お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

ミュージカル『新興武官学校』を見たよ

<ぼんやりとした理解・記憶のみで書いている感想です。うっすらとネタバレもしています>

 

実は先日、またもお出かけしておりまして…。

 

韓国陸軍が制作のミュージカル、『新興武官学校』を見てきました!

 

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『新興武官学校』は、日本植民地支配のなかすすめられた抗日独立運動と、そのために作られた「新興武官学校」に集まった若者たちを主に描いた作品で、兵役にておつとめ中の俳優チ・チャンウクさん、カン・ハヌルさん、K-popアーティストINFINITEのソンギュさんなどが出演されています。

 

韓国では陸軍がミュージカルを制作したりするんですねぇ。で、兵役中の芸能人が出演したりするんですねぇ。全く知りませんでした。過去にも軍制作のミュージカルがいくつかあり、今回は国軍の日70周年を記念して作られたとのこと。

 

これはとても気になる。

なにより、ハヌル氏の生演技が見たい。

 

しかし、見に行くかどうか、かなり悩んだのです。

何より、軍が抗日独立運動を描いていて、それをライブでお送りしているという点ですよね。まさにこれは今作の推しポイントもあるわけですが、こういったテーマにおいて生の感情のやりとりが繰り広げられる空間のなかに、日本人である自分がいてもいいのか。とてもお邪魔なのではないか。そして、もしかしたら私も何かが削られるのはないか。

 

更には、現実的にお金がないという問題。

私はとても貧乏なのです…笑。

飛行機代だけでなくチケット代がお高いのですよね…。映画とは比べものにならないほどにね…。いえ、ミュージカルとしてはむしろ妥当なお値段なのですけれどもね…。

あと、ここのところかなり忙しかったというのもある。体力限界。

 

しかし!

映画の舞台挨拶の時とは違って、ミュージカルは韓国外からも一部の公演の直接購入がネットで可能なのです(感謝)。欲しかったソウル土日公演は即完売だったものの、「まだチケット買えますよ。是非見てくださいね~」と優しいハヌルくんファンさんがお声がけくださいましてね…(ありがとうございます!)。地方公演分にも海外割り当てが出ており、そこはソウル中心部から地下鉄で1時間ほどの場所。…これは完全に…チャンスや…。

 

このまま見過ごしていいのか?

ハヌルくんのお芝居を目撃できるのだぞ?

こんな機会がなければ、軍制作の舞台作品を見ることはないかもしれないよ?

そりゃ来年ハヌル氏は除隊だけど、(私が)どうなっているかもわからんよね?

お金がない?体力限界だと??

 

今を生きろ!!!

 

というわけで、前置き長くなりましたが、城南アートセンターにて、10月7日14時30からの公演を見てまいりました!

 

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…いやぁ、本当に韓国語がわからなかったヨ笑。

外国語舞台鑑賞は難儀なものですね…。映画鑑賞だってそりゃ大変ですが、一回の金銭的負担がそれほどないので時間さえあれば何回も見れますし、ネットなどで内容の確認もしやすい。けれども舞台はそうはいきません。一回聞き逃したら終わり、になってしまうことも多々あります。またクローズアップなど、内容を補完することができる視覚表現がないのも辛いところ。

 

普段から迂闊なことばかり言っている私であるのに、テーマがテーマで、しかも韓国語に不安があり、かつ観劇から時間も経ってしまい、もう本当に何も書かないほうがいいんじゃないかと思ったりもするのですが笑、書ける範囲で感想など背伸びせずに書いてみようかと思います。せっかくですのでね。

 

そういうわけで、「これはあんまりよく分かっていない迂闊な人が書いている」ということを念頭にお読みいただければと思います(保身)。ちなみに、鑑賞前に確認したのは新興武官学校の創設前後のざっくりとした歴史の流れと、各キャラの初期設定、そしてSNSに報告されていたハヌルくんの舞台での様子です笑。

 

まず、率直な感想ですが、面白かったです。

どちらかというと王道というか、ミュージカルらしいミュージカルでした。歴史に翻弄されながらも意志をもって生きた若者たちのお話で、共感しやすい内容だったと思いますね。実際、今の若者が共感できるように、と作られたようです。結構笑っちゃうところもあるし、しっかり泣かせます。映像や照明も凝っていて、山場の映画的とも言える演出もカッコ良かったです。

陸軍制作ということから、冒頭に書いたテーマ的な心配だけでなく、「お堅くマッチョな内容なのでは…」と内心びびりながら幕が上がったのですが、そういう感じではありませんでした(と私は感じました)。考えさせられることは沢山盛り込まれているけれど、しっかりエンターテイメントになっているというか。もちろん愛国心は込められていますが、健康的な愛国心だったと思います。

よくよく考えれば「そりゃそうだよね」なんですけれども、私は構え過ぎていたんですね。分かっていない人にありがちな固定観念というか、ある種の偏見があったわけです。反省。(でもやっぱりこの作品は日本人にとって構える要素が多いのですよね…)

 

でね、プロモーションビデオなどでも使われている『死んでも死なない(죽어도 죽지 않는다)』っていうのが最大のテーマ曲としてあり、ド頭でやって、そのあと何度も繰り返し出てくるんですが、もうこれがすごい迫力なんですね。当時の抗日独立マインドを強く表明している曲で、なぜ「死なない」かと言うと残された人がそのマインドを継承するから「死なない」。つまり、死がそばにあって、死がほとんど前提にあるみたいな状況なんです。戦うんだ。取り返すんだ。死んでも絶対にやり遂げるんだっていう感じでね。使命感と怒りの曲です。また怒って当然、使命感を持たざるをえない状況がそこにはある。それをこの1曲で圧倒的な説得力のもとに見せてしまうのですね。当時の抗日独立活動の壮絶さと、日本人としてのなんとも言えない申し訳なさで、ぞわっと胸がかき乱されました。

(あのアクロバットうますぎの方は俳優さんなのでしょうか…すごく印象に残っている出演者のひとり)

すごく耳に残る曲で、終演後にトイレで順番待ちしてたら、前に並んでる方が結構聞こえる音量でサビを口ずさんでらっしゃていたほど笑(歌いたくなるのもわかる)。

で、強いインパクトを最初にドンと与える曲でありながら、状況によって、より悲しみを訴えたり、励ましになったりと、聞こえ方が変わります。最後には希望にも聞こえてきたり。『ライオンキング』における『サークルオブライフ』みたいな存在ですね(と言ってしまっていいのかな…)。

日本が決してやってはいけないことをやったせいでこんなことになっているので、日本人としては両手ばなしで感動しているわけにはいかないのかもしれないけれど、いい曲だなと思いました。

 

そう、いい曲が多い。

これはちょっと驚き、と書くのは失礼だけれども、嬉しい驚きでした。そもそも、私この作品「ストレートプレイ寄りで曲がちょっとあるくらい?」と勝手に思ってて、実際見たらめちゃめちゃミュージカルでそれだけでも驚いたんですけど(下調べ不足)、現代的な曲調のものとかも結構あったんですね。もう曲だけでいけばオフブロードウェイあたりでやっててもおかしくないような現代的なメロディーライン。どこか抜け感のあるお洒落なサウンドまでいくつかありました。『死んでも死なない』だって、ちょっとロックっぽさもあったりしますし。商業向けの作品を作ってらっしゃる方々が手掛けているようで、ハイクオリティなのもうなづけます。

YouTubeでもプレス向け公演の様子がいくつか上がってるんですが、私が一番好きだった曲がないのが残念だなぁ。もう時間が経ってしまって、好きだと思ったことは覚えていてもどういう旋律かとか覚えてないよ(おい)。最終的にOST的な感じで何か発売してください。

 

では、俳優さんたちのお芝居の様子など。

 

まず、儒生の息子で詩人にあこがれる優等生の ドンギュを演じるチ・チャンウクさん。

実はチャンウクさんの出演作をキチンと見たことがなかったのですが(すみません汗)、本当にこの方お芝居が丁寧で。「おお!さすが人気なだけはある!正統派!実力派!!」と唸っていたところで彼が歌い出しまして、これがまたとんでもなく上手いのです。「ミュージカルにも出てたみたいだし、歌もお上手なんだろうな…」みたいなぼんやりした期待を吹き飛ばす、圧倒的な美声、声量、安定感。特に低音までブレが全くなく、惚れ惚れするような歌声でした。ちょ、もう歌ってる場合じゃないよ!いまは泣!!!みたいなシチュエーションでも、歌はクリアで揺るがず、かつお芝居への集中力が全く途切れていないという、本当にすごい俳優さんでした。あと普通のこと言いますが、とてもとても格好よかったです笑。超イケメン。お顔が小さくて、すらっとしてて。そんなお方が、お芝居も歌もうまくて、そりゃ世界中にファンいるわな!

 

ソンギュさん。

日本陸軍士官学校出身で後に新興武官学校の教官になるチ・チョンチョン役です。

チョンチョンという人はドンギュをはじめとする学生達とはまた違った立場で、ちょっと後からやってきた感があるのですけれども、この作品では「志は同じ。でもそれぞれの立場に違いはある」という面をしっかり描いていてるので、違う角度から切り込んだ主要キャラクターとして変化球でかつ大事な役割を果たしているな、と思いました。だからこそ、もう少しこの方のことが知れたらよかったのにな、とも思ったり(これは演じる方に責任はまったくありませんが)。

また、観劇中メモをとっていたのですが、ソンギュさんについては激しい筆跡で「ねんれいふしょう!セクシー!!」とあることも記しておきたいと思います笑。真面目に見なさい。でも、本当に年齢不詳でセクシーでした。

 

そして、ハヌルさん。

事前に「とてもかわいい」「天真爛漫だ」という情報をSNSで拝読いたしておりましたので、「へぇ!!」などと小さく心躍っていたのですが、これが本当にかわいいとしか言いようのない瞬間が満載の役でしたよ。なんていうか赤ちゃんみたいな可愛さがあってね…。全生物の赤ちゃんの可愛さと純粋さを凝縮させたような…(遠い目)。くるくる表情が変わる、そのどの瞬間も有難かったです笑。

ハヌル氏が演じているパルドは、「え?お前詩書くのすげえな!!おれ字も書けないや!!あはは!!!」(うろ覚え)みたいな子なんですよ。捨て子でいつ生まれたのかもわからない、字も書けない、友達もいない、夢もないって言いながらいつも爆笑してるような子でね。その朗らか具合から、ちびまる子ちゃんの山田くんをほんのちょっとだけ私は思い出しましたけれど笑、とにかくいいやつなんだ。厳しい時代の中に落された癒しの塊のような存在。(国民的詩人役をした人が、「詩書くのか!?」と言っていること自体も感慨深かったですね。。)

だけどパルドも独立軍として大人になるにつれ、「あはは!」とは到底笑えない現実に直面していく。前半のパルドはもはや奇跡の子ですが、後半のパルドは「こういう方がたくさんいたのだろうな…」と思わせる、つらくて現実味のある役でした。

あとファンとしてはやっぱり、この目でハヌル氏のお芝居が見れて感激しましたねぇ。いい俳優さんだな、お芝居が本当に好きなのだろうな、これからも応援するよ、としみじみ思いました。

 

ドラマ『Mother』の出演が記憶に新しいイ・ジョンヨルさんはさすがの貫禄。歌まであんなにお上手とは!私財をなげうって新興武官学校を創るひとりイ・フェヨン役でした。

あと、全体的に若いキャストが多く(服務中の方なのかな?)、アンサンブルの方々が皆一生懸命だったのも印象的。女性キャストの存在感も大きかったです。

 

このお話はドンギュが主役でパルドが2番手なんですけれども、キャラ設定だけを考えれば実はパルドが主役でもいけたよなぁって個人的には思うのですよ(誰が演じているということは関係なく)。まっすぐで、色んな意味で強くてね。ドンギュはいろんなものを背負っていて、真っすぐじゃない部分がある。背負いすぎてちょっと影が薄くなる瞬間すらある。

でも、この作品はそういうドンギュをお話の中心にしているのです。より深い葛藤を主人公が持つことを物語は許しているんですよね。

ドンギュはかなり気の毒な人で、物語が始まってすぐお父さんが自害してしまったりするんですけど(日韓併合に抗議するため、儒生が次々に自死をとげるシーンはかなりショッキングでした)、更に話が進むと「え?そうだったの!?」みたいなことが出てきて、どんどん追い詰められる展開になってくる。ドンギュは家族も友達もいるし夢もあるけど、めちゃくちゃ孤独なんです。誰とも共有できない、共有しちゃいけないことがあって、とても苦しんでいる。で、これって今を生きる人にもどこか通じるものがあるのかもしれない。こころの状態として。作り手が目指した「今の若者が共感できるような」というのは、このあたりもひとつあるのかもしれません。そしてそこがいいなと思ったのです。

 

この作品は、抗日独立活動をすすめるために新興武官学校を作った、という史実に基づいているわけですが、主要人物である若者たちの描写は今作の音楽のようにどこか現代的でした。それぞれに意志があり、みんな何かを抱えてる。「パルドはまっすぐ」とは書いたけど、やっぱり彼には彼の孤独もあったり。女性たちの描き方とかもかなり進歩的でリベラルな雰囲気なんですよね。実際はもっともっと女性は生きづらかったはずですし、新興武官学校での日々はあんもんじゃなく厳しかったでしょうし、誰もが「自分の選択」として学校にやってきたわけではなかったのかもしれないとすら思うけれど、作り手はそのように描くことは選ばなかった。ひとりひとりが違う人間だと認める価値観はとても尊くて、個人が全体のための存在でしかないとする価値観は人を不幸にする、ということを現代を生きる私たちは知っているからです。「民が主人になる国」を作ろうとした若者たちを描くのなら尚更、ここは外せなかったはず。個人だけでなく友情も中心に描いたのも、個の代償としての孤独に耐えるには、友愛が必要だからではないでしょうか。「実際に何が起きたか」ということは何より大事なことですが、「今の視点で当時をどう物語化するか」ということもまた大事なのだと思います。

 

もちろん、終演後はスタンディングオベーション

 

そして、カーテンコールにおけるチ・チャンウクさんへの黄色い歓声の半端なさよ笑。ソンギュさんやハヌルくんにも「キャー」ってなってたけど、チャンウクさんへの歓声はハッキリ言ってそんなもんじゃない。まじスーパースターだな!!と思いました笑。

 

あと、映画館でもそうなんですけど、韓国のお客さんは撤収するのホント早いのね。カーテンコールを盛大にパッとやって、幕が下りた瞬間にほぼ全員のお客さんが席から離れたといっても過言ではないです(過言かもしれない)。日本だとカーテンコール終わったと思いきやまた幕が上がって…カーテンコールのアンコールを2、3回やったりするじゃないですか。全然ああいう感じじゃない。この辺の日韓の違いも面白く感じつつ、観劇を終えました。

 

正直、私は普段「日本人」ということにあまり属性を感じていないんですけれも、歴史や社会の問題を考えるときに、やっぱりそこは差っ引いで考えてはいけないというか。この作品を見て、韓国のことも日本のことももっと知らなければな…と改めて思いましたね。

でまた、最近も色々とね、あるわけです。国家レベルじゃそうもいかないのかもしれないけれど、結論を急がず冷静に、両国のひとりひとりが互いを知る作業を進めていけばきっといい関係を築けると信じています。まぁみんなそう思っているかな。

 

あんまり難しいことはなぁ…という人は、最初は歴史とは関係でないものでもいいとすら思うのです。互いの文化を通して心惹かれるものが見つかりさえすれば、人それぞれのタイミングでその背景にある社会や歴史と出会うことになる。私もそういう一人です。大事なのは関心をもつこと。それは学びの種になってくれるでしょう。

 

そして、私はもっと韓国語を勉強せねば…。もう雰囲気の韓国語だけでは限界だ。韓国語がポンコツでなければ、もうちょっとちゃんと書けただろうにね…。この記事本当大丈夫かな汗。いや、韓国語がわかったところで、なにかちゃんとしたことが書けただろうか…。

頑張ろう…笑。

 

『新興武官学校』は現在国内ツアー中ということで、地方公演が今も続いています。韓国外からのネット購入可購入枠もまだ数か所であるようです。

もしこれから機会がある方は、それほどおどろおどろしい気持ちになる必要はなく、ただ真摯にご覧になればいいのではないかと思います。とても貴重な経験でした。日本からだけでなく、色んな国からのお客さんがチラホラいらっしゃいましたよ。日本人の描き方が気になる方もいるでしょうが、「この程度にとどめてくれたんだな」と私なんかは思いました。実際にそうだったと思います。