☆16話以降の展開を含めたネタバレしています☆
☆まずはネタバレなしで見たほうが、圧倒的に面白いです☆
先の土曜日に、KNで韓国版の3、4話を放送してたんですが、本当に素晴らしいな!かんざしを巡ったムチ打ち事件の顛末なんて、そのままこのドラマの最終局面の流れをものすごく暗示してますね。「人を殺めるキツさ」も、しっかり描いているし。そしてウンが語る「婚姻」。ジョンのケンカトラブル。とにかく伏線の嵐がすぎる。
ウンのおもちゃ好きっていうのは、子供っぽさだけじゃなく、彼なりの皇子としての重圧からの逃避手段だったり、寂しさの表れだったのだなぁと、思ったりしました。
あと、ウクはやっぱり最初から気の毒な人だなぁとか、ワンソの持つ狂気とか。色々感じます。
さて。
遂に来てしまった16話。
韓国でも日本でも最終回までの放送がひとまず終わり、あらすじを書いてらっしゃる方もかなり多いので、今回エントリ以降からはもういいかな…(という手抜き)。気づいたことを中心に。
第16話は第10皇子ウンとスンドクが亡くなり、2年の時を経てワンソが皇位を狙う直前までが描かれるんですけれども。そこに、ヘスとソの恋愛模様が絡むっていう。
とにかく前半は涙涙で、久しぶりに今回見直したけど、やっぱり泣いてしまいました。ベッキョンの熱演については初見時に絶賛してますので、ここではやめときますね(笑)。でも、本当に素晴らしかったです。あれは、みんな泣くよね…。
人はあまりに悲しいと笑ってしまう
ウンとスンドクを匿っていることをヘスがソに言えなかった理由の大きな理由として、未来のビジョン、とりわけ返り血を浴びたソが高笑いしているのが恐すぎる、っていうのがありました。ただ殺してるだけじゃない。
で、実際にその局面になってわかったのは、ソはあまりに非現実的な悲しみ襲われて泣きながら笑っていたということ。悲しみの表現としての、高笑いであったわけです。
よくよく見てみると、悲しすぎて思わず笑っているのはソだけではありません。
ジョンは絶命直後のウンに駆け寄りますが、あまりの信じられなさに、泣きながらも最初少し笑っている。しかも、ソはそれにつられる形で、あの高笑いをしています。
スンドクの父である大将軍もまた、亡くなった娘を抱いて泣きながら笑う。そしてまた泣く。ソン・ドンイルさんのお芝居がまた渾身なんですよね。
ここも見てて号泣でした。
「俺は言ったんだ。第13皇子は美男子で、第14皇子は武芸に秀でているゆえ、ふたりのうちの一人と婚姻せよと。だがあいつは第10皇子を選んだ。初恋だと。事前にわかっていたらとめていた…まあ、わかっていても婚姻したな。うちのスンドクはそういう娘だ。一途で変わることを知らぬ。
ひとつ聞かせてくれ、うちのスンドクは皇子様に愛されてたのか?」
「とても。本当にたくさん、愛慕されておりました…」
「ならばよい。ならばよい…。すまないスンドク、もう父…父がしてやれることは何もない…スンドク…」
スンドクのまっすぐさっていうのは、この父あってこそだったのだよな(泣)。
ウンは被害を受ける当事者なので、少し意味が変わりますが、それでも彼も微笑む瞬間がある。先に亡くなったスンドクの姿を見て、笑みを浮かべ亡くなります。
ウンは妻を最期までひとりにしない。自分の意思を通した人物でした(だからこその微笑みでもある)。
かつて彼は、「俺は父上のようにたくさん婚姻はせぬ。気に入った夫人を得て100年連れ添う」って言ってたんだけど、それは皇帝と皇后たちの関係が政の為でしかないと知っていたということでもあり、恐らく母親の辛さや寂しさを見ているんですよね(他の皇子にも言えることですが)。だからこそ「一人では逝かせられない」。スンドクがこのウンの最期を知らないっていうのもまたね…(泣)。
このドラマっていうのは「手放す」「諦める」がメインのテーマにどんどんなっていくんですが、自分の命を手放すという、あまりにナイーブでピュアなウンの選択っていうのはいつ見ても考えさえられます。皇子じゃなくても、高麗でなくても、こういうことが起こってきたし、今もどこかで起こっているのかもしれないと考えると、更に胸が痛い。
悲しみが止まらない
ウンという皆に愛された人物が理不尽に殺される、しかもその命をソが斬ることで終わらせるしかなかったっていうこの事件は、このドラマ内でも1、2を争うくらいの悲劇です。みんな悲しい。だからこそ、その悲しみをそれぞれの立場から見せています。
ヘスはこの事件が起こることを予知していたせいで、ワンソへの信頼に迷いが生じ、悪い流れに結果的に自ら加担してしまったので、涙は流しますが呆然としてますね。ジョンが「ワンソを殺してやる」ってなった時に、感情が戻って泣いて止めますが。「あの方も苦しんでいます」って言うのが、またね…。ヘスは、ウン、スンドクだけでなく、ソにも申し訳なさがある。
そのジョンは、ウンとスンドクが亡くなる場に居合わせた人物として、しっかり心の動きを細かく表現しています。亡くなる前もすごく抵抗しますけれど、亡くなった後の反応がね、最初は信じられなくて笑っちゃうほどで、でも悲しくて泣き、それから呆然としながらも現実感が増していく。どんどん怒りが湧いてくる。
衝動的に剣を取り、「ワンソを殺してやる!」ってなった時に、ジョンは「あいつが全員殺す前に、俺が殺す!」って言います。ジョンはソがヨを斬った瞬間も目撃してるんですよね(ジョンは、あの時ソがヨに手加減したことを知らない)。ジョンにとってソは人殺しです。ソへの感情は悪くなる一方だよなぁ。
もちろん、ソはウンを殺したくて斬ったわけじゃないし、ヘスも「ウンが頼んだ」って止めるんだけど、ジョンは「ならぬものは、ならぬ」って人なのだよね(10話でソがヘスを勝手に海に連れてった時、ウクはソ達をそのまま返すけど、ジョンは「行かせてはなりません」ってハッキリ言ったのがすごく印象に残ってる。)
彼はウンと仲が良かったし、若い兵士として命についても思うところもあるんじゃないかね。どんなことがあっても、兄弟であり、無実のウンのとどめを刺すことなんて受け入れられない。
同腹の二人の兄が弓と剣でウンを殺した、っていうのはキツイよなぁ。ヘスに止められて、その理屈はわかっても、この理不尽な怒りを止めることができない。
ジス君のお芝居が本当に素晴らしいです。
ワンソは瀕死のウンから「あの誕生会を覚えていますか?この娘を一人で逝かせられない。いっそ兄上が私を…兄上にだけできる贈り物です」っていう衝撃的な懇願を受け、それを引き受けるわけですが、彼はウンに頼まれてから斬るまで一切言葉を発しない。厳しい顔のまま、涙を流し、ウンに目だけで返事をして斬ります。
ヨが弓を構えている中で、極限の選択をせざるを得ない、引き受けざるを得ないソはウン達とはまた別の悲劇の人ですよね。元々2人を逃がそうとしてたのに。ウンにかける言葉なんてないよ。
あの高笑いっていうのは、悲しみや怒りが爆発した最大限の激情です。
このイジュンギさんがまたすごいんですが、私は特にウンの懇願を受けているお芝居がすばらしいなと思いました。
ペクアはただ悲しむだけじゃなくて、ワンソを慰め、寄り添っています。ペクアは癒しの役割がいつもあるけれど、この状況で一番つらいのはソですから。
また、兄弟の中で、悲しみを表に出さない、というか出せないのがヨとウク。この二人はウンが憎いわけではなく、ヨは皇位のため、ウクは一族とヘスのため、ウンとスンドクを死に追いやりました。
「ウンが死んだ。夫婦一緒に逝った。これでワンギュの乱は事実になった」って平然と言うヨに、ウクは無表情で「おめでとうございます」って言うんだけど、体の前で組んだ両手をぎゅっと強く握ってる。気持ちが出ないように必死だけれども、手に感情が現れてしまっている。
ウクはウン夫妻の殺害を画策した本人で、悲しむ資格がないし、自分でもそれがわかってる。ヨも目の前にいる。
でも、本来は良心に基づいてまっすぐ生きてきた人だから、苦しくないわけない。子供の頃から家族を守るために人を殺めざるえないことに傷ついてきた人が、かわいい弟まで殺すことになるなんて、想像を絶する辛さですよ。
本当にひどいことをしましたが、この謀反を造り上げなければ、ウクは一族もろともたぶんヨに殺されていますからね。「生きたいと思うのは罪なのか」っていう問題が一方であるのだよなぁ(ウン達の居場所を密告したのはヨンファですが、彼女も契丹に送られるという命の危機に直面していた)。
握りしめた手でしか、悲しみを表現できない(というか感情が漏れてしまった)ウク。このカットを入れたことには、とても大きな意味があると思います。
直接ウンに矢を射り、ワンムを浴場に突き落としたヨは、全く悲しみません。少なくとも表立っては。でも確実に心に負荷がかかります。そこで彼が頼るのが宗教なんですよね。宗教が悪いというわけじゃなく、傾倒の仕方が完全にマッドなのです(あの演技は秀逸すぎる)。
兄弟を殺してまで得た皇位の座ですが、皇帝になっても孤独は深まるばかりで、ヨの精神はどんどん蝕まれていきます。
「俺は、皇帝になる!」 ウンとソの関係
ソはウンを斬ったあと、ジモンにこう告げます。
「ジモン、俺は首輪を切る。犬にならねば。主人にかみつき、主人の家を奪う。オオカミ犬になる」
はっとするジモン…。
「(俺、ワン・ソがこの高麗の皇帝になろう)」
ウンの死によって、ソは皇帝になることを決意します。これ以上、兄弟殺しがあってはならないと。
誕生会&贈り物エピソードがあった7話では、ソが仮面をとり兄弟に素顔をさらす、っていうのが大きなクライマックスでしたが、それを直接させたのもウン(ヨにたぶらかされたからですが。ここにもヨが絡んでるのがまた脚本の妙)。これもまた、ソが変化していく大きな一歩でした。
ソの人生にとって、ウンはなくてはならない存在です。
あの誕生会で、ヘスはウンに「何故生まれたの?」っていう歌詞でハッピーバースデーの曲を歌いました。ウンは何故生まれたの?
悲しすぎる皮肉なんですが、ウンはソを皇帝にするために生まれた、とも言えるのかもしれない(第1話で、皇子達がみな何かに秀でているなか、「ウンは兄弟運だけはあるよ」的な話がでてきたりする)。でも、物語や歴史の為に、ソが皇帝になるために必要な死だった、とは考えたくないですね。どんな人生にも、役割や意味がある、という風に思いたい。本当はおもちゃ屋さんになってほしかった。
幼少の頃のワンムは「最後に誰と一緒にいるかが大事」と言っていたけれど、ウンは最期にスンドクといたことや、ソ、ヘス、ジョンが近くにいたことが、小さすぎではあるのですが、せめてもの慰めなのかな…。ペクアも弔ってますし。孤独ではなかったと願いたいです。
あとはジモンですよ。彼はどこまで意識的に動いていたのか。
ジモンはソに「ウンは茶美院にいる」って教えますが、これはソが信じないのを見越していたのか。そういう風には見えないのだよな…。
逆にウン夫妻が亡くなってから、ヘスの手紙をソに見せたりして。ヘスの手紙に気づいたのは本当はいつだったのかな。よく見ればヒントがあるのかもしれないけれど、ジモンの意図はよくわからなかったです。どうにでも、とれる。気がする。ただ、表情は、「予期していたが起こった…」って顔をしてますね。初期から、皇子達を見つめる表情がどこか切ないし。
いずれにせよ、この人はソが皇帝になると知っている。16話の最後は、いよいよ皇帝になるべく反乱を起こすぞってところまでいくんだけれども、そのタイミングを知らせているのもジモンです。「未来がわかっていても、何もしてはいけない」という割にはアシストしてるのよね…(この辺は「皇帝になるのを手伝う」と公言したっていうのもあるんだけど。後述)
つづきます。