☆15話以降の展開を含めたネタバレしています☆
☆まずはネタバレなしで見たほうが、圧倒的に面白いです☆
KNでも最終回を迎えました。最終回を見ると、どっと気持ちがやられます。復活するのに、時間がかかる(笑)。そして来週から韓国版が始まると言うエンドレス。
あと、『六龍が飛ぶ』をちょっとだけ見たけど、高麗の後期はこうなってしまうのか…。
<第15話のあらすじ>
ヘスの命を守るため、ヨに屈したソ。ヨは第3代皇帝・定宗となる。譲位を正当化させ、また豪族たちの力を圧するため、有力豪族でウンの外祖父であるワン・ギュをでっち上げの謀反で一族もろとも捕らえるヨ。それらは全てウクが考えた策だった。
ワン・ギュ一族が粛清される一方、逃げたまま行方不明のウンとスンドクを探して殺すようヨはソに命じる。ジモン、ペクア、そしてヘスの命を脅しに使って。
逃げたウン夫妻はヘスを頼り茶美院へ。ウンが手配した舟の出発までの数日間、ヘスは匿うことに。この時既に、ヘスはソがウン夫妻を探すように命じられていることに気づいており、また以前ソがウン夫妻を殺すビジョンを見ているため、匿っていることをソに伝えられない。ソはウン探しを命じられたことを伏せていたものの、その後、逃がそうと考えていることも含めて、ヘスに正直に話すのだが…。
ウン夫妻出発の朝。ヨンファの密告により、茶美院に兵が押し寄せる。「皇子様は先に逃げて」と、ひとり兵の中に飛び込んでいくスンドク。ヘスは「夫人の言うように、皇子様だけでも」とウンを逃がそうとするが、「だめだ、あの子には私しかいない」とウンはヘスの手を振り払い、スンドクのもとへ向かうのだった。
15話はまた怒涛なんですけれども、ムが殺され、ウンとスンドクの命が狙われるっていう、一度収まった「兄弟殺し」がまたもや全面に出てくる回です(14話の終わりからですね)。今度は本当の本当です。
と同時に「誰を何を信じるか、または信じないか」という内面的なテーマが、それぞれのキャラに沿って細かく描かれています。誰にとっても危機的状況であるこの時に、信じることの意義みたいなものを問うてくる。また、その根拠、というか理由みたいなものもしっかり見せています。
ヒロインであるヘスは、「ソがウン夫妻を殺す」という偏見をもっているため、いつものヘスらしくないところがあるんですよね。はぁ…厳しい。
「誰と最後まで生きるかが大事だ」
ヘスの命を守るため、ヨに自ら屈するソ。
「新皇帝にご挨拶します。万歳、万歳、万々歳」とソはひざまずいて静かに言う(ムが皇帝になった時もそうだったけど、「即位を認める/決まった」という意味を込めたこの挨拶ルールがひとつの伏線)。
ヨが新しい皇帝になりました。
ここで回想シーンに。
左からジモン、ワンソ(かわいい!)、ワンム。
第1話からこの3人は近しく描かれてきましたが、特にジモンとワンムは幼馴染的存在だということがわかります。だからこそ、14話でムが亡くなった時も、ジモンは誰よりも泣いていたんだね。
これは皇后ユ氏の第1子が亡くなった直後で、ムは皇后に「うちの子が死んで嬉しいだろ!」って言われたみたいです。あぁなんて激情なお方…。ムは悲しんでるんですけどね。「テ(亡くなった皇子)のほうが正胤にふさわしかった」って、この頃から自分の家柄も気にしています。ジモンは、「テの星は寿命が短かった」とか「ムは皇帝の星を持っている」と励ます。
そして、ジモンは言いにくそうに切り出します。
「ムよ…あの…万一、寿命があまり長くなかったら…どうする?」
「どうもしない。誰と最後まで生きるかが大事だ」
穏やかに答えるム。
これね…、ワンムのことでもあるんだけど、これ以降の若くして亡くなるキャラ達のことでもあるんですよね。続出しますから…。誰にでも寿命はあるのだけれど、とりわけそれが短く、またこのドラマのような非常に理不尽な形で命が奪われた場合、本人はもちろん気の毒だし辛いけど、残された者もまた、どう心を静めればいいかわからないほどに心を痛めます。
いえ、若くして亡くなる、という悲劇に比較はないですね。原因や理由を比べることはできない。皇后ユ氏だって超酷いことをムに言ってるけど、それは親として子が亡くなったことを心底悲しんでるからであって。この回想エピソードの内容といい、このタイミングに入れていることといい、よくできているよなぁ。
このあと、ウン夫妻には作品全体でも1、2を争うほどの悲劇が待ち受けているので、それを見る者(視聴者)のためにも、このやりとりがあるような気がしました。心の準備をしなくてはいけない。本当につらいから…。
さらに続いて、赤ちゃんみたいなワンソが喋りだして「僕も皇帝になりたい」「ソ皇子様にも皇帝の星がありますよ!」みたいなやりとりがあります。ワンソの皇帝ごっこにお兄さんたちがつき合うの。かわいらしく楽しい雰囲気です。そして今のムやソのことを考えると、それがまた泣けるの…。
恐らく、この直後にワンソの顔に傷が入ってしまう事件が起こると思われます。
子役の3人がすごくよいです。
ジモン役の子は、雰囲気も喋り方とかジモンにそっくり。ワンムはさらっと無欲で聡明な感じが出ていていい。こんな少年だったんだ。関係ないけど顔が風間君(俊介)に似てると思ったw。お芝居もなんか似てるんだよね。自然な演技でした。子ワンソはとにかくかわいいです。
短いですが、とても印象に残ったシーンでした。この後にもジョンやスンドクの回想があったり、「子供時代」っていうのが、この回のモチーフのひとつかもしれません。
現在に戻り…。ソの降伏を受けたヨと兵たちは、もういません。
晩年孤独だったムは、「誰と共に最後まで生きた」と言えるのか…。
「皇帝です。この方は大高麗国の皇帝です。このまま放置してよいのですか?」
ジモンは間違いなく、最後までムと共に生きた人物。
ペクアがムを抱きかかえ涙。「 兄上、全て忘れて、お休みください」
ジョンにとっては、同腹の兄がム殺しを決定づけ、更には皇位を奪った。その野望を知っていただけに、余計にやりきれない。
こちらも放心状態。
「私のせいで…こんなことになり…すみません…」とヘス。
ソはヘスを逃がそうと外へ連れ出すが…。
ウォンが兵を連れて戻ってくる。
「もしヘスが茶美院から消えたら、高麗中に先皇を毒殺したと張り紙をしますよ」
またも冤罪のヘスは、逃げられない。
作られたワン・ギュの乱 その黒幕
ヨは兵を従えて、第10皇子ウンの私邸を襲う。祖父のワン・ギュを始め一族は捕らえられてしまいます。
ウンとスンドクは、なんとか逃げる!
皇宮にヨとワン・シンニョムが戻ると、ちょうど有力豪族のひとりパク・スルヒが捕らえられ、連れていかれているところ。この人は確かワン・ムの後ろ盾になってた人よね。
その様子を最初は目を伏せ、そのあとゆっくり背中を見送るウク。
ウクがヨに報告。
「パク・スルヒは流刑の途中で処理を。ワン・ギュが謀反を企てたゆえ、討ったことにします(ワン・ギュがパク氏を殺したことにする、ということ)」
「ご苦労だった。兄上のことも、ヘスでソを抑えろという忠告も。お前が味方でよかった。叔父上がいたから、ウクは味方になった」
ヨがウクを自信満々にまっすぐ見て話しているのに対して、緊張感を漂わせたウクはほとんど目を伏せています。ウクにとっては全く喜ばしい状況ではないですからね。
ヨが皇位を獲るための策はウクが考えた、ということなのですが、まず2年かけて水銀中毒にしたムをある意味明け渡しただけでなく、ソを屈服させるためにヘスを利用せよ、とはっきり言ったことが示されます。
そして、さらにやったのが「ワン・ギュの乱」のでっちあげ。幅を利かせていたワン・ギュとパク・スルヒを排除することで、他の豪族を牽制し、かつ新たな有力者ワン・シンニョムが政を牛耳るスペースを作ったわけです。
後にヨが言いますが、このでっちあげ謀反は「ワン・ギュが孫のウンを皇帝にするため」に起こしたというもので、真実味がまるでない。あの子は皇帝になるような子じゃない。
でも、ターゲットさえ決まれば、皇宮では理由などなんでもいいのです。今まで散々見てきたことですね。
ヨは「叔父上がいたからウクは味方に」と言っています。ヨの一族も相当力のありますが、そこにパク・シンニョムという超強者が現れ、ウクはヨを裏切ったという問題だけでなく、一族の力的にもこの状況ではもはや勝つことができない。
しかも、ウクはソを追放するために、ムに上奏させるほど、ワン・ギュと近い関係があった。何か約束があったかもしれません。裏切られれば、ワン・ギュ的には「なんで!?」となるはずなので、議会の力関係だけでなく個人的にもワン・ギュの存在はウクにとってまずい。反乱による皇位獲得なので、ワンムの後ろ盾も、いてもらっちゃ困る。
加えて、ヘスを巻き込んだこともそうですが、ウクは忠誠心を証明するために徹底的にしなくてはならない。中途半端にやれば、その弱さをヨが見逃すわけがないからです。
ワン・ギュの乱に関しては、本当に悪いとしか言いようがないのですが、ウクが考える策としてはこの選択しかないようにも思えます。(ソへの対抗心がなければまた別だったかな…いやヨを裏切った時点で終わってる。いや、ヨを裏切ったのも元をたどればソへの嫉妬心…だめだ、とにかくもう遅いw)
シンニョムに「陛下に挨拶は?」と言われ、屈辱の「皇帝陛下にご挨拶を!万歳、万歳、万々歳!」
ついに王座へ座ったヨ。感慨深い顔。
「ウンと妻が逃げた。ワン・ギュの乱を事実にするには、早くウンを殺さねば」
「ご心配なく。陛下には皇族をとらえるのが得意な犬がおります」
と、ヨとウク。ソにやらせる気ですね。どんどん悪いことして…。はぁ。ウン夫妻もワン・ギュ一族も、パク氏も、少なくともこの謀反に関しては全く関係ないのに。誰もがやるか、やられるかっていう状況にはなっちゃってるんだけれども…。
ヨのプライド
ワン・ギュ一族の壮絶な粛清を見届けると、嬉々と話し出す皇后ユ氏とワンヨ。なんか…なんかすごいよ、この親子…。
少女のように喜ぶ皇后ユ氏。髪の色もほとんど黒に戻りました。復活。
「ついにこの日がきた。完全無欠な子だったから、皇帝になると思っていた」
「皇太后になられ、おめでとうございます」
このあと、皇后は「早くほかの皇子たちを処理せよ。皇権を安定させるためにな」とか、相変わらず恐ろしいことを言うんだけど、ここで興味深いのはヨが「政は私にお任せください。きれいな物でも見て」とか、遠回しに言いなりになるのを避けようとしてるところ。皇帝になり、「やっと自分の好きなようにできる」って気持ちが起きあがってる感じです。今まで、母の希望どうりにしか、実は生きてないんだよね、この人も。
そのあと、呼ばれていたソがやってくるんだけど、ここで明らかになるのは、ソはヨを斬った時(13話)に急所を外していたということ。
あの時、ヨはちょっと驚いたような顔をしてましたが、斬られたショックと共に、とどめを刺されなかったことにも驚いていたのか。
ヨに「ウン夫妻を殺せ。そうすればお前の大切な人たちは無事でいられる」と言われ、何も言わずに去っていくソ。
ソはヨに弱みを握られまくってるんだけど、ヨはソに「手加減された」という事実でプライドが傷つけられまくってるんですよね。
皇后ユ氏が「ソを早く殺せ」って言っても、皇帝になって尚プライドを取り戻したいヨは、ソを服従させて心を満たそうとする。
「手なずけるのも楽しい。あやつが俺に同情を?手加減しやがって。生意気な」
「ソを手なずける」ってう考えは、ヨンファが初期に発言していたんだよな…。
誰を信じるか
キャラクターたちが動き出す
「水銀の件は事実だ。犯人が分からない。誰も信じるな。皇帝に反逆者を捕まえて来いと言われている」
ヘスを心配しながらも、皇宮を離れざるえないソ。ウンを殺せと言われていることは、さすがにすぐにはヘスに言い出せなかった。
ヨからの命令を、ジモンと大将軍に伝えるソ。
大将軍は「まさか殺しませんよね。娘を巻き込んだら、私が黙っていません」
ワンムの世話をしていたのはヘスとチェリョンのふたりだけ。誰が水銀を?
「私ではありません。本当です…」
「まさか私が疑うと?お前も気をつけよ。第3皇子様は怖い方だ」
確かにヨは怖いんだけど、目の前のチェリョンをヘスは全く疑わない。チェリョンは挙動不審なのに…。気づいてあげたほうが、チェリョンを守れたかもしれないよなぁこれ。
そもそもウクはなぜ水銀を使わせたのか。先にチェリョンを入官させ、入浴時にチャンスがあると見込んだからとしても(食べ物は常に毒チェックがあるし、いきなり襲うのは意に反する)、世話をしてたのはヘスとチェリョンだけ。もしこの機会以外でバレていたとしても、ヘスは容疑をかけられる可能性があった。…って考えると、ウクはいざという時は、チェリョンを犯人にしようとしてたってことなんですよね。犯罪者は、必ず容疑をかけやすい人物を用意するものです。っていうか、チェリョンが実際やってるし!結局、ヨの登場でヘスに容疑をかけざるをえなくなってしまうけれど…(ウクは自業自得の感があるが、ヘスは可哀そうとしかいえない)。
ドラマはそこまで言及しませんが、いずれにせよ、チェリョンの立場はどこまでも弱い。
「第10皇子様たちが謀反の罪で、皇后さまから一族が皆、処刑された」とチェリョンから聞かされたヘスは、ソがウンを捕えようとしていることに気づきます。ショックで胸を抑えるヘス。激しい動悸。ついに「あのビジョン」は現実のものになってしまうのか。
ヘスを信じ、茶美院に逃げ込んだウン夫妻。
「兄弟の協力を得るべきではないか?ほら、ウク兄上とか。ペクアやジョンは?きっと助けてくれる。ソ兄上も私の誕生日に…」
「なりません!つまりその…第4皇子様は、2人をお探しです」
ウンは八方ふさがりのなか、それでも兄弟を信じているんですよね。ウクなんてこの謀反を考えた張本人なのに、ウンは一番最初に名前を挙げている。ソに関してはこの時に「私の誕生日に…」っていうセリフが伏線のリマインドとして置かれています。
また、「ご家族のことはわからない」と粛清を伏せ嘘をついたヘスのことも、ウンは言葉通り信じている。スンドクは事情を察していますが。ウンは「疑わない人」なんだよ…。
ヘスはウンたちを守るためだけでなく、ソの手を汚させたくないっていう思いですよね。でも、ヘスの頭にあるのはまだ起きてもいないこと。この葛藤を乗り越えられるか、っていうのが物語の大きな山の一つになります。9話で見た悪夢がいよいよ迫ってきているのかもしれないという恐怖。自分を信じるか、愛する人を信じるか。
城下でペクアとソは密会。
その背後では民がソの謀反を疑っている会話。民にいまだ信じてもらえていないソ。
ペクアは、ソを信じる。ウヒのことも。
しかし、ウヒは後百済の民を守るため、ヨと密約を交わしていた。
「これで納得か?」
出かけようとするウクのところへ、やってくるソ。
「夜更けにどこへ?」
「お前は私に関心がありすぎる」
「新皇帝を裏で助けているのが、お前かと思ってな。また皇帝に媚を?」
「ひどい誤解だな」
「先皇は2年以上も水銀中毒だった。ウォンが最も有力な犯人だが、それにしては緻密すぎる。ウォンらしくない。お前ならともかく。お前を生かすのも妙だ。あいつならとうに殺している。ウンの家を討ち松岳の豪族を抑えたのも、お前のような賢い奴しかできない仕業だ」
「お前はいつも俺を疑っている」
「お前が本当に兄上を死に追いやったのか?」
「お前こそ皇帝の犬となり、ウンを殺すのか?俺もお前も、生きるために必死なのは同じだろう。それが皇帝になれぬ皇子の宿命だ。守るためには服従せねば」
「お前がここまで変わったのは何故なのだ」
「私は…先皇を毒殺していない。これで納得か?」
ここで、ウクがヨの謀反に関わっていることや、水銀を盛らせていた、という推理をソが本人にぶつける。当たってますね。ソも頭がキレるんだよ。
ただソは、「お前がここまで変わったのは何故なのだ」という疑問までで、思考がその先に行ってないんですよね。確かに今それどころじゃないんですけれど、案の定ウクにその質問はかわされています。代わりにそのひとつ前のソからの質問「ムを殺したのか?」に答える。「毒殺していない」と。毒は盛ったが、毒殺ではない。そうだね…。「これで納得か?」っと切り上げているあたり、ウクの変化の根本になった事件や出来事、ヘスへの想いなど、とにかく自分の心に一切触れされようとしない意思が見える。つまり、そこが一番大事な部分なんです。「守るためには服従せねば」っていう大きなヒントは示されているんですけれども。
ウクの決断 裏切りについての考察②
「なぜ私は寂しいのですか?」/「私に落ち度はない」
皇帝となったヨに、尚宮として仕えるヘス。
ヨは犯人も真相も知ってるくせに「なんでお前、水銀盛ったんだ?」とか、ヘスにつっかかってほとんど遊んでます。ヘスは「やってないし、もし拷問されたら陛下に無理やりさせられたって言う」って、負けないんだけれども。
「お前は抜け目ないな。幼い頃から手ごわい女だった。面白い。お前を追い出さぬ。弟を動かすには最高の餌だ」
そうなんだよ、ソはもちろんだけど、弟たちはみんなヘスが好きだからね…。(ウクがヘスを好きなのことはヨも本当は知ってるよね。だからウクは余計にヘスには近づけないし、ヨに忠誠心を見せるために今回の策はヘスも絡めてシビアにやらざるをえなかった)
で、ヘスは「誰が水銀を入れたのですか?」と聞く。これは尚宮として知らなきゃいけないことです(ヨに直接聞くとか、超危険だけど)。ヘスとチェリョンしか浴場には関わってないし。「知ったところで誰にも言えない。陛下が仕掛ければそれまで。だけど、犯人を知りたい」と。ヘスには、水銀に気づけなかったという責がある。
そこに誰かがやってきます。
「ちょうどいい時に現れた」とニタニタ面白そうなワンヨ。
やってきたのは固い表情のウクです。
「誰が先皇の浴場に水銀を入れたのか、死ぬほど知りたいらしいぞ」
「先皇は病死されたと聞いております」
「そうだった!先皇は病死されたのだった!」
笑うワンヨ…。ヘスは平静を装いながらも、頭のなかがぐるぐる回っている模様。
ワンヨは人を弄ぶのが大好きだから、ウクがヘスを好きなことを知りながら、ヘスに水銀の犯人を仄めかしたり、そういう堕ちたウクをヘスに見せたり、それでもウクが自分に服従していたり、もろもろさぞ楽しかろう…。
二人きりになり、ウクとヘスは短い会話を交わす。
「先皇の最期を見たそうだな。とても驚いただろう」
「私にとっても兄のような方でした。あの方をあんな哀れな姿にしたものは…誰でしょう?皇子様は関係ありませんよね?」
ウクはヘスを気遣う発言をしますが(怖い思いをさせたのは、外ならぬウクなのですが)、ヘスは完全にウクに疑いの目を向けています。
ここで回想。ヨの謀反から逃れ、皇后ファンボ氏はウクの私邸へ。
インター版は14話の会話の続きです。韓国版はこれが初めてファンボ家の会話シーン。
とりあえず、前回のエントリでインター版を入れたので、ここでもまずインター版(KN)のやりとり。
皇后とウクの会話が途中から続く感じ。わかりやすいように、若干前回と被ってますね。
「母上と家を守るため、逆賊になるしかありませんでした。なぜ無理な重荷を負わせたのです!」
「ヘスか?決めるにあたりヘスを考慮したのか?」
「はい…そうです。…あの娘のためです」
前エントリでも書きましたが、母と息子は、ヨの謀反の最中、実質ヘスの事件(11話)のことを念頭に会話を進めています。
「家と責任だけの私の人生で、これほど求めたのはヘスだけなのに…逃しました。何がいけなかったのか…。スは…私がすべてを求めたことが悪いと。でもそれは何故です?家と心を守って何が悪い。母上はまっすぐ生きろと、だからまっすぐ生きたのに、…なぜ私は寂しいのですか?」
「ウク…なぜ早くそれを言わなかった。まだ遅くない。反乱を止めれば…」
「もう別の道に進みました。欲しいものは手に入れ、愚かに逃しません」
ウクは涙を流しながらも、自分の決心を変える気持ちはありません。
ウクはヘスの命の危機に際して背を向けざるを得なかったことで、いまだに深い痛手を負っています。
家のために子供の頃から全てを諦めて生きてきて、やっとヘスとの人生が欲しいと思えたのに(自分の心を獲得したのに)、ヨンファにも、最終的にも母にも阻まれた。一族の命がかかっていました。あまりに大きな重荷でした。そして一番傷つけたくない人を、とんでもなく傷つけた。
家族を捨てられないとしても、だからと言って次はヘスも諦めない。同じ後悔は繰り返したくない。家族と心を守って何が悪い。
「スは…私がすべてを求めたことが悪いと」って言ってて、それはムが即位した後のウクとヘスとの会話で出てきたことと思われますが(13話)、ヘスはウクに言葉通り「全てを求めたことが悪い」とは言ってないんですよね(あちこち何度も見たけど、やっぱ言ってないと思う)。ただ、会話からヘスの気持ちをそういう風にウクは察したわけです。そして、その理解は正しい。ヘスはオ尚宮から「皇位はおそろしい」ってたたきこまれてるし、実際13話ではヘスからウクに「遠くで一緒に暮らそう」と誘ってるんですよね。でも、ウクは色んな理由で速攻断った。ヘスを取り戻すには、ヘスだけを追い求めてもダメだと痛感してしまったから。ヘスがほしいから、ヘスの誘いを断った。
このドラマを見てて改めて思うけど、察することができる人っていうのは、特有の不幸を抱えてしまうな。
今回、ヨの反乱に加担する形でウクは逆賊となり家族を守りました。ヘスの命も「ソに守らせる」っていう一番不本意な形で守った(じゃなきゃ、わざわざヘスを餌にライバルであるソを脅せとは言わない。ヘスの気持ちが余計にソに傾くのは明らか。でもヨの性格を考えるとこれしかない)。
両方守った。だけど逆賊だから、家族、特に母親には責められ、ヘスは自分から更に離れるのは見えている。だから、謀反のこの時点で既に「寂しい」と泣くのです。
そして寂しいからこそ、余計に何もかも諦められない。真面目にまっすぐ生きてきたのに、どこでどう間違って、今自分は逆賊で孤独なのか。
(何度も書くが、ウクが最初に逆賊になったのは、家族のためというのが本当につらいし、この人が受けた最大の理不尽。ウクが真面目でなければ、あの悲劇は起こらなかった。「まっすぐ生きたのに」とウクが言うのも納得。ただ、家族が悪いかっていうとまた違う。権力争いが常にある皇宮で悲劇は避けられない。)
回想から戻るとウクはヘスに答えます。
「私に落ち度はない」
水銀を盛ったのは確実に皇位を手に入れ、家族を納得させ、自身も力を得るため(そうしないと、ヘスに近づくことさえできない)。皇位を獲らなければ、ヘスが警告したようにソに全てを奪われる。ヨとの謀反は一族とヘスの命を守るため。ウクには、自分の行動に合理的な理由がある(と思いたい)からこそ「落ち度はない」ってはっきり言うんでしょう。
だけど一方で、人としての一線を越えていることもわかっているし、なによりそこまでして守った家族とヘスの心は、自分から離れている。
だからこんなにも暗い表情なのです。
誰にも自分の心を明かせないし、理解もされない悲しみ。
ウクはね、一線を越えてしまった人ですけれど、可哀そうな人だと思いますね。悪人になった悲劇の人。家族の前で泣くっていうのがね。本来は家族であっても弱さを見せてはいけない立場の人ですから。この人なりの苦しさが止まらない。
韓国版だと、インター版よりウク家族会議のシーンは短いんです。インター版は14話もこの場面があり、ヨンファも多少口出ししてますが、韓国版は結構そぎ落として15話のみしかない。
韓国版の皇后ファンボ氏とウクの会話。
「反乱?今、反乱と?逆賊に育てた覚えはない。失望した」
「母上と家を守るためには、逆賊になるしかありませんでした」
「ヘスか?決めるにあたりヘスを考慮したのか?」
「はい…そうです。あの娘のためです」
「スは、私がすべてを求めたことが悪いと。でもそれは何故です?家と心を守って何が悪い。母上はまっすぐ生きろと、だからまっすぐ生きたのに、…なぜ私は寂しいのですか?」
「ウク…」
「もう別の道に進みました。欲しいものは手に入れ、愚かに逃しません」
どうでしょう?お芝居は同じだし、じっくり考えれば、インター版のウクの心情と同じところに辿りつくんだろうけど、「ヘスを考慮した」「両方守った」「寂しい」っていうのがどう繋がるのか、ちょっとヒントが少ないんですよね。
インター版がヒントありすぎで、ウク描写をこのくらいに抑えた方がいいとも言えるし、あとは作り手の意図次第なんですけれども、韓国版はウクに同情を寄せないようにコントロールしているな、と思います。
やっぱり、前半のウクの存在感は大きかった。ヘスもハッキリ「好きだ」と言ってましたし。ウクもヘスと両想いの時期がなければ、ここまで堕ちることはなかったでしょう。皇位を捨ててもいい、とすら言っていたんですから。前半の恋愛描写の説得力は十分あった。11話の裏切りも、ウクの意図したものではなかった。
で途中からどんどんワンソも追いかけて、色々あって、13話でやっとヘスのウクに対する気持ちが切れる。そのあとの7話を使ってヘスとワンソの恋愛を掘り下げていかなくてはならないわけです。しかもウクとは比べられないほど深い関係を。かつ短い時間で見せなければならない。2年おきぐらいにどんどん時間も飛びますし。(この辺の問題は、ヘス役のIUがかなり大変かもしれない)
難しいことをやっていると思います。
しかも、ウクの悪行っぷりの意図が、細かく見ればよくわかるようになってるので(私なりの解釈でしかありませんが)、余計にウクの存在が難しくなってくる。だから、ヘスとワンソの応援を視聴者にさせるには、ウクの情報は削がないと…ていうのが韓国版なのかな。転換期ですし。
更には、物語ですから、主人公であるヘスとワンソは間違いをおかさなければなりません。選択や言動を間違える必要がある。そこにも説得力がないといけない。ワンソにも2面性がありますし。他の登場人物もそれぞれ動いています。
まぁ、書いていくとどんどん話が長くなるし、究極「ドラマ作りって難しいね」ってとこに行きつくしかないんだけど、「ウクが何故ここまで変わったか、何故逆賊となり一線を越えてしまったのか」っていう問題は、受け手に解釈の自由を与えつつも、作り手の共有理解としてはかなり固まったものがあるのだろうな、と見ながら感じました。
15、16話ってウン夫妻の命がどうなるか、ワンソは?っていうのが物語のメインなのですが、そこにウクの心情のかなり複雑な描写を入れているので、本気で見るとなるとすんごい時間かかるよ(私は)。ウクはウンの事件のあとは俄然悪いほうに振り切っていくので、もう少し追っていきやすくなるんですけどね。
セリフだけでわからなくても(ウクは言動が一致しない人)、表情を合わせてみると、ウクの心理は「おそらくこうだろう」とだいたい推測できるようになってるので、カンハヌルさんは本当すごいよ。
まぁハヌルファンだから、ウクのことばかり書いてるところもあるけど(笑)、実際ここでウクを一回乗り越えないと、いつまでたっても物語の先にも進めないし、最終的に手放すこともできないのよね。ウクのお話はここはまだ通過点だけど、逆賊になったところが納得できないと、ウクファンは辛いと思います。
そして『麗』は、どのキャラクターにもこういった「視聴者が乗り越えなければならないポイント」が用意されているドラマでもあります。ウクだけじゃない。