。

そしてペクアが命がけの行動に。びっくりしたね(笑)。静かに2幕が始まったかと思ったら、急に劇的。油断できないドラマだ…。

 

 

悲劇のあと

オ尚宮がヘスの冤罪を庇うかたちで絞首刑となったあとの皇宮。

ワンソは「ヘスが茶美院に残してもらえるなら」と、皇帝の命令で危険地帯の偵察に行くことに。「まだヘスの味方をしてるのか!」って皇帝に怒られても、ソは「私が捨てられぬ者です」って言うんですね。で、ソがその場を去ると「捨てられぬなら、父が代わりに捨てねば」って皇帝はヘスの追放をあっさり決める。

今までヘス絡みで騒動が起きてるのを皇帝は知ってるっていうのもあるけど、ヘスの存在はオ尚宮を思い出させるから、皇帝にとっても近くにいて欲しくないんだろうな。

「大事な人を捨てる」ってこのドラマで大きなモチーフのひとつですが、オ尚宮がヘスを助ける選択をした時に、皇帝は「私を捨てるのか?」って言ってたんですよ。自分より大切にされ、愛する人を処するしかなかった原因となったヘスに対して、皇帝は苦々しい気持ちであるに違いない。

 

一方、ヘスは「私なんかに出会ったせいで、オ尚宮は死んだ」って、もう落ち込んでるっていう言葉じゃ足りないほど落ちてる。オ尚宮はヘスの冤罪の身代わりになっただけじゃなく、事件が起こる前から、何度も「皇子たちと離れろ。命が危ない」って心配&警告してくれてたし、「一緒に故郷に帰ろう。皇子の気持ちが変わったらどうする?」とまで言ってくれたのに、ヘスは自分の気持ちを通してしまった。後悔してもしきれない。

 

ヘスは出官する前、ソにだけ会いに行きます。

ソは「つらいことは忘れろ。茶美院で俺が帰ってくるまで待ってろ」って笑顔を向けますが、ヘスは「皇子様も私を忘れてください。これからはどうか友情と愛情を区別してください。一人だけに情を注ぐとつらくなります」と伝え、海でもらったかんざしを返します(ソはかんざしを「お守りにしてもっておく」と受け取る。

大変な事件のあとでも、ソはヘスに対する想いも態度も変わらない。不意打ちでキスまでしています。

 

 「(待ちません。私のために命を懸けても、俺の者だと言われても待てません。会うたびに怖いです。私の心は他に向いているのに。なぜ無視できないのか)」

ソを見送りながら、ヘスの心の声がナレーションで入る。これってヘスのほうもまたソに対して、友情と愛情が区別できない、名前の付かない情が生まれてしまっているのですよね。ソに会いに行ったのは、そういうことなんだよ。

ヘスのワンソに対する感情ってすごく難しいし、常に揺れ動くんですが、オ尚宮の事件以降、かなり複雑になっていく。ただ、ヘスが言うように、命を懸けられたのは大きいと思います。ウクに対する恋心とは、全く別のものです。

 

対するウクは、事件のあとヘスを見かけても声すらかけられない。背を向けます。ヘスは自分に背を向けたウクに気づく。ヘスも声はかけません。

そして、ウクがヘスあてに手紙を書こうとしていた矢先、ヘスが茶美院を去ったことを知る。慟哭のウク。

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ウクはまたチャンスを自分でふいにしてる。手紙したためてる場合じゃないよ!それで、いなくなってから、悲しみに暮れるのです。ヘスに申し訳なさすぎて、会っても何を言ったらいいのかわからなかったでしょうけど、あと一歩踏み込む勇気があれば。

ウクも情けない自分がわかっており、だからこそ、これから生き方を変えていく。

 

 一度手を組んだ皇后ユ氏とヨンファはコンビ解散(母親を貶めた皇后をヨンファは許さない)。ヨは叔父である超有力豪族ワン・シンニョムから皇位獲得のための後ろ盾約束を得て帰還。後ろ盾の代価は遷都です。

 

 

「逆賊を討った逆賊は、英雄になる」

一年後。

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皇帝が「訓要十条」という遺訓を出した皇宮を舞台に、物語は再始動。そのなかには「長男以外も皇位を継げる」という項目があり、ワンヨは豪族を連れて野心むき出し。 ジョンはウクと過ごすようになり、軍人として頭角を現しているようです。皇后ユ氏とも距離を置いている。

「(ヨは)欲張りすぎて、痛い目に遭わないか心配です」というジョンに、「いずれわかる」とウク。

 

一方でワンヨは「俺が皇帝になったら皇后に」と、指輪と共にヨンファに婚姻を迫る。この人、本当に欲張っている(笑)。今の夫人の父は後百済出身の力を持つ左丞なので、皇帝になるまでは必要だが、皇帝になった後は邪魔だと。

「俺は人間の弱さを知り尽くし、お前は暗さにすぐ気づく。俺たちは天が定めた縁で結ばれている」

 

ウクがそこで入ってきます。ヨに「私たちは敵対してるように見せねばならないので、頻繁に来ないで」みたいなことを言う。ウクはヨと手を結んでいました。なんと。ヨが浦に偵察に出る前に、「一緒にやろうぜ」的な誘いを受けていましたもんね(10話)。

ワンヨは訓要十条があるから、今にでも現皇帝を討ちたい模様。「子が親を討つとは」っていうウクに「父は息子を殺すというのに。なぜ息子はならぬ?」って冗談と言いながらも本気度100%なのですが、死ぬ可能性が高い浦へ送られたことをかなり根にもってるのだろうな。

「俺を推す約束は忘れるな」

「もちろんです」

 

皇位を狙わず、ヨの陰になる兄が理解できないヨンファ。

「皇太子を追い出せない。皇位についても逆賊だ。だが、逆賊を討った逆賊は、英雄になる。今はヨ兄上の陰でいい。忠実な影」 

ヨ兄上が裏切ったら?という妹に、「おまえが助ければいい」と、指輪をほめながら、暗にヨの人質になれと言うウク。 

「同業者、担保、気のすむ名前をつけろ。お互いに借りが多いからな。その程度は甘んじろ」

 

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ウクはウクでかなり根に持ってるぞ…。滅茶苦茶わるい顔してるよ!ウク様があからさまに黒笑顔作るとはw!ヨンファもちょっと怯えてる。

家族のためにヘスを守れなかったウクは、物事に対する態度が変わっていました。ずっと「いい子」で生きてきて、初めて自分の希望を言ったら潰されてしまった。ヘスに何もできなかった自分も情けなく腹立たしいけど、そう仕向けた妹や家族、周囲全てへの怒りも相当なのですよね。あのような経緯でヘスを失って、以前と同じように生きていくのは無理です。他人を変えるのは難しいですが、そこに理由があれば自分自身は変わることができるし、変わってしまう。

 

 

「私に会いたかったですか?」

皇宮の一年後が少し描かれてから、やっとヘスが出てきます。他の雑仕女たちが皇子たちのゴシップで盛り上がる中、心完全に閉ざし無表情のまま、黙々と洗濯をするヘス。「皇子様の話をすると大変な目にあう」と冷たく言い放つヘスは、「あんたのせいでオ尚宮は死んだ」と一番辛い部分をさされる。拷問で引きずったままの足を踏まれる。洗った洗濯物も川に流される。いじめ。

 

 

ジョンはウクにこの様子を見せますが、 ウクは冷たく立ち去ります。

「もう1年です。放っておくのですか」

「教坊の雑仕女だ。皇宮で最も卑しい者になぜ関わる?」 

「私はわかっております。兄上は姉上に心を寄せていました。何か理由があるのですよね?兄上はこんな人ではありません」 

「俺まで死ぬわけにはいかぬ。ヘスを追放したのは陛下だ。逆らえぬ。お前も気をつけよ。皇宮は一瞬の過ちで追放される場所だ」

ジョンはいい子だよ…。でもウクの言い分もわかる。ウクのせいでヘスを苦しめてる以上、これ以上最悪の状況にはさせたくないと。彼らはまさに薄氷の上を生きている。

 

だけど、ウクはヘスにやっぱり会いに行くんですよ。夜に人知れず。

二人はものすごく静かに再会する。

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「脚はまだ治らぬのか。ジョンが薬を送ったと」 

「長く働いたり、水場にいると痛みます。大丈夫です」

「寂しいか。私が…憎いか?」 

「会いたかったです」 

「なんの約束もできなくて、来られなかった。私が情けなくて…お前の力になれなくて…」 

「それでも会いたかったです」 

「オ尚宮のことで陛下の怒りが大きく、お前を連れていけぬ。婚姻も切り出せぬ」 

「…会いたかったですか?一度でも私に会いたかったことは、ありましたか?」

「毎日、いつだって恋しかった」 

「それで充分です…いいのです」

「もう状況が落ち着く。私が力をもてば…」

「無理しないでください。危険なこともいけません。もうたくさんです」

「元気でいてくれ…これ以上申し訳ないと思わせないでくれ」

 

韓国版だと「私が憎いか?」と聞かれた後の「会いたかった」「それでも会いたかった」というヘスのセリフがカットになってます。このシーンはインター版の方が私は好きですね。ヘスの気持ちがわかりやすい。ヘスはウクが恋しかった。ウクが背を向けたことも怒ったりしていない。失ったものも、それを奪ったものの力が大きすぎて、もはやそういうレベルではない。事件が起こる前に二人は共に夢をみて、様々な約束をしたけれど、何一つ果たせなかった。「皇宮は約束を捨てさせる場所」だと痛感したヘスとウクは、互いに辛い一年を過ごしました。

 

この二人はそれぞれ自分のせいで大切な人を傷つけ、失ってるので、ある種の共感があります。それに、お互いをまだ想い合ってる。この状況をどうすることもできない、ってこともわかってる。ヘスは静かに泣いてますし、ウクもジワっと涙がわいてこらえている。ウクは泣きたくても、ヘスの前では泣けないよな…。

 まっすぐ生きることを止めたように見えるウクですが、ヘスと再会したこのシーンではまだどこか本来の心をとどめてる。こういうウクはもう最後なのかな(まだわからないけど…)。

 

 

「会いたかった」/「放っておいて!!」

ワンソが遠方の偵察から帰還します。

「今度は別の場所へ」という皇帝の命令を拒否するソ。ヘスを追い出したからです。

「今もあの子に未練があるのか!皇帝は皇室と国のために誰でも捨てねばならぬ。代わりに捨てたと感謝すべきだ」

「私は皇帝ではなく、皇帝にもなりません。正胤の味方が必要なら、私を縛らないでください。これからは私も人間らしく生きます」

 

こう言ってた人が皇帝になるんだから、本当にわからないものですね。

ワンソが去ると、皇帝は大将軍とジモンに「そうこなくては」と満足気に言います。

「もう誰と戦っても負けぬ。あの程度になれば、安心して死ねる」

皇帝は自らの死期が近いことに気づいている。

 

皇宮に戻ったワンソは早速ヘスに会いに。

 

「会いたかった」「きれいだ」

ウクとは対照的に、日があるうちに堂々と会いに来るソ。表現もかなりストレートです。後ろからのハグ。ロマンチック。ヘスを忘れないように、と仮面をつけて過ごしていたソ。ヘスの前で、また仮面を外す。

ヘスは「もう皇子には会える立場ではない」とソを振り切りますが、それでもソは追いかけます。

 

「もう行ってください!」 

「ここはお前の場所ではない。行こう」

「放っておいて!!私は死ぬことも生きることもできません。亡くなったオ尚宮も、一寸先が見えない皇宮生活も、体が疲れたら忘れられます」 

「今度は俺がお前を助ける。すべて忘れさせてやる」 

「一番避けたい人が皇子様なのに!会えば、忘れたい思い出がよみがえります。また何か起きるかと、不安で心臓が縮まります。一緒にいると怖くて緊張するのに、一緒に行こう?私を殺す気ですか?お帰りください。私はこのままで結構です。耐えられます。

皇子様は、どうか幸せに、恨みも憎しみも残さず。忘れてください。誰も傷つけないように」

 

ウクには静かに対面したヘスですが、ワンソに対しては激しく感情をぶつけ拒絶します。これは同じくインター版なのですが、韓国版だとワンソに泣いて怒りながら、ヘスの「私への情はもう捨てて」「私のために自分を捨てないで」という心の声が入ってます。

韓国版だとヘスの心情をワンソ寄りに、インター版だとウク寄りにしているのかな。両方とも同じ解釈に行きつく受け取り方は十分できるけど(ヘスはいい子だし、ワンソに情があるので、ナレーションを入れずとも本気でソを憎んでる訳ではないことは想像つく)、小さな違いでニュアンスが変わるのは興味深いです。

ヘスはウクには「私に会いたいと思ってくれたならそれでいい」と言い、ソには「私を忘れて」って言ってる訳ですが、言葉通りだとウク寄り、言葉を裏返せばソ寄りになるのも面白い。両方真実なんだと思います。いずれにせよ皇子たちとはもう関われない。

ただ、恋愛感情で言うと、ヘスはウクにまだ寄ってる(と思う。あんな別れ方をしてるので仕方ない)。

 

ヘスが教坊で黙々と仕事をするのと、ウクが皇位獲得にのめり込むのは、結局この「生きることも死ぬこともできない。つらいことを忘れたい」っていう理由からきてるのですよね。あまりの喪失感で、何かに没頭しないとつらすぎる。立っていられない。強いストレスからくる現実逃避です。

ヘスの場合は肉体的にはきついものの権力がらみとは無縁ですが、ウクの場合は、ただひたすら作業するのではなく、戦略をたて、ゲームに参加しなくてはなりません。この辺の違いが余計にウクを変わらせていったんでしょうね。

 

ソはウクのような自責の念がなく、また欲しいもののためにはすぐ行動に移すことのできる人物なので、帰還してすぐにまっすぐヘスを求めることができる。皇宮を離れていたということも大きいですよね。ヘスからも松岳からも離れたくはなかったでしょうが、ヘスを失ったとは思ってないし純粋な気持ちを保ったままです。

ウクは悲劇であり自分の失態が起きた場である皇宮にずっといたので、かなりつらかったと思います。

 

はぁ、ここで「不安で心臓が縮まる」って言ってるねぇ…。

 

つづきます。