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お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』 第18話を見たよ① 婚姻と「私の者」

☆18話以降の展開を含めたネタバレしています☆

☆まずはネタバレなしで見たほうが、圧倒的に面白いです☆

 

わーい!『麗~』というか、『月の恋人』というか、『Moon Lovers Scarlt Heart:Ryo』がアメリカのDramaFever AwardでBest Historical DramaとBest Ensembleに選ばれたそうですね~。ウェブサイトのノミネート映像をみると、韓国版でなくインターナショナル版だったので、ベストアンサンブル賞は納得ね(インター版の方は編集が群像劇寄りになっているので)。もちろん韓国版でも、変わりなくそれぞれのキャラが絶妙に配置されていますね。とにかく、このドラマは誰が欠けてもダメなのです。

DramaFever っていうのはワーナー・ブラザーズが持っている韓国ドラマ(中国ドラマも?)の配信サイトなんですね。初めて知りました。アメリカ、カナダ、南米で見られるそうです。利用者の80%が非アジア系っていうのがどのくらい信憑性があるのかはわからないですが(wikipediaにも書いてあったけど、2013、4年のデータっぽい)、このドラマがバックグラウンドに関係なく人気を集めているのは間違いないでしょうし、ファンとしては嬉しいな。

私は欧米のテレビドラマや映画も大好きなんですが、欧米ドラマの流れには「大切なものをいかに手放すか」っていうのが、ひとつあると思うのです。レリゴーは「ありのまま」じゃなくて「手放す」ことですものね(あの歌の日本語訳はとんでもなく素晴らしいですが)。ワンソは超ネバーギブアップだけど、『麗~』は基本的にレリゴーのお話。韓国ドラマは「諦めない」お話の方が多いような気がするので、韓ドラとしての『麗~』はちょっと異色なのかな?(だから本国での視聴率はあまりよくなかったのかな…)

加えて、顔のアップを効果的に多用した心理描写のおかげで、文化も国も超えて見る者を没入させる作りだし、高麗の皇宮っていう限定された世界だからこそ、人間の普遍的な感情や生き方が浮き彫りになっている。皇位争いなど政治的な側面も、心の問題としているところが大きいので、歴史を知らなくてもついていけます。かつ、韓国ドラマのお決まりモチーフ(初恋、兄弟、父母、愛憎、格差、記憶、傘…などなど)もちゃんと入っているのですよね。これは世界売りにすごく適しているよ(ユニバーサル・スタジオが出資してるので、あらかじめそれを狙っていたとは思います)。

あぁ未見のドラマ好きに、強くお勧めしたい。まぁ、ここでお勧めし続けてるんですけど…(笑)。

 

さぁ、18話。

このあたりから、物語はさらに過酷を極めて参ります。

みんなで笑ってた頃が恋しいよ、ウクの家で楽しくやってた頃をさ…的なことをジョンは10話で言ったけれど、その気持ちへの共感度が増す一方だよ。今回18話を見直しましたが、笑うところが本当に一か所もありませんでした(泣)。視聴のタイミングは、各自調整が必要かもしれないですね、怒涛すぎるから…。あ、でも依然めちゃくちゃ面白いし、ここまで来たら気になり過ぎるから、やっぱり見るしかないんですけれども!

 

ワン・ソが皇帝になる17話は、全てのキャラクターの立場が転換するので、情報量が大変に多かった。情報につぐ情報。

それに対して18話は、大変なことが起こることに変わりはないけれど、キャラクター達の感情や人物そのものの描写が優先されています。よりドラマチック。だから私は、17話より18話の方が印象が強く残っていたんだなぁ。こういう作りが憎い程うまい。ワンソとヨンファの婚姻、ジョン追放、皇后ユ氏の死、そしてチェリョンの秘密と処刑…。本当に本当に大変です。特にチェリョンに関しては、このドラマにおける最初の大きな種明かしとなりました。第1話から少しずつ積み重ねていた伏線の回収です。それがチェリョンとはね…(泣)。この頃になると、今までの総括っていう感じで点在した伏線をどんどん拾っていますが、18話は特に4話と大きくリンクしてます。

 

テーマでいくと、第18話で特に扱ってるのは「私の者」だと思いました。ネサラミ。19話でも引き続き「私の者」についてやるので、ここは「私の者 その1」って感じですかね。

ワンソは、ヘスやペクアのことを「私の者」って呼ぶんだけど、この「私の者」とは何か?っていうのを結構深いところまでやっていて、改めて見るとまた面白い。ちょっと哲学っぽいところもあります。最後の方に出てくるヨンファの仮面シーンとかは、かなり怖いところを攻めてますね。

 あとは、「手」というのも大切なモチーフとして印象に残りました。

 

「ヨンファと婚姻せよ!」

17話の流れのまま、ヘスはヨンファから、ワンソはウクから、「ヘスとワンソの婚姻は無理だ」と、突き付けられるところから18話はスタート。ファンボ兄妹の恐喝感。

 

遷都中止や、外戚であるユ氏との関係の悪さから、高麗中の豪族がワンソを廃位させる流れとなった今、ワンソにはそれを覆すほどの強い後ろ盾が必要です。ワンソって、ホントうまく味方を作れない人なのよねぇ。遷都を止めたのも、ワンヨの遺言を破ったのも、よかれと思ってやったし、実際いいことなんだけど、そのせいで敵が増えすぎ。

「よかれと思って」っていうのも、ここからポイントになっていきますね。良かれと思ってやったことは本当に「いいこと」なのか。(追記:「いいこと」するためには代償が求められる、ということなんでしょうね)

 

そういう中で、有力豪族であるファンボ氏は「その後ろ盾になる」と立候補する。見返りはヨンファとの婚姻。さもないと、ワンソを潰す、と。一族の生き残りと野望を賭けた一手です。この作戦は結局、一族に捨てられたウクの協力なしには進まなかったうえ、ウク自身も個人的な動機で積極的に加担している、というのがまた悲しい。しかも、ウクに火をつけたのはヘスっていうね…。よくできた話だよ…(泣)。

ファンボ氏がワンソにつけば、他の豪族は自分たちの利害を考えて必ず後に続く。この時代の皇位は、豪族次第みたいなところがあるんだよなぁ(勉強になります)。ワン・ゴンが婚姻しまくってたのも、豪族をとりまとめるためでしたね。ワンソはヨンファと婚姻するしか、皇位を守れない状況です。

だから単に「ヘスと婚姻はダメ」っていう以上に、「とにかくヨンファと婚姻せよ」っていう感じなのですよ。

 

「お前には陛下を待つ小さな部屋がお似合いだ。だが、そんな女が皇后になれば、この国はおしまい。陛下は辞することになる」

ヨンファは、「私が陛下と婚姻する。皇帝の妻になる。私は皇后になるのだ」って、もう三段活用というか、半端ないたたみかけから、ヘスをほとんど脅していく。あんたは政治のことをまるでわかっちゃいない(大意)、と。

ただヨンファは、ヘスに「ワンソの女人のままでいい。」とも言うんですね。17話の最後に言ってる。「私の望みは、名誉と認定。そして私の息子が皇位に就くこと」だから。

「私は共存を提案したゆえ、不幸はお前の選択だ。私は黄州ファンボ家の一員で神聖皇帝の娘。私以外に誰が陛下を守れるのだ」 

ヘスを揺さぶるには十分すぎる。ヘスは何も言えんよ。

ヨンファは契丹に嫁に出されそうになった時、「ワンソを諦めろ」とヘスに迫り、失敗しています(15話)。あの時はヘスの「ワンソと婚姻したい」という強い気持ちに、ヨンファは負けた(が、その答えを受け、ヨンファはウン夫妻が茶美院に隠れていることをワンヨ、ウクに暴露。ヨンファは契丹にどうしても行きたくなかった)。

今回は、立場的にも状況的にも、ヨンファのほうが圧倒的に有利です。自他認めるように、ヨンファは皇后候補として最強。

 

ウクも17話の最後に、ヨンファと結婚しないなら税と兵力を豪族が牛耳りますよ、ヘスには体に傷があるから陛下とは婚姻できませんよ、ってワンソを脅したわけだけど、18話の頭で更に揺さぶりをかけます。

「それでも婚姻をするなら方法はただひとつ。皇位を捨てることです。どちらをお捨てになりますか?皇位ですか?ヘスですか?」

ウクの目的は「ワンソが全てを手にすることを阻止する」こと。だから皇位を捨てる選択肢をちらつかせてもいい。ヨンファは自分が皇后になりたいから、ワンソが皇位に留まらないと困るので、このへんが兄と妹とでは違いますね。

ただ、皇帝になった以上皇位を降りることは難しいから(のちにファンボ皇后が言うけど、基本的に皇位は死して降りるもの)、ワンソは状況的にヘスを捨てるしかない、あとはそれを選択するだけっていうところまで、ウクにはわかってるんだよねぇ。そして、ウクはヘスを捨てた苦しみを引きずってるからこそ、この選択がいかに酷か知っている。同じ苦しみをワンソにも味わせたいんだな。

ウクは、皇帝を脅すっていう当時の常識では恐らく考えられないようなことをしてる。それほどまでに、この時のワンソには皇帝としての力がないとも言えます。

 

ワンソは「二つとも諦めぬ。皆諦めよと言うが、それが嫌で皇位についた。体の傷ごときで。俺がヘスを捨てると?俺は顔に傷があっても皇帝になった男だ」って一応負けないんだけれどもね。持ち前の政治力で勝負を挑むウクも、負けた顔はしてない。

 

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どこまでも諦めない男。

 

 なんとしても諦めさせたい男。

ウクよ、ワンソがオオカミ犬であることを忘れないでくれ。

 

ファンボ兄妹の凄いところは、感情があるからこそワンソとヘスの結婚を阻止しようとしてるんだけど、提示する根拠は徹底的に現実的であること。そして、選択はあくまで相手にゆだねているかのように追い詰めているところ。負けるケンカはふっかけないし、相手に負けを認めさせる形で勝とうとしてるのだよなぁ。

 

その後も、ワンソには「ヨンファと婚姻しろ」と圧力がかかります。

 

ワンソの養子先だったカン氏が再登場。確かにこの人なら、ワンソにものを言える。

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「まさか、噂どおり茶美院の尚宮をお考えに?皇位に未練がないようですな」 

この人は噂を聞きつけて、豪族問題大丈夫なの?超有力豪族である忠州ユ氏と黄州ファンボ氏が陛下に反発してるよね?みたいな感じで様子伺いに来るんだけど、結局最後は「ヨンファと婚姻なされ。そうすれば問題は解決します」ってはっきり言っちゃう。

ファンボ一族だって本当はウクを皇帝にさせたかったけど、生き残りをかけて仕方なく路線変更してるわけで。ファンボ氏が怒っているのは、他の豪族たちにも知れている。ファンボのオファーを断ったらワンソは確実に潰される、っていうのは外野から見ても明らかなのだよね。ウクは既に豪族のカシラだし。カン氏的にはワンソに皇帝でいてもらったほうが元養子先として幅が効かせられるから、ヨンファと婚姻してほしいっていうのがありますね。

 

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そして、怒っているファンボの皇后。この方はパンチありすぎでしょうよ。怖すぎでしょうよ。

「忠州ユ氏も豪族もこの国を八つ裂きにします。高麗の皇室を陛下の代で終えると?」

「神聖皇帝がどう建国されたか。多くを諦め、守られた国です。その心配ゆえに、私は息子を突き放し、娘を差し出すのです」

この人はワン・ゴン(つまりワンソの父)と高麗という国自体の話を持ち出す。そして「大義のために犠牲を出しても選択せよ、ワン・ゴンや私がそうしたように」と迫るのです。

ヨンファだけでなくファンボ一族全体の未来がかかってるし、ウクも捨ててるし、ファンボ皇后的には一度娘を皇后にすると決めた以上、なんとしてもやり遂げるしかない。腹くくった人の怖さ。優しい表情をたたえる良識あるお方だったのに、ここまで変わってしまった。ウクも大切なヘスを捨てて暗黒化したけれど、ファンボ皇后の変化もそういう感じのところがある。「ウクの変化は残念」(17話)って言ってたのにね…。

 

皇后はヘスにスパイ容疑までかけます。ヘスは元親戚、とか関係なし。ヘスがハングルで書いたノートをワンソに見せる。この時代にはまだハングルはないんですよね。誰もわからない字を書くし、茶美院での活躍もすごすぎるし、只者ではない。ヘスはどこかの国の間者なんじゃないか?とワンソをそそのかす。(そしてこのノートが出てきた時点で、18話後半に起こる悲劇のカウントダウンが始まっているという…なぜ皇后がこのノートを持っているのか)

「後ろ盾はありませんが、弱点は多い娘です」

「そんなことは構わぬ。皇位が何だというのだ」

「死ぬまで降りられぬ座です」

ワンソはいよいよ「皇位がなんだよ」みたいなことを言っちゃうんだけど、皇后はヨンファを何が何でも皇后にしないといけないから、命すら脅かすようなことを仄めかす。これは皇位だけの話ではないのだ、と。

 

ジモンの説得

皇帝のそばに常にいるため、ジモンもまたワンソの政治的危機もよく理解しています。ジョンが「ユ氏は高麗から独立する」と宣言した時にはすぐに「放っておいては危険です。遺言を明らかにするか、ユ氏に匹敵する豪族を味方に」(17話)と進言していました。

 

ヘスを訪ねたジモンは、まだ争い合う前の皇子たちの様子を語ります。幼いころから皇宮で過ごしてきたジモンには、皇子ひとりひとりに思い入れがある。

 

「瞬く間に過ぎました」 

「皇子様方を大切にされたのですね」 

「はい、とても。それゆえ申し上げます。陛下との婚姻を諦めてください。陛下は最後まで我をはるでしょうから、先に離れてください」 

「…嫌です。私はずっと耐えて待ちました。幸せになれると信じたからです。ここで諦めるなら、もっと早くに諦めています。陛下が私にこだわっているのです。なのに何故私が?私は堪えられます」

ヘスは自分の気持ちに正直になると決めましたからね。嫌なものは「嫌だ」とちゃんと言う。

 

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「…嫌です」

 

しかし、ジモンは続けます。

「ここにいた方々は、今どうなりましたか?皇帝が危機に瀕すると、皇宮は血の臭いで満ちます。陛下にいつどこで何が起こるかもわからないのです。お嬢様が意地を張ったせいで誰か死んでも、自分を責めない自信が?無数の方が倒れるのを見ました。新たな悲劇を防ぐには強い皇権が必要です。お嬢様は陛下を癒すことができても、力にはなれません。皇帝の伴侶にはふさわしくない」

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ジモンの言葉にショックを受けるヘス。あぁ、ヘスは心臓が悪いのに…。

 

ジモンは、ヘスのもっとも痛いところをつく。「お嬢様が意地を張ったせいで誰か死んでも、自分を責めない自信が?」。オ尚宮のことですよね。ジモンは、オ尚宮が処刑された直後、「私なんかと出会ったせいで死んでしまった」と憔悴しきったヘスと話をしている(12話)。ヘスが「二度と自分のせいで誰にも傷ついてほしくない」と心底思っていることを、ジモンは知っているのです。ヘスは17話でウヒに「ささやかなわがままは許されるんじゃないかな」とも言いますが、それは「幸せの為に人は殺せない」という大前提があってこそ。「ワンソの命が危ない」と言われたら、ヘスは引き下がるしかないじゃないか。

 

オ尚宮が亡くなった時、ジモンは「(オ尚宮は)皇后の品格はあったが、皇后の星はない方です」と言いました。星を読める人ですから。でも、今回の説得でジモンは星とか運命という話を一切持ち出さない。「未来が見えても何もしてはいけない」と言っていた人が、現実的な理由で「あなたは皇后にはふさわしくない」と言う。ヘスを個人的な感情から説得しています。「ちょっと話そうよ」的な感じで現れた時には「ヘス尚宮」って呼ぶけれど、説得中は「アガシ」になってますし。皇子たちにこれ以上血を流せたくないんですね。

 

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ジモンも、好きでワンソとヘスの婚姻を止めているわけではない。

 

ファンボ兄妹だけでなく、誰もが現実的、状況的に「ワンソとヨンファが婚姻するしかない」って言ってるのが悲しいね。客観的に見たら、本当にそうですしね。

しかも、ワンソは皇帝なので、命令することはできない。本来なら、ワンソが決断しなくてはいけないんだけど、ジモンも言うようにワンソはああいう性格だから、ヘス次第になってくる。

 

大事なことは「ヘスが決断し、ワンソは従う」

ジモンの説得のあと、ヘスは何事もなかったかのようにワンソの前に現れ、「今日はナレだから、宮の外に遊びに行こう」とハッピーな雰囲気で誘います(泣)。ナレって1、2話で出てきた時のお祭りですね。厄除け的な?皇子たちは仮面をつけて演武してたし(そのあとワンム暗殺未遂)、ヘスもチェリョンと市場を楽しみました。大晦日じゃなくてもナレっていうのはあるのか。

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ワンソは「皇帝である自分が急に外に出れるかなぁ」みたいな感じだけど、ヘスは「誰もわかりませんよ。服だけ着替えたら、民は気づきません」って言うのです。手には仮面。

 

二人は皇宮を離れ、市場での夜デートを楽しみます。ワンソに気づく人は誰もいない。また、ナレが仮面のお祭りっていうのがね。意味深すぎる。

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 ヘスはワンソに指きりを教えてるのだよ(泣)。この時のヘスの心情を考えると切ないね。そして「手」がここから更に大事になっていく。

 

皇宮に戻ると、ヘスは自分で作った願いの石積みの前に連れて行きます。ここでは二人ともゆっくり間も取りながら話すし、表情もどんどん変わります。じっくり見せるシーンです。最初は幸せな雰囲気でワンソも穏やかですが…。

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「見劣りはするけど、形はきれいだし、願いをかければ聞いてくれそうでしょう?」

「早く求婚されたくて積んだのか?」

「はい、そうです。願いの石積みの前ですると聞いたので」 

「初めて会った時に逃せばよかった」 

「逃げた私を引き止めたのに」 

「なぜ惹かれたかは忘れたが、理由は無数にある。お前と生きねば」

ワンソは両手をヘスの肩にやり、続けます。

「共に生きよう。俺と婚姻してくれ」

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 嬉しさ以上に悲しみを見せるヘスの反応に、ワンソも異変を感じます。

「…できません。…私は…慰めること以外にできることがないので…婚姻できません」

「誰かに何か言われたのか?傷ごときでお前を諦めぬ。誰も強要できぬ」 

「私も諦めません。ずっとそばにいます。皇后や夫人になると皇宮のおきてに縛られて自由に陛下に会えず、礼儀作法を問われます。そういうのは私に合わないと知っているでしょう?」

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ヘスはワンソの頬に手をあてる。頬に触れるという愛情表現。

「私は大丈夫です。私は…本当に…大丈夫です」

「お前と婚姻できなくとも、それでも俺から離れられぬ。手放さぬ。お前は俺の者だから、どこにも行けない。絶対に許さぬ。俺の皇后はお前だけだ」 

ヘスを抱きしめながら、涙を流すワンソ。

 

はぁ…辛いよ…。

ヘスは、ワンソに自分との婚姻を諦めさせるために、あえてプロポーズを促したわけですが、それと同時に「プロポーズ自体はしてほしい。その言葉を聞きたい」っていうのもありましたよね。出会ってからの激動の年月を考えると、ヘスも感無量だよ。だけど、プロポーズをワンソがするということは、ワンソと婚姻という未来が完全に消えるということでもある。ワンソの命を守るために、断らなきゃいけないし、断るためにプロポーズさせてるから。

なんですか、この袋小路な悲しみは!

 

思い返せば、ヘスとワンソの関係では、主導権を握っているのはヘスであることが多いのですよね。ワンソの化粧、付き合うかどうか、ウン夫妻の悲劇、復縁、皇位獲得…そのどれもが先にヘスの選択があって、ワンソはそれに従っている。どこのカップルもだいたい女性のほうに主導権があるしな…って思ったりもするけど(笑)、意思の人ワンソがヘスの意思に従っているのは、ヘスがワンソのネサラミだからなんだよなぁ。

ヘスは「一緒にいることは諦めない」って言ってるし、ワンソも同じ気持ちなんだけど、二人の距離はじわじわと離れていく一方です。二人とも「正直に生きたい」と心から願っているのに、やっぱり思うままには生きられない。ヘスはワンソと幸せになるために、ワンソが皇帝になることを後押ししたのにね。そのせいで、ワンソと婚姻できないなんて。

 

プロポーズシーンは、このドラマにおけるIUのベストアクトのひとつだと思います。私はIUちゃんのお芝居が好きですが、ここは特に素晴らしい。絶妙な表情の変化とあくまで優しい声のトーンに、泣くしかないよ。ワンソへの愛情が溢れている。

 

こうして、ワンソはヨンファと婚姻します。

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喜びを隠さないヨンファ。

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ワンソも不本意な気持ちを隠さない。機嫌悪すぎ。この夫婦は、婚姻式からして激しいい温度差が…。

 

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ヘスは悲しみのなか部屋で一人、花嫁衣裳を身に着ける。ワンソからもらった蝶のかんざしに触れています。ワンソと婚姻したかっただろうに(泣)。

 

改めて「私の者(ネサラミ)」について考えてみる

さて。

ワンソは「私の者(人)」というワードを使って、ヘスとぺクアがいかに特別な存在か、ということを表現しています。ネ(私の)サラm(人)ですね。ドラマを見ていると、ワンソがネサラミ、ネサラミとよく言っているのが耳に残ります。(以下、文法的はアレなんでしょうが、「ネサラミ」で話を続けます。)

 

自分の理解者であり、完全なる味方。信じられる人。取り替えが出来ない、ただ唯一の人。それがネサラミの基本的な理解でいいのでしょうか。たぶんOKだと思います。これだったら、誰にでもネサラミがいると考えていいですよね。誰にでも大切に思う人はいるし、いてほしい。

ただ、ワンソの言うネサラミは、もうちょっと定義が狭い気がする。

 

ワンソは、ヘスがヨンファから鞭で打たれている時に「この娘はネサラミだ」と思った、と10話で明言しています(なんちゅう時に。ワンソってすごいよね…)。

 

「ヨンファに打たれていた時、あの時からお前はネサラミだった。ありのままの俺を見る。説明も弁明を必要なかった。俺が怖いだなんて信じぬ。お前は唯一の理解者だ。それゆえ、謝らぬ。口づけしたことも、連れ出したことも、他の男に心を寄せるなと脅迫することも謝らない」

(ワンソ/10話)

 

鞭打ち事件は第4話での出来事です。

第4話のワンソは、母の罪を隠すためにワンム暗殺部隊を皆殺しにしたけど、母には「そんなことして私が喜ぶとでも?」と散々なじられる&全否定されます。ワンソは荒れました。願いの石積みを破壊して大いに暴れた。そんな時に、ヘスから「殺したことは許されないけれども、理解する」と慰められる。ヘスは「命を守るためには人を殺めなければならない時がある。殺さなければ、殺されてしまうから。高麗はそういう時代なのだ」とウクの話を聞いて学んでいたし、「生きたいと思うことは罪じゃない」という思いがあった。だから慰めた。でも、ワンソがヘスをネサラミだと思うのは、この時じゃなくて鞭打ちの時なわけです。自分のせいでヨンファから鞭打ちにあうチェリョンを庇うため、ヘスが自ら鞭打ちにあっていた時。

 

これは、ヘスが自分の信念のために傷つく姿に、自分を見たから。ワンソはヘスに自己を投影できたからこそ、「この人は自分を分かってくれる」と確信した…と考えていい気がする。ぺクアがネサラミなのは、皇子としてハンデを抱えている、という共通点があったからですね。

ネサラミというのは「自分自身」でもある。

 

そのせいか、ワンソはヘスやペクアに「お前のネサラミになりたい、ネサラミにしてくれ」とは言ったことがありません。ネサラミ認定がなされれば、それは相手と同一化したも同然だから、その必要はないと思ってるのでしょう。ワンソは母親への愛も止まらないわけだけど、母は完全な他者で全く同一化できないからネサラミじゃない。

10話でヘスに「ネサラミだから謝らない」っていうのも、そういうところからきているのだろうな。ワンソのネサラミ概念っていうのは、本来一方向であるはずの想いが、認定された途端に双方向な感じにされてしまう強引さがある。自己中心的だし、相手への執着度も高いです。これ、場合によってはかなり危ない考え方ですね。

 

自己を投影できる人が、ワンソにとってのネサラミ必須条件。だから取替えが全くできない唯一の人である必要性が強まる。誰かをネサラミだと思う「私」という存在は、ただ一人だから。

そうなると、今度は「私ってなに?」っていう話になってくるのです。

 

ヘスはワンソを皇宮外へ誘う時に、こう言います。

「服を着替えれば、民は陛下に気づきませんよ」

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「誰も気づきませんよ」

そして、本当に民は気づかない。ワンソは市井の人に混ざってしまう。服が違えば、顔に傷がなければ、誰もワンソに気づかない。

じゃぁワンソがワンソであり、皇帝が皇帝である根拠って何?という疑問が出てきてしまう。皇帝だけでなく、その人をその人たらしめるものはとは、一体何なのか。

 

この問題に気づいているのがヨンファです。

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このシーン、めちゃくちゃ怖い。ヘスが持っていた仮面。

18話の後半に、ヨンファは仮面をつけて、服装とか髪型はヘスみたいな格好をしてワンソを部屋で待ちますよね。そういうシーンがあるんですね。ワンソはヘスだと思って駆け寄り、仮面を外すとヨンファだった。で、怒るワンソにヨンファは「仮面ひとつで勘違いをしたじゃないか」と言う。つまり、ヘスがヘスであるということ自体が脆弱なんじゃないか、ヘスは本当は取替え可能なんじゃないか、唯一無二ではないんじゃないか、と問い詰めているのです。

これ、ものすごく難しいことやってるよ。哲学とかの分野だよ。

 

ヨンファは皇位が欲しくてワンソと婚姻した。「皇位か心か」と母に迫られ、皇位を選んだわけだし。

けれども、ヨンファはなんだかんだでずっとワンソが好きでもあった。この婚姻は願ったり叶ったりだったのですよね。めちゃくちゃ喜んでるもん。だけど、婚姻してもワンソの心は全く手に入らない。むしろ、かつてないほどにワンソから憎まれてしまう。ヨンファはヘスに「お前は陛下を小さな部屋で待つのがお似合いだ」って言い放ったけど、自分もまたワンソを小さな部屋で待つ一人にすぎなかった。彼女は、ワンソのヘスに対する想いをへし折ろうとしています。ヨンファがヘスの格好をするのは、もちろんヘスになりたいわけではありません。ヘスを貶めたいのです。ヘスは特別なんかじゃないのだ、と(一見、このヘス偽装シーンって唐突ですごく変なんですよね)。

 

ヨンファがこういう問題提議をするのは、なんだかわかる気がする。

ヨンファは「皇帝の娘」「ウクの妹」という存在で生きてきて、それこそ「ありのまま」の自分を全く認めてもらえてない人です。好き勝手に生きているように見えますが(実際好き勝手にやってますが)自分が自分であるということはなかなか周囲に認めてもらえない。

 

ヨンファは「皇女」というある種の駒として扱われ続けてきたため、自分は代替可能なのだと痛感しながら生きてきたはずです。ヨンファがヨンファである必要性って全然求められてないんだよ。

ヘスに対して「私は黄州ファンボ家の一員で神聖皇帝の娘」ってすごむけど、ヨンファが「自分が唯一無二」だと感じる術は、地位と名誉という指標しかない。それしか知らない。

「私の望みは、名誉と認定。そして私の息子が皇位に就くことだ」(17話)

「私が母上から離れる時のようです。これからは目標を変えます。皇帝の娘や妹ではなく、皇帝の上の天帝になります。私を許さなくてもいい」(10話)

ヨンファは、一族のためでなく自分のために皇后になりたかった。幼少期にユ氏にハメられてエラい目にあったせいで権力を欲するのはわかるけれど、それだけじゃない。ヨンファは自分が自分であるということを証明したい。唯一無二になりたい。誰にも振り回さずに生きたい。だからヘスに「ワンソと婚姻していいから、皇位をウクに譲れ」とは絶対言わない。

 

ワンソも振り回されるのがいやで皇帝になってるところもあるし、この問題はどの皇子も抱えてはいるけれど(特にワンヨは、自分が取替え可能だと気づいてたし、母に捨てられることを最も恐れていた)、ヨンファは女性なので皇子よりも駒にされやすい。ヨンファは婚姻問題で駒にされそうになる度に、怒ってましたね。ワン・ゴンにも、ワンヨにも。

 

一方ヘスは、1話から身分や立場がどんどん変わるのにも関わらず、皇子達に変わらず愛され続けます。ヘスはヘスだから、という理由で愛される。それに、ヘス自身には、誰かに認められたいという気持ちはありません。自分が自分であることを理屈抜きに知っている。身分も立場も得ていないのに、既に唯一無二です。…これは、ヨンファはヘスを憎みますよねぇ。そういう生き方ができないのが、ヨンファの最大の苦しさですものねぇ。

高麗の女性の中で最も高い地位を得たからこそ、それでも満たされないヨンファは心を目指します。もはや、ヨンファが持っていないものは心だけだから。地位も名誉もないヘスのほうが、ワンソに愛されるなんて納得がいかない。ワンソの心も得て、自分の人生の方が正しいのだと証明しなければ。

 

…考え始めると根が深すぎるネサラミ問題。ワンソの話をしていたはずが、いつのまにかヨンファの話に…。こんなに小難しく考える必要はない気もするが、思っちゃったんだからしょうがない(笑)。

 

というわけで(?)、話がとっ散らかっておりますが、つづきます。次回は皇后ユ氏&ジョンを中心に。ヨンファと同じ道を先に歩いた人物が、皇后ユ氏ですね。つまり、ワンソは母親とものすごく似ている女性と婚姻したんですね。よくできた話ですね。

そして、ヘスはオ尚宮の人生を追いかけてるから、ヨンファとヘスが対立するのも必至。「自分の人生は自分で切り開く」マインドは一緒の二人なんだけどねぇ。

ネサラミ問題もつづきます。

(4話でワンソは、鞭打ちされるヘスを「この娘は俺のモノだ<ネゴシタ>」と言い、助ける。その後「モノ扱いしないでよね!」とヘスに怒られ、「じゃぁ、俺の人<ネサラミ>か?」。ワンソがなぜ「ネサラミ」という言葉を選んだのか、っていうのは19話でやります。4話を見直すとわかります)

 

(追記:次のエントリは皇后ユ氏まで辿り着いていません汗。ジョンの話がメインです)

 

 ほとんどチェリョンのことしか書いていない、初見時の感想。

mikanmikan00.hatenablog.com

 皇后ユ氏の心を探るのは、とても難しいです。今もなお、あれこれ考えてしまう。だが、やはり手とワンソの「唯一無二の息子になる」という発言がポイントな気がする。

mikanmikan00.hatenablog.com

最終週直前に、ざっくり今までのまとめと最終回予想など。当たってないところもありますが、いい線いってるところもある。自分のハマり具合がよくわかる(笑)。

mikanmikan00.hatenablog.com