☆ネタバレしています☆
向こうでの放送が全話終了しました。燃え尽きて…やっと復活してきた(笑)。
原作本や中国版ドラマを知らず、オリジナルとの違いがわからないのですが、いやはや最後まですごい。そして、結末までいって、また1から見直すといかに伏線を張っていたかがわかりますね。本当によくできたお話。
というわけで、ここから私は結末まで知っている状態で、『麗』のエントリを続けていきます。扱う話の先のネタバレもうっすら漏らすと思いますが(なるべく気をつけますが…)、できれば今放送しているNK版も最後まで追いかけて、このドラマがやろうとしたことをもう一度考えてみたい。ここから、どんどん難しくなるので、どこまで言語化できるかわからないんだけど。
さて、第13話。歴史が動きます。
<第13話のあらすじ>
初代皇帝・太祖が危篤となり、いよいよ譲位問題で物々しくなる皇宮。皇帝は正胤に継いでもらいたいが、こんな時に限って松岳を離れている。ヨはウクと手を組み、正胤がいない間に皇位を実力行使で奪還することを画策。それを知ったソは、一刻も早く正胤を宮に戻らせるべく動く。皇帝の死が公式になる前に正胤が戻らねば、皇位が奪われるのは確実。皇帝が秘密裏に亡くなるなか、皇子たちは正胤派、ヨ派、関与しない派に別れ、皇位争いが本格的に始まるのだった。そして、その争いに巻き込まれるヘス。
色々話が入り組むので、あらすじ短め。
皇子たちが、皇位のために駆け引きしていく回。それぞれに思惑があり、お互い裏をかいて動いていくのが面白い。アクションも大変にカッコいいです。
この13話から皇子達の皇位争いが続いていくのですが、この時点で、ソとウクが皇位に対しどういうスタンスなのか、っていうのが発言に出てくるのはかなり重要です。どこまで言葉通りに受け取るか、ということも含めて。
また、ソとウク、という2人の皇子に挟まれたヘスは、この皇帝崩御&譲位を通して、自分の気持ちに区切りをつける回でもあります。
ちなみに、12話最後でウヒがペクアを刺してしまいますが、同じタイミングで皇帝が倒れたため、ペクアはウヒをどさくさ紛れに逃がしています。ペクアは負傷したものの、命に別状はありません。ペクアをこんな飛び道具的に使うとは思わなかった(笑)。
「何のために生きてきたのか…」
妓女の合評会で倒れた皇帝は、死の床に伏せます。大将軍とジモンが見守るなか、自らの死がすぐそこまで来ていることを悟る皇帝。
「誠にはかなく、はかないものだ…何のために生きてきたのか…」
「陛下は帝国を築かれました」
「帝国…この高麗は永遠に続くだろうか…正胤を選んだのは正しかったのか…」
3つの国を統一し、偉大な高麗帝国を築いた皇帝でさえ、「人生は儚い」「何のために生きてきたのか」「自分の選択は正しかったのか」と最期に思う。そこには後悔があり、たくさんの想い残しがある。むなしさがある。
高麗が永遠に続かなかったことを私たちは知っています。ジモンもまた。
最後まで自分を信じて人生を全うしようとしたへ夫人やオ尚宮と対照的ですが、実は、この皇帝の最期の方がずっと「普通の」人間らしいですね。
皇帝はあまりに多くの業と罪を背負ってきているからこそ、この言葉が出てくるとも言えますが…。
「何のために生きてきたのか」問題って、このドラマで何回も出てくるんですよね。生まれて、死ぬことに、どんな意味があるのか。答えのないことに挑戦している。誕生日会をやってみたり(ヘスは「なぜ生まれたの?」と歌っている)、人の死をあえて直接見せているのも、そういう目的があるのだと思います。
あと、大事なのはこの場面で、正胤とソを大将軍とジモンに託していること。
「俺が責任をとるから、待ってて」
皇帝が愛したオ尚宮と同じ配合のお茶をつくれるヘスは、秘密裏に皇宮に来ています。夜、誰もいない茶美院で茶の用意をするヘス。手を動かしながらも、ソに婚姻を申し込まれたことを思い返します。
そこにやってきたのがジョン。
「茶で陛下の食欲が戻ったと聞いたが、やっぱり姉上か」
茶を出したら帰る、と静かに返すヘス。ジョンは語りかけます。
「とがめたのではなく、久しぶりに茶美院にいる姉上を見て嬉しくて。…戦に行ってきました。姉上の茶を飲むのを楽しみにしてた」
「ごめんなさい」
「そう言われると言葉がない。何もできないのに…」
ジョンは両手でヘスの肩をとります。
「俺が帰ってこさせる。もう大人だから」
「私は大丈夫です…」
「もう姉上とは呼ばない。俺が責任をとるから、待ってて」
このジョンのシーンは確か韓国版にはないはず。KNが先にインター版やってくれてよかったよ(笑)。
ジョンはヘスに助けられてから(4話)、自分のペースでずっとヘスを想ってる皇子です。官女だったヘスがソに勝手に海まで連れていかれた時も行動を起こしたし、ヘスが窮地に陥った時は「どうにかできないか」と心を痛め、一緒に遠くから雨に打たれた。ヘスが雑仕女として働いていることを探し出し、ウクにそれを伝え、ヘスに薬を送っています。
外でけんかして遊びまわっていたジョンが、時を経て、大人になったことを宣言。「いつか自分にもヘスのために何かできる」と信じる青年に成長しています。
天徳殿は皇軍に包囲される
皇帝が危篤状態になり、皇帝が臥す天徳殿は皇軍に取り囲まれます。
皇帝の譲位したい皇子は正胤であるワンムなんだけど、長男でなくても皇帝になれるルールが最近発表されてるし、皇帝が亡くなった瞬間に譲位ができない場合(ワンムが皇宮にいない場合)いきなり皇位争いで血が流れる可能性があるからです。っていうか、皇帝が弱った時点で、いつ謀反が起きてもおかしくない。
誰に譲位したいかっていうのを記したのが「ユゴ」って言うみたいなんだけどI(漢字が難しすぎるのでカタカナですみません苦笑)、ヨはまさに、このユゴを奪って自分への譲位へと書き換えようとしてる。うまい具合にちょうど正胤は松岳にいない。ヨの画策を積極的に手伝うウクは、正胤が戻ってこれないよう松岳に入る道を塞ぐよう手を回します。そしてなんとなくヨ側に入るウォン。計画を何も知らないジョン。
大将軍は何としてもユゴを守るため、皇子たちにも容赦しない。
「疑われたくなければ お帰りください」
皇帝が亡くなったか、ということ自体が超重要機密となるので、皇后たちさえもはや皇帝と会うことはできません。正胤が宮にいない間に、皇帝が亡くなったことが表に出て、譲位が別の皇子に奪われるのをとにかく防がなければならない。
しかし、ただ一人、死の床にある皇帝のそばにいる人物がいました。ヘスです。
「お前に高麗皇室の運命がかかっておる。誰も信じるな」
死にゆく皇帝に、茶をひとり出すヘス。
「茶の香りまで、スヨンに似ておる…」
スヨンっていうのオ尚宮のことなんですけども、皇帝の心の中にいるのはやっぱりオ尚宮なのよね。にもかかわらず、皇位と正胤を守るために、オ尚宮を処してしまったっていうのがね…。はぁ、皇宮では皇位と心は同時に守ることができないのよ。
それで、皇帝は弱りながらもヘスにものすごい命令をします。正胤を呼べ、と。
「お前が行け。皇宮にいるものは皆、正胤が来るまえに朕の死を知ってはならぬ」
皇位争いに絡んでないヘスだからこそ、頼むんですね。
皇帝は、横たわったまま、こう忠告します。
「部屋が出たら、誰かが近づいてくる。朕の容体を聞くはずだ。どうかとだけ聞く者には、『茶を欲しがっている』と言えばよいが、死んだかと聞く者には気をつけよ。その者は皇位を狙っておる。
早く行け。誰も信じてはならぬ。お前に、高麗皇室の運命がかかっておる。これもお前が高麗にきた理由であろう」
部屋を飛び出していくヘス。拷問で痛めた足を引きずりながら。
ヘスは歴史に関わりすぎだし、酷だよ…泣。ともあれ、この皇帝の言葉は、これから駆け引きと争いが始まりますよ、っていうことなんですよね。
「皇帝になりたいのですか?」
ここからソとヨンファ、ウクとヘスそれぞれが遭遇し、同時に会話が進行する展開なんだけど、ここでソもウクも「俺は皇帝になる」と初めて言うんですね。
実質いま皇位争いはワンムかワンヨか、のはずにもかかわらず、対話によってソとウクの現時点での皇位に対する気持ちを聞き出しているのが、面白い。つまり今の皇位争いは始まりにすぎない、ということです。
またヘスとヨンファが「皇帝になりたいか?」と聞くのにも、それぞれ意図があります。話の流れ的には、こっちのほうが大きいですね。何故聞いたのか?
ソとウクはそれぞれ全く違う立場と思惑で「皇帝になる」と言う。それを見る側は比べます。2つの会話場面をを何度もスイッチさせながら、ほぼ同時に「皇帝になる」という発言になるよう編集されていて、かなり緊張するシークエンスです。超重要。そこには本心と嘘が混ざっています。
しかも、ソ&ヨンファ、ウク&ヘスの会話シーンが行ったり来たりする真ん中に、更に皇帝が亡くなるシーンを入れている。皇后ユ氏、皇后ファンボ氏に看取られるんだけど、皇帝・太祖の最期の言葉は「スヨン…」なの。
オ尚宮は亡くなる直前、皇后ユ氏に「皇后さまは私に勝ったことなど一度もない」って言うんだけど、この「スヨン…」という言葉で完全にそれが証明されてしまいます。
本当にこの流れがすごすぎる。皇位っていう社会的なことと、誰を愛するかっていう私的なことを、3つのどの場所でも多元的に描いていて、重層的にもほどがある。素晴らしい。
ここではソとウクの「皇帝になる」宣言の流れを、まとめてみます。実際に映像でみると、あっち行ったりこっち行ったり、かなり複雑なことをしてるので、ついていくのが大変です。
「皇帝になれば、求めている心が俺のものに?
得られるならば、俺はなりたい。皇帝になる」
ソに「皇帝になりたいか」と聞くのがヨンファ。
ソは一人松岳を出ようと馬を走らせていました。前の晩にウクとつかみ合いになった時に(12話)ウクが服の下に鎧を着てるのを見て、皇帝を合評会で討とうとしていたことに気づいていたんですね。結局、計画は頓挫したものの、皇帝が倒れた今、正胤を戻さないと譲位が危うい。
しかし道はウクが手を回して塞いでいる。ヨンファがそこに現れます。
「誰も松岳からは出られません」
「思った通りだ」
ソは、ウクが松岳から出れないよう指示し、合評会で皇帝を討とうとしたであろうことを問う。
「昨夜のことはどうでもよいのです。今は誰が皇位に就くかが問題です」
「正胤が継ぐのが、陛下の意思だ」
「兄上はどうなのですか?皇帝になりたいのですか?」
「皇帝はそんなに簡単な地位か?」
「私が協力すれば、私が、ファンボ氏が後ろ盾になれば、なれます」
「皇帝になれば何ができる」
「天下が兄上のものになり、全てが手に入ります」
「では人の心も持てるか?皇帝になれば、求めている心が俺のものに?得られるなら…なりたい。俺は皇帝になる」
「人の心を得るために皇帝に?そのような座ではありません」
「俺にとってはその程度だ。道をあけよ。謀反を企てているとみなす」
あくまで謀反を防ぐため、と道を開けないヨンファ。
ソがとにかく欲しいのは、ヘスの心。「皇帝になる」と言いますが、方便で言ってるだけであり、ヘスと一緒にいられればそれでいいと思っている。前日にヘスを婚姻を申し込み、「皇宮をはなれてもいい」と言ってるくらいだし、ここに嘘はないはず。皇帝にも皇位に興味がないことを宣言しています。だから「皇帝になりたい」はこの時点では本心ではないのです。(ソは皇后ユ氏にも売り言葉に買い言葉で「皇帝になる」と言い(9話)ヘスが大変なことになったので、こういうこと言わない方がいいとも思うんだけど…)
あと見逃せないのが、ヨンファがソになぜ「皇帝になりたいか?」と聞き、「自分の後ろ盾があれば皇帝になれる」と言ったのか。それは、万が一ワンヨが皇帝になった場合、ヨと婚姻させられる可能性があるから(12話)。ヨンファとしては何としても避けたいけど、場合によってはウクに人質結婚させられるかもしれない。
だからこそ、ヨンファはソに婚姻を申し込んだわけですが(そして断られている/これも12話)、皇位をちらつかせてでもソを味方につかせたい。なんなら婚姻したい。
ウクは現時点で正胤から皇位を自ら奪おうとしていないので、身を守るためにソに皇帝を狙わせたい。ヨンファにとって大事なのは、兄よりも自分なのです。「自分が一番大事」って思うことを責められるかっていうのは、また別の問題として。ヨンファは切羽詰まってる。
だから、ソに皇位を求める意思がないと確認したあとは、ウクの指示に戻り、松岳から出る道をふさぐ。自らだけのための駆け引きをやめ、兄の計画に引き下がります。これ以上進むと、今度はウクを裏切ることになり、それはそれで危ない。
このふたりは、かなり率直に話していると思います。
「ファンボ家の後ろ盾さえあれば、皇帝になれる」という発言も、後々効いてきます。
「お前を失った時、強い力が必要だと悟った。
お前のために、私は皇帝になる」
皇帝に正胤を連れてこいと言われたヘスは皇宮を走る。それに気づいたウクが呼び止めます。
「スよ…急いでどこに?」
「陛下のお茶を入れに、茶美院に行きます」
「ソと婚姻する関係とは思わなかった。驚いた」
「誤解です。ソ皇子様は…とにかく、今は陛下の使いを。戻ってから話します」
会話が止まるふたり。ヘスは去ろうとしながらも、何か迷っています。しかし、秒差で先に沈黙を破るウク。
「…もしや、陛下は亡くなったのか?」
ウクの発言に驚くヘス。
「心配なのだ。陛下は崩御を?」
死んだかと聞く者は皇位を狙う者、と皇帝に聞かされたヘスは恐る恐る聞きます。
「皇子様は…もしかして…皇帝になりたいのですか?皇帝に…なるのですか?」
「 お前を失った時、私の力で何もできなかった。この皇宮で、私が大切な人々を守るには、強い力が必要だと悟った。… 皇帝になるかと?…皇帝になる。お前のために、皇帝になる」
「私の為に?私のせいで?」
「もう始まっている。明日、ヨ兄上と天徳殿を討つ」
「なりません。それは…謀反です!」
「スよ。どうせ正胤は戻れぬ。空いた席を争うだけだ。それゆえ、お前は何も言わずに私を待っていればよい。そうしていてくれるか?」
「もう一度聞く。陛下は崩御されたのか?」
「陛下は『茶をくれ』と仰せに…」
呆然としながら去るヘスに、「正胤はチャヒョン以南におり、お前には呼び戻せぬ」ほど遠くにいると、釘をさすように言うウク。
ウクがヘスを呼び止める時に言う「スよ」が、こんなに怖い声色になったことはないです。初期の優しい声じゃ全然ない。
ウクは賢く察しのいい人物です。恐らく、雑仕女であるヘスが皇宮内を急ぐ姿を見た時点で、ヘスが何をしようかわかってますよね。皇帝が亡くなったか、それに近い状態であると見当がついている。ヘスが皇帝が「亡くなった」と簡単に言えない立場にあることも。
ウクが皇位を狙っているのは明らかです。後に本人も改めて認めてる。ここでウクが言う「皇帝になりたい理由」にも説得力がある
だけど、嘘もついています。ここはもう、はっきりネタバレしますが、ウクは正胤と通じており、ヨをつぶすために手を組んだふりをしている。ウクは純粋に謀反をする気はありません。
嘘をつくのは、ヘスの気持ちを確かめるため。本当に自分を想ってくれているならば、黙ってくれているだろう、と。
あえて嘘が混ざった謀反話をヘスにしたあと、「誰にも言わずに、待っていてくれ」って言うあたりのウクは、かなり切実な顔をしています。この切実な気持ちは真実だと思う。 ウクはヘスに「自分の味方でいて欲しい」と心底願ってる。
だからこそ、命の危険を伴う謀反の話をしてもう一度、「皇帝は崩御したのか」と念押しで聞いたのです。そして、ヘスがそれでも嘘をついたので、正胤は簡単には戻れない場所にいることを伝えます。もし誰かにこの話をするとしたら、ソなのだろう、ということを見越して。
一方、ヘスはたぶん、ウクに正胤を戻すのを手伝ってもらうか迷ってた。皇帝が亡くなったか、と聞かれるまでは。でも、自分の為に謀反で皇帝にだなんて。だからこそ、余計にショックを受けてるんですよね。
ウクがヘスを試した根底には、ウクのとてつもない罪悪感があるのだと思います。ウクはヘスが冤罪に問われた際に彼女を見捨てており、自分はヘスから愛されなくて当然のことをしたと思ってる(ヘスと再会した際も「私が憎いか?」と聞いています)。ヘスを信じていないというよりも、それでもヘスが自分を愛してくれるかどうかが信じられない。
そして、ソへの嫉妬心。これが相当大きい(今ならわかる)。ここでもヘスと会ってすぐソとの婚姻話を持ち出していますが、この人、本当にとんでもなく嫉妬してる。
ヘスはウクの問いかけには嘘をつかざる得ず、結果、二人は互いに嘘をつき合っている状態です。
この「皇帝になる」の一連の流れでは、皇位の話を通して、各キャラの想いが透けて見えるように描かれています。特にウクはセリフと表情を見ると、いかに複雑な思いでいるかがわかる。13話のウクの心情は意図的に分かりにくくされていますが(これからヨを裏切るので)、結末まで知ったあとに見返すと、この人の真意が細かいところまでしっかりわかる。すごいね。
「今一番心配なのは、一人の裏切りだ」
皇宮がに入れないため、ウクとヨンファは私邸にて待機。
「ソが松岳を出るとしたら、皇太子を連れ戻すためだ」
「まさか、すでに陛下はお亡くなりに?」
「まだわからぬ。天徳殿の母上からも知らせがない」
これは、ウクはヘスに、ヨンファはソに会ったことを、言ってないということなんですよね。お互いに隠してる。
ヨンファは、「誰も皇帝の容態を知らないなら、今すぐ天徳殿を討って譲位を奪え」とウクをせっつきます。ソが正胤派であると確認した以上、ウクが皇位を取らないと、自分がどうなるかわからない。
「陛下のユゴに手をつけろと?」
「奪われてもいいのですか?」
「言っただろう?逆賊と言われる皇帝にはならぬ。誰も攻撃できぬ傷のない皇帝になるのだ」
「兄上の本心がわかりませぬ。昨日は鎧を着て入官したはず。ヨ兄上と同調せず、皇太子を討たぬとは…混乱します」
「優先順位を決めるのだ、誰を討つのが有利か。正胤か、ヨ兄上かそれとも…。皇位への道に失敗は許されぬ」
野心を燃やすウクの様子に、喜ぶヨンファ。
「変わりましたね、兄上。心から皇位を求めているように見えます。うれしいです」
「状況が変わらぬなら、俺が変わる。ただ今一番心配なのは、一人の裏切りだ」
ウクは、主とした計画を立てつつも、正胤とヨのどちらが譲位を受けても立ち回れるように、準備を進めています(両方から信用を得るために動いている。鎧を着てるところをヨに見せ、かつ合評会には出席しなかったのもそのため)。また、皇位を狙うのであれば、いずれにせよ、二人に消えてもらわなければ自分の番は回ってこないこともわかっている。本当に優先順位をつけているし、その手はずも見えている。
それよりも今、ウクが知りたいのは、ヘスが自分をどう思っているか。信じていてくれているのか。
「正胤か、ヨ兄上かそれとも…」のあとに来るのはワンソな訳ですが、よく考えると、ソはこの時点では全然皇位を狙ってない。ウクもそれを知っている。
にもかかわらず、なぜ、ウクは皇位の話に、この時点でワンソを持ち出すのか。ヘスとの仲を疑い嫉妬するにしても、ワンソが皇位の権利を持っているとしても、実は突飛なのです。
13話にはこういうウクの「なぜ」が詰まってる。
なぜ、実の妹・ヨンファが驚くほど、ウクは変わってしまったのか。
なぜ、「誰も攻撃できぬ傷のない」ほど完璧な皇帝になることに、彼はこだわるのか。
つづきます。