お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』 第17話を見たよ④

☆17話以降の展開を含めたネタバレしています☆

☆まずはネタバレなしで見たほうが、圧倒的に面白いです☆

 

つづきです。

もう前置きなし(笑)。

超真面目文体モードは解除し、ワンソ、ヘス、ヨンファ、ウクについて語ります。とても長いです。今回は本当にだらだら書いています(笑)。

 

ワン・ソ ②

「遷都は中止すると発表せよ」

「遺族の望むようにせよ」

皇帝の座を心から欲したワンソ。即位すると早速、ワンヨが強引に進めていた遷都を中止します。無理な事業だったので民の犠牲がとにかく多かったんですね(ワンソは遷都事業の責任者をさせられていた)。強制的に働かせていた民、工事のせいで亡くなった民やその遺族に対する補償もします。聖君を目指し、幸先よいスタートなのですが…。

 

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皇帝となり、ワンソは生まれて初めて「楽しい家族の食卓」を経験する。ペクアは兄が皇帝になってド緊張なんだけど、ワンソとヘスは本当に幸せそうなんだよね(泣)。

 

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一方で、ヘスがいなくなるのではと、うなされるワンソ。

 

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幸せだからこそ、ヘスを失う不安に押しつぶされそうになる。

と同時に、皇帝としての孤独を感じ、余計にヘスを求めてしまう。かつてこの部屋の主だった者はみな亡くなっているという恐怖。

 

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「話を」とせがむワンソ。

「幼いころ、久ぶりに母上に会いに行った。母上はジョンを膝枕して昔話を聞かせていた。ジョンがいなければと思った。その場所を俺のものにしたかった」とワンソはヘスに語っており(14話)、その思い残しをヘスで叶えています。

それに応えて「陛下が出てくるお話にしましょうか」と、ヘスが話し出すのが『赤ずきんちゃん』。意味深すぎるよ!!

 

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「遺言を破った理由は分かりませんが、禅位したのは確かです」

「気になるならあの世で聞いてみるか?禅位でなく私が皇位を奪っていたら?今頃この皇宮はジョンをはじめ弟たちと甥を殺した血で満ちていたでしょう」

ヘスに譲位の真相を迫った、皇后ユ氏とジョンに対して。

「ワンソは正直だ」ってヘスは言うけれど、実はワンソも結構嘘をついているんですよね。嘘をつかない人なんていませんよ。(誰もがそうであるように)守るためや争いを避けるため、そして売り言葉に買い言葉で嘘をつく。しかも、ワンソは皇位がらみで過激な嘘をつくことが多いんだよなぁ。皇位を狙ってない時も、皇后ユ氏に「皇帝になる」って言ったりしてるのだよね(内心まんざらでもなかったのかな…)。

彼が「ワンヨが遺言を破った。禅位は口頭で受けた」とか、「弟や甥を殺してた」と嘘をつくのは、一番はやはり皇位獲得に関わったヘスのため。ワンソはヘスとつないだ手をぎゅっとしてるんだよね。ヘスを守るぞっていうね。

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このドラマは顔だけでなく、手のアップも多い。手って心情が現れるパーツなんだなぁ。

皇后とジョンを黙らせるために、ワンソはとても怖いことを言う。実際には「兄弟殺しはしない」とヘスと約束してたわけだけど、この人が言うと本当っぽく響いてしまうのだよ。皇后までも、一瞬言葉を失ってしまうほどに。

 

 

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「殺せ!」 

「上奏したものは反逆罪で処刑せよ。先皇が崩御した時、天徳殿にいた官女と侍衛軍士も始末し、皇位継承に疑問を持ち言いがかりをつける者は残すな。一人も残さぬ」

こっちは本気です。

皇后ユ氏やジョンから疑いの目が向けられた直後、「豪族達はワンヨの息子が皇帝になるべきだと言っている」「左丞がソは先帝の遺言を捏造したと噂してる」とジモンから聞くワンソ。ヨは皇位を奪った時に自分にとって邪魔な豪族は殺しているし、即位後も豪族のための政治をしてたから、民寄りのワンソが皇帝になって喜ぶ豪族はいないんですよね。ワンソが皇帝であることの説得力というか、証拠も何もないし、ワンソにつくことは豪族にとって今はリスクでしかない。

…にしても、ワンソはやりすぎというか防衛本能むき出しになる。この命を受けたジモンは、「はい?」って凍り付いてますね。ジモンは星(未来)を読める人であり、ワンソがこうなっちゃうことを知っていたような、微妙な表情をしているように個人的には見えましたが、どうでしょう。

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ジモンはワンソの残虐な命令に驚きつつも、どこか冷静。「マジか!?」なのか。「(血の君主的な振る舞いが)ついにきたか…」なのか。後者な気がする。

 

ワンソは皇位とヘスを守るため、過剰に、徹底的に疑惑の根をそごうとしてしまう。やっぱり、ワンソはヘス(とお母さん)が絡むと、とことんやっちゃうんだよ。兄弟は殺さなくても、これじゃ罪なき人々を大量に殺めてしまうわけで。こういう、どこまでもやっちゃうところが、またお母さんそっくりなんだけれどもね…。ワンソはやりすぎだけど、このくらい徹底しないと守るものを守れないっていうのも、また皇宮での悲しい事実。

ヤバいワンソが帰ってきてしまいました。

 

 

「パク・スギョンが去った。この皇室に嫌気がさし、いまや私が怖いそうだ。お前も遺書に誰の名があった気になるだろう。私がこの座を盗んだのか」

「パクスギョンは去り、ペクアは俺に兄ではなく君主として接する。チェ・ジモンにとっては、ム兄上の復讐をする存在。ジョンは兄を殺した者としか見ていない。実の母親でさえ、俺を泥棒だと…。お前の言う通りだ、この座は恐ろしく寂しい」

ワンソは容姿(顔の傷)や誤解を与えやすい言動のせいで、人々からレッテルを貼られ、孤独を極めた人生を送ってきました。民すら「オオカミ犬」呼ばわりしてますからね。ワンソはヘスと出会ったことで、その偏見であり呪縛から、少し自由になるんですよね。

だけど、皇帝になったことで、ワンソには新たなレッテルが貼られてしまう。しかも、ごく近しい人や家族からも「皇帝」になったがゆえのレッテルを、それぞれから張られてしまいます。さらなる孤独。

レッテルに関連して、ワンソは「人から信じてもらえない問題」を抱えていましたが、今回の皇位交代で、この問題も悪化してしてる。ワンヨが残した遺書は次の皇帝の名前の部分だけ空欄っていう、揉めるもとでしかない代物だから破ったけれども、そのせいで不信感を抱かせる皇帝になってしまう。孤独につぐ孤独。

(レッテルに沿った嘘は速攻で信じられてしまうというのが、またつらい。皇后ユ氏もジョンも、あのワンソの嘘で余計に突っ走るという悪循環)

 

ヘスは「(遺書を破いて)よかった」「私は離れない」ってワンソを肯定し、受け入れる唯一の人で、いよいよワンソにとっての「私の者」なのですよね。味方であり、信じられる人。

 

 

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皇后の命令でユ氏一族は高麗独立を宣言。しかしジョンは母の意図とは別の理由で、ワンソの即位に納得ができない。譲位の証拠がない君主に、忠誠は誓えない。

 

「最後まで俺は息子ではないのか」

ワンソは「皇位と心」を欲しましたが、その「心」が指すものはヘスだけではありません。母親である皇后ユ氏もまた、ワンソが求める「心」ですよね。

しかし、皇后ユ氏はワンソから皇位を奪うために、 一族もろとも高麗から独立することを企てます。身内からそっぽ向かれるなんて、他の豪族に悪印象でしかないし(ただでさえ、ワンソは豪族から歓迎されていない)、豪族の後ろ盾がなければ、皇位は継続できません。ワンソにつけば一族としては安泰なのに(なにしろ身内なのです)、母は皇帝になったワンソを完全に拒絶する道を選ぶ。それほどまでに、母はワンソを憎んでいる。あのお母さんが一番喜びそうな「皇位」をもってしても愛されないとなると、もうないのですよ、愛される術が。それを痛感してると思うんですよね、ワンソは。「最後まで」っていうのは、そういう意味なんじゃないかな。

ただ、皇后ユ氏からしてみれば、思うがままに育てたワンヨの皇位が奪われた上にヨは死んでしまい、「自分の」皇位と息子が奪われたと感じてる。ワンソは母の大事なものをダブルで奪っています。皇后は今まで以上にワンソが憎くて仕方ないわけです。それも、わからなくはない。皇帝の座から引きずり下ろそうとするのは復讐ですよね。ワンソはワンヨから皇位をとった時点で、母の愛は望めない状況でもある。

これ、何が悲しいって、母がワンソを憎む根本的な原因は、ワンソにあるわけじゃないってことです。結局は皇后ユ氏さんの心の問題だから。ワンソがあがいたところで、母を刺激するだけで、愛は得られないんだよ。

だけどねぇ、彼はネバーギブアップの人ですから、別の手に出てしまうんですね。第18話ですね。この人の諦めの悪さは美点でもあるけれど、やっぱり弊害がある。押しても引いてもダメな時に、思いっきり押しちゃうんだ、ワンソは。

 

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「俺以外の者は考えるな。全部俺のものだ」 

「だが今後はそれほど寂しくなかろうに。子供も産み育てなねば」

「婚姻?すればよい。いつにする?お前が好きな時に」

このシーンって17話の中でも結構ハッピーというか、ヘスとラブラブというか、一息つくところなんですが、悲しみがやってきそうな雰囲気が漂いまくっている上に、よくよく見るとワンソの闇が半端ない。

ワンソは元々孤独な人だったけれども、皇位を得たせいで、さらに孤独を深めます。そして、全方位から嫌われるなかでも、母親からの拒絶が最もつらい。

もうヘス以外に自分をまっすぐ見てくれる人はいません。母には完全に見捨てられた。だから、今まで以上に愛情を欲するだけでなく(ジモンやペクアにも嫉妬している)、ヘスに母になることを求める。これは単に家族が欲しい、子供が欲しいっていうだけじゃなく、母親からもらえない母性をヘスからもらおうとしてるともとれるんですよね(17話の時点で、ヘスからはかなり母性が出ているんですけれどもね)。

ワンソはヘスに「誰でもどんな地位でも、会うなら俺の許可を得よ」ってキツめに言っていて、それはヘスを守るためでもあるのですが、同時にヘスの自由も奪ってもいる。

つまり、言葉は悪いですが、ワンソはマザコン束縛男としての面がどんどん色濃くなっていくのです(わーごめんごめん、私だってワンソは好きなんだよ汗。でも、そうとしか言えない感じのときあるよ実際)。

 

こんな方法で揺さぶるな。皇位に就いてもオオカミ犬の性格はそのままだ」 

「俺が(婚姻)するといったらするのだ」

豪族を率いたウクに、皇帝の座を脅かされるワンソ。「皇位に留まりたければヨンファと結婚し、ファンボ家の後ろ盾を得よ」と迫られます。

ウクが何故ここまで自分を攻撃するのか、ワンソは実のところはわかっていないんだけれども(ウクが皇位を狙っていたことは知っているけど、ヘスとの関係は知らないからね)、とにかくヘスが絡むとオオカミ犬が出てきてしまう。

ワンソというキャラが持つテーマのひとつは「二面性」で、光宗(ワンソ)は功績がありつつも血の君主、って実際にも歴史上で言われている人物なわけですよね。で、やっと皇帝になったところで、いよいよワンソどっちなの?っていうところに入っていく。この「どっちなの?」っていう疑問自体の意味も問いながら。

さらに、いまその二面性をワンソから引き出しているのが、別の角度で人間の二面性を見せているウク。面白いですね。二面性VS二面性。面白いとか言ってる場合ではないんですけれどもね…泣。

 

 

ヘ・ス ②

「皇帝になるのを望んだけど、待つのはつらい。むしろ長く待たされている気分よ」

 ワンソと別れたくないからこそ、皇帝になることを応援したヘス。しかし、皇帝はあまりに忙しく、たった一日で皇帝の女人であることに苦痛を感じます。「主人だけを待つ人形のよう」。この人は、こういうところがほんと正直なのよね。

それを聞いたウヒは「言葉には気を付けないと。慶和宮夫人は出家なさったから、皇后の座は空席も同然よ。あなたへの牽制が激しくなるから気をつけねば」とヘスをたしなめます。ウヒは後百済の皇女だから、皇宮内の政治をヘスよりずっとよくわかっています。

 

「私がおります。私は去りません」

皇帝となり孤独感を深めるワンソに寄り添うヘス。

ワンソが皇帝になったことで、環境も、周囲の人々の態度も変わっていきますが、ヘスは変わりません。それどころか、ワンソが大変なのがわかってるから、今まで以上に優しいし、愛情深い。何年もかけて、やっとワンソの「恋人」としてそばにいられるようになりましたしね。

ヘスはずっと可愛いかったけど、このあたりからもう本当に綺麗なんですよ。どこか切実な、泣かせる美しさ。

 

「そうね自分が生きるために人は殺せない。だけど、私とあなたは許してもらえないかな。私たち、たくさん苦労したじゃない。自分たちの手足の傷を忘れられればいい。望みはそれだけだもの。私たちが少しわがままになっても、許してもらえると思う。私はそう信じてる」

 「幸せの為に他人を傷つけたら、自分に返ってくるわよね?許されないわよね…」と沈むウヒに。このシーンはインター版にはないんですが、すごく大事な会話ですね。

ヘスという人は、心も頭も聡いですが、ドラマの中盤からは、ちょっと迷走してる部分もある。それはオ尚宮の悲劇や、ワンムやウン夫妻の惨劇が大きく影響してるのでしょうが、高麗の皇宮で生きる厳しさに打ちのめされて、この数年は全然自分の心のままには生きられなかった。

で、これはもう耐えられない、とワンソを追いかけていった。命をかけてワンソの愛情を確かめに行く。だから、ワンソより先に正直になったのはヘスなんですよね。ヘスに背を向けていたワンソを、正直にさせたのはヘス(そう考えると、ウクに「あの方(ワンソ)は正直だった」って言うのも、結局ヘス次第なんじゃない?と思ったりもするんだけど…)。

ウヒに対して、ヘスはじんとくるくらい優しい口調でこの言葉を語りかけます。

ヘス(ハジン)は高麗で生きてみて、この時代特有のままならなさをもう知ってるし、好きな人と一緒にいたいと思うこと自体がわがままだとわかっている。だけど、耐えに耐えた結果、幸せになるためは、ある種の「わがままさ」が必要だとも気づきます。確かに人を傷つけたこともあるけれど、自分が望んでいるのは、そう大きな幸せではないはず。苦労もしてきた。だから、このささやかなわがままは許されるんじゃないか。苦労は報われるべきなんじゃないか。幸せになってもいいんじゃないか。

17話はほどんどのキャラが自分に正直に生きていくけれど、その正直さはわがままさと紙一重だから、そこを物語はちゃんとフォローしています。正直に生きようとするヘスが、正直に生きることについて一番葛藤してるウヒに向かってね。責任感が強く心優しい人であればあるほど、自分の気持ちを優先させることが難しいですから。はぁでもウヒは、相手が酷い奴だったとはいえ、人を殺めてしまっているからな…。

18話以降も色々あるけれど、ヘスは最後まで「正直さとは?」っていうことと向きあうキャラクターだと思います。

 

「婚姻ですか?嫌です、しません」

カジュアルにプロポーズをするワンソに、カジュアルに断るヘス。幸せな状況であれば、どんな内容の会話も幸せに響く…。

かつてワンソがプロポーズをしようとしたこと(14話)を、ヘスはもちろん気づいていて(あの時は「待ちます」って言ってる)、ちゃんとプロポーズしてくれ、と。こんなことを言うのは、やっぱりワンソと幸せになれると信じてるんだよなぁ(泣)。

 

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 かつて贈ってもらった詩を、何度も書くようワンソにせがむヘス。

「なぜ何枚も書かせる?」「全て使い道があるのです」 

このあと婚姻&子供の話がメインになるんだけど、ここのシーンは含みが多くて、ワンソの笑顔で逆にヘスは不安になったり、ワンソが「俺のことをなんでも探るな」って言ったり、チェリョンのことも話してる。

 

 

「心悸ですか?」

「(10年はひどすぎます。もっと生きます。あの方と一緒にいたいのです)」

17話は怒涛の展開ですが、ヘスの余命宣告が一番驚きました。膝が悪いのはわかるとしても、心臓って…。ヘスはしょっちゅう胸を押さえていたけど(何ならコ・ハジンの時も胸を押さえてた)、この展開は悲しすぎるんじゃないか?やっとこれからワンソの傍にいられるようになったけど、すでに一緒にいられる時間は短い上に、思いもよらない病で自分に残された時間が具体的に示されて、人生ままならなすぎですよ。

はぁ、病って人生に降りかかる、最も理不尽なものの一つですね。

ただ、医者は「もしかして過労や衝撃を受けた時、胸が苦しく、気を失うほど息ができなることは?」「鬱積がたまり、心の病が体の病になったのです」って言う。振り返ると、このドラマに出てくる病は、だいたいストレスが原因になっていると思うんですよね。そして、ワンヨの心臓病の原因もまさにこの医者の指摘通りなんですよ…。

現実の世界での病は因果応報ではないと私は信じてますけれども(じゃなきゃ、やってられんよ)、ここは物語の世界。じわりじわりとヘスは蝕まれていき、このタイミングでワンヨと同じ心臓の病が発覚するというのは、やっぱり意味がある。ワンソも「心臓」を脅かされているので(後述)、これは意図しての設定なのですよね。ワンソとヘスは、ワンヨを追いつめた業から逃れられないということなんだろうなと思ってしまう。

 (余命宣告を受けた直後のヘスが、石積みの前でジョンと和解し、皇宮の外に出る話をしたのは大変に意味深いですね)

 

ヨンファ

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 「私が天下を望んだら?」

「天下か心か」という母からの問いに、即答したヨンファ。彼女は一貫して皇位を望んできました。

17話はほとんどのキャラが「正直に生きよう」としてるんだけど、ヨンファはいつだって正直な気がする。もしかしたら、彼女は皇宮で一番正直な人かもしれません。

10話でウクがヘスと結婚したいと言い出した際、ヨンファは激しく動揺し、罪まで犯してそれを阻止しました。

「母と私を捨て夫として暮らすと?ファンボ家は誰が守るのです!」

(ヨンファ/10話)

ヨンファは幼い頃に皇后ユ氏の企みで、豪族たち総出で一族が皇宮から追い出された、っていうトラウマがあって、とにかく権力を得ないとまた恐ろしい目にあうっていう不安を抱えてきた人なんですよね。他人はあてにならない。最終的に自分を救えるのは自分。

ヨンファは極度の人間不信なんだけれども、唯一の例外がウクなのだよね。ヨンファはウクに頼りっぱなしだし、ウクがいないと不安なのだよ。それほどまでに孤独。

と同時に、「男でないと天下をとれない。ならば兄が」というのも大きかったでしょう。地位が高くとも、女性はなかなか権力を持ちえないし、男性に振り回されるしかないんだ、っていうことを痛感してる。意に沿わない婚姻問題が何度も出て、その度に怒ったり人を陥れたりしてきましたよね。どこに嫁に行くかで、命すらどうにかわからないわけですから。皇宮から離れたがらなかった。

それで余計にウクへのプッシュが激しかったけれども、もし自分が皇位を獲れるなら、それがヨンファにとっては一番いい。だってそのほうが自分の好きにできるもの。ヨンファはブラコンだけど、母にどうするか問われて「いやいや兄上がいるから」って全くならないのが、この人の気持ちいいと言っていいほどの正直さだと思う。

 

「私が兄上(ワンソ)の無血開城をお手伝いします」

かつてヨンファはワンソに「私が皇帝にしてあげる」と言っていましたが(第13話)、ヨンファの無血開城の選択が、ワンソの皇位獲得を大きく助けました。

ヘスだけでなくヨンファもまた、ソを皇帝にした女性の一人。

 

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「力をお貸しください。私が皇后になりお気持ちに報います。独りで背負った責任と負担を分かちます。ですかから、私にお力添えを、兄上」

見捨てたはずのウクを、相変わらず頼るヨンファ。といっても「ウクを捨てる」宣言をはっきりしたのは、この時点では母だけなんですよね。

このシーンを見直すと、ヨンファはかなり本心でこの言葉を言ってる(ように見える)。兄を利用するというよりも(まぁ結局は利用してるんだけれども苦)、本気で「兄上のためにも頑張るから!」って感じなのです。

ヨンファはいい感情も悪い感情も、素直というか率直に出すんだけど、あんなに高貴だったウクの妹がなぜ元からこうなのかなって考えると、ウクがそうさせてきた可能性が高いんだよなぁ。ウクは自分がいい子でいなくてはいけなかったから、自分の代わりにヨンファに正直に振舞わせてきた。悪い感情すら背負わせてる。この二人には妙に深い絆がある。

ウクがヘスを好きになったのも、ヨンファと同じく正直で自分の道は自分で切り開く性格だからだし、ヘスとヨンファは結構共通点が多い。方向性は全然違うけど、幸せになるにはわがままさが必要なことも、二人ともわかってるし(ヨンファは完全に腹が据わってるけど、過去に周りの大人に見捨てられるから、自分の幸せを追求することに罪悪感はないのだよね)。

そういう妹にせがまれても、兄はすぐには反応しません。完全に落ちてしまう。っていうか、ヨンファがヘスとの結婚を邪魔してなければ、ウクはこんな人生送ってないし。たぶん。あの時ヨンファはウクに借りを作ったわけだけど、なかなか返さないのだよねぇ(初見では物語が怒涛すぎて「借りは返さなかった」と思ってしまったけど、2回目見た時は「これは返したといえるかもな」って思えるときがあったよ…)。

 

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「私の望みは、名誉と認定。そして私の息子が皇位に就くことだ。私は陛下と婚姻する。皇帝の妻になる。私は皇后になるのだ」 

ヘスに啖呵をきるヨンファ。

最終的に兄・ウクの力添えを得たヨンファは、自分が皇后になることを確信し、自信に満ち溢れます(ウクに「お前が皇后になる」って言われて、ヨンファはものすごく喜ぶ。しかもその時ウクが暗い顔で言ってるのを全然気にしてない。ヨンファの妹力は半端ない)。

彼女はヘスに「陛下のそばにいてもいい」と言うんです。本気で「心より皇位」を選んだ、ともいえるし、なんだかんだでヘスに負ける気がしない、っていうのもあるでしょう。

でも、ヨンファは「心があるからこそ皇位が欲しくなり、皇位を持つと心が余計に欲しくなる」ということにまだ気づいていないのだよね。皇位は人を孤独にさせる一方だということも。

 

 

ワン・ウク ②

「ついに、あやつのところに。私には皇位と心を得るのは欲だと言ったのに、お前は皇帝の女人になった。俺はどう受け取ればいい?」

 「いつも気になっていた。お前はなぜ俺が皇帝になれぬと思うのか…俺が皇帝の器ではないと判断を?

このシーンにおけるヘスとの会話の考察は、17話②の記事であれこれやっておりますので割愛。あれは、あっているような、ものすごい間違っているような…そんな感じです(笑)。

このウクの発言自体をちょっと補足しますと(まだやるのかい笑)、ウクはワンソが皇帝になり、全てを手にするだろうっていう予感をずっと持っていた人なわけですが、ワンヨの亡くなる前の発言からして、ウクとワンヨはほぼ同時期にその予感を得ていたということですね。

ワンヨははっきり「ソは全てを手にすると思っていた」「雨乞いからはじまった」と言ってますが、ウクも雨乞いのあとに黒い表情しています(ウクは「あの座はワンソのものだ。俺の座はなんだろうな…」みたいに濁しながらも心のざわつきを認めてる。なんならヨンファはワンソを皇位争いのライバルとしてはっきり警戒)。で、「第4皇子様に気を付けて」事件(9話)があって、予感は強固なものになった。そのあとワンヨはウクに「俺たちは案外気が合う」(10話)と発言。ワンヨにとっては最初から、皇位争いのライバルとしてソが邪魔だったわけですが(兄弟を殺さねばと決意するほどに)、ウクもまたあの時点でワンソが皇位にかなり近いことが見えていた。単なる恋のライバルというわけではなかった。

ワンヨとウクって、初期は全く違う世界観で生きている人たちに見えるんだけど、この二人を結びつけたのはワンソであり、ヘス。ワンヨとウクが一緒にやったことの蛮行ったらないので、ワンソとヘスは悪くないんだけど、なんだかなぁって思っちゃうよ…。

 

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「お前は皇后になるだろう」 

「誰もが全てを得られぬ。それで公平だろう?」

ウクは、ヨンファに「皇后になるために力添えを」と頼まれても最初は返事をしませんでした。あんなに求めた皇位と心(ヘス)を得られる可能性がゼロとなり、生きるモチベーションがなくなってしまう。何もかもが嫌になる。

そのウクに、再び火をつけたのがヘスでした。ヘスに「ワンソは正直だった。皇帝になったのは運命」と言われたウクは、自分の人生を全否定されて激怒する。だけど、これはヘスに対して憤慨してるわけじゃないんですよね。たぶん怒りの一番の矛先は運命なんじゃないかな。

ここからのウクは、欲しいものを得るために行動するのではありません。何をしても、もう欲しかったものは手に入らない。「全て」を手にしたワンソも憎いでしょうが、それ以上にワンソがヘスと皇位を手にしてしまうような運命に抗おうとする。運命を否定しようとする。「それで公平だろう?」っていうのは、理不尽な運命に対しての宣戦布告にも聞こえます。ヨンファに言ってるようで、言ってない。空(くう)を見つめながら、静かに言ってるんですよね。

だから、ヨンファを皇后にさせることに手を貸すのは、ヨンファのためではないのです(最初ヨンファに泣きつかれても、全然乗り気じゃなかったわけですし)。兄妹は互いの利害の為に利用し合っているともいえます(ただ、この二人は関係性も内面も複雑すぎて、そう簡単に割り切れないのですが…。ヨンファの「兄上のために皇后になる」も全くの嘘ではないだろうし)。

 

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「両翼が嫌だったら…心臓はどうですか?ファンボ家から陛下との婚姻を請願します」

ワンソが「全てを手にする」ことを阻止するため、ウクは「皇位かヘスか」の選択を迫ります。豪族をとりまとめ、皇帝の両翼である兵力と財力を脅かす。嫌ならば、ヨンファと結婚しろ。そうすれば豪族はワンソの味方になる。ファンボ家の力を得るのだ、と。「得がたく、守りがたい地位におられるのです」。

 

 正直、最初見たときに「なんで心と言わずに心臓って言ったのだろう…」とぼーっと思ったのですよ。翼は物理的な器官だから、それに対応してるのだろうけど、それにしても「ん?」っていう引っかかりがあった。しかも、わざわざ「心臓」って言う前に間を置いて、カメラも「心臓」のセリフのところでウクの顔をさらにどーんとクローズアップしてる。意味を込めてなければこれは何なの?っていう。

恐らくこれは、ワンヨを押しのけた業がワンソにもふりかかってる、ってことだと思うのですよね…。ワンソがピンチ!っていう意味だけではこの演出はないんじゃないかなぁ。

ヨの心臓を病ませたきっかけを作ったヘスとワンソ。皇位も直接的ではないにせよ、奪いました。ふたりは共犯であり同罪。ヘスが心臓を病んだように、ワンソも心臓を脅かされるのです。ウヒが恐れる因果応報は、ここにも表れているように見えます。

 

あとは翼で思い出すのが、ウクの亡くなった妻・ヘ夫人で。夫人は亡くなる直前に「 翼の折れた皇子様を私の手で立ち直らせたかった」と言ってましたよね。

夫人は婚姻によってウクに皇子としての新たな翼を授けたんだけど、ウクはあの婚姻で翼を選び、その代償として心臓を捨てざるを得なかった。夫人が嫌いとかではなく、ウクの心が完全に無視された婚姻だった。全ては一族のため。大切なものを守るためとはいえ、自分の気持ちを犠牲にするしかなかった悲しみ。

その後、ウクは心臓(ヘス)だけを望み大悲劇(この人にとっては、やはりこれが一番の痛手。人生が変わるほどの後悔。悲しみどころじゃない)、次は皇位と心の両方を狙いどちらも失った。

ウクがここまで大変なことになっちゃったのは、そもそも家族を背負う責がどの皇子よりも大きかったから。ヘスを捨てたのも一族のためだし、一族は捨てられないけどやっぱりヘスがほしいから、皇位を目指したっていうこともあるのだよね。理由はそれだけじゃないし(ワンソへの対抗)、もはや皇位でヘスの心が戻ることはないとわかってただろうけど。でも結局は、母と妹の瞬時の判断で、一族から捨てられてしまった。

これもまた運命なのだというならば、そりゃ運命を呪いたくなるよ。

ウクは心臓を捨てる辛さを誰よりも知っています。だからこそ、ワンソに心臓を捨てさせようとする。

 

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「得がたく、守りがたい地位におられるのです。高麗の皇帝にとって豪族は、諸刃の剣のような存在。長く続けるには豪族を味方にせねば」

わぁ、この顔いいなぁ。いい具合に悪いなぁ!時を同じくしてヘスに「皇后になる」宣言をするヨンファと表情がそっくり(これホントにすごいと思う)。ファンボ兄妹の逆襲感が半端ない。

 

ウクは完全に豪族側に立ちます。「高麗の皇帝にとって豪族は、諸刃の剣のような存在です」ってウクは言うんだけど、この人の人生は、豪族に助けられたり、貶められたり何度もしていて、豪族の影響力と怖さを知ってるんですよね。

だからこそ、ウクはもともと民の側につく皇子でした。豪族のしがらみを嫌い、民に施しをする貴い皇子だった。そのあと、暗黒化が始まって皇位を本格的に目指していた時も、豪族の力をそごうとしていた(ワンム帝時代)。自分が皇帝になった時に、豪族が皇位を脅かす存在だということがわかっていたから。

かつての自分が最も嫌うであろう人間に、ウクは自らなることを選びます。

 

「ヘスですか?あの娘は絶対皇后になれません」 

ウクは「ヘスには腕に傷があるから、皇帝の妻にはなれません」(ヘスは6話で初代皇帝ワン・ゴンとの政略結婚を避けるために自分で腕を切っている。ウクはあの時ヘスにそうさせてしまった自分が情けなさ過ぎて泣いてたのに…)って言うんだけど、ウクには腕の傷云々以上に、ワンソが皇帝として危機的状況にあることがわかってる。両翼を選ばないと、皇帝の座を守ることは絶対に無理なことも。皇位を簡単には手放せないことも。ウクにはワンソの近い未来が確実に見えています。ウクは賢いからね。だから、自信満々なのです。ヨンファも自分の近い未来を確信してるし、あぁファンボ兄妹…。

ワンソが反乱を起こした時、ウクは全くの蚊帳の外でした。抵抗することすらできなかった。その思いも全て、ここから晴らしていこうとする。ウクはヘスのことが未だに好きなわけだけど、「好きな女が幸せになってくれればそれでいい」みたいな優男になってたまるものか、ですよ。物凄い強い決心で、ヘスとワンソを結婚させない。ワンソの好きにはさせない。運命なんて信じない。

意志の人(ワンソ)が運命で皇帝になり、運命の人(ウク)が意志を持ち皇帝になれなかった。だんだん意思と運命のせめぎ合いになっていきますね。

ワンソもウクも攻撃性が高まっていて、これから更に「ヤバい人」合戦になってしまうわけですが、二人ともヘスの為に「ヤバい人」になってるので、ヘスのファムファタール感が実はすごい。ヘスのせいじゃないけど。でも。人命がかかった三角関係は恐ろしすぎる。

 

 …17話、だいたいこれで要所はカバーできたかな。一か月以上かかったよ(泣)。

 

第17話は「生きるための選択」」「生きたいと思うのは罪なのか」「自分のために正直に生きること」などなどを改めて考えつつも、話はポンポン進むし、伏線だらけだし、思った以上に盛られている回でした。かつてないほどの情報量。

あとは、ヘスとワンソを見てると、「人はみな幸せを求めるけれど、幸せを感じても、それはそれで人をまた不安にさせるものだな」(二人は幸せなときに不安になってる。幸せを失う不安)、「楽しい時間は本当にあっという間に過ぎてしまうものだな(本当に一瞬しかない)」って改めて思いましたね。この二つは最終回につながってるので、やっぱりうまくできているなぁ。

18話以降はゴールに向かってジェットコースターが急降下していくので、17話って案外印象薄かったんだけど(それほど18~20話は見る者の感情を揺さぶる)、全然違いました。自分がよく理解してないこともあり、まとめるのが大変でした。迷走しました笑。今までの中では10話が一番難しかったんだけど、17話はその上を行く難しさでした。とにかく無駄なシーンがひとつもない(いつもですが)。それは素晴らしいんだけれども、こっちはそれで大変だったよ…(好きでやってます)。17話までの全ての出来事が、残り3話を駆け抜けるための前提条件になるので、ちょっと長すぎたけど、まだ漏れがあるくらい(ウヒの腰飾り?香入れ?のこととか。細かいけど)、大事な回でした。17話をこんなにひっぱって申し訳ありません(笑)。

 

さぁさぁ、ここから、さらに気合です。

 

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