お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

2021年4月 印象に残った作品

 

☆やんわりとネタバレあります☆

 

こんにちは!

 

4月も光の速さで終わってしまいました笑。

 

先月は、健康の研究がいよいよ行き詰まりやけくそな気分になって、ドラマを見まくっておりました。そしたら体調がやや安定傾向になってきました笑。実は先に安定傾向になっていて、だからこそやけくそになれたりドラマを見られる体力があったりしたのかもしれませんが…^^;ゆっくりでもいいから、このまま上り調子でいきたいところ。

 

  

韓国ドラマ『シーシュポス:The Myth』(2021年)

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タイムトラベルものが好きなこともあり、一気見しました!やや釈然としないところもありますが、楽しく食らいついて見ました。「未来を知るためには過去を見つめなければならない」というメッセージが、今も胸に残っています。

 

ただこの作品、一つ推しづらい点を知ってしまいまして、第2話で社会的に高いステータスを持ち、女性遍歴があるらしい主人公が、言うことをきかなければ「明日(あなたに関しての虚偽の)”me too”記事が出るでしょう」と脅される展開があり、me tooをそんな使い方するのはどうなのよ、と批判が出たそうなんですよね。日本語字幕は「記事が出ます」となっていて鑑賞時は気づかなかったのですが、見返したら私のレベルでもハッキリわかるほどに「me too記事」と言ってました。確かにこれは言い方が悪いな…。現実世界で性暴力、ハラスメントを告発するのは大変なのに、「me tooには虚偽の告発もある」って不特定多数の人が見るドラマで印象付ける必要はなかったですね。別の脅し方もできただろうし(そもそも脅していいのかっていうとそりゃダメなんだけど笑)、作品との本題とも絡まない中で、単純に脅しとしてme tooを持ち出すのはよろしくないなと思いました。全体的に面白かっただけに残念。たった一言のことなんですけれどもね。でも、そのたった一言が命取りになることもある(自戒)。

 

韓国ドラマ『ナビレラ-それでも蝶は舞うー』(2021年)

 

とてもいい作品でした!面白かった!

いくら韓国ドラマが面白いからって、さすがに「おじいさんのバレエ」という設定には無理があるのでは…と見る前は思ったりもしていたのですが(ごめんね)、全くの杞憂でした。素晴らしい人間ドラマ。おじいさんのバレエ描写にも無理がありません。70歳の設定だと、まだまだ若いですしね(ただ、演じているパク・イナンさんが76歳であることを考えるとやっぱりすごい)。見る人を選ばず、多くの人が感動するであろう作品です。

 

70歳の主人公ドクチュルは、幼いころから憧れていたバレエを始めることを決意しますが、「なぜバレエを踊りたいのか?」と問われてこう答えます。

 

ドクチュル:「今まで一度も好きなことをしたことがないんです。生計を立てるのに精一杯で、夢を持つことすらできなかった。それが当然でした。今からでもやりたいことをしてみようかと。自分がか弱い老人だとわかっています。それでもやってみたい。結果はどうであれ、始めてみたいんです」(『ナビレラ』第1話)

 

この率直な答えは、70歳の男性でなくても共感してしまいます。自分のやりたいことをしたり、夢を持つことの難しさは、大なり小なり誰もが感じていることですよね。

 

もう一人の主人公であり、若く才能あるバレエダンサー・チェログ(ソン・ガン)もまた、生きることに精一杯でした。夢は追っているものの、その夢に集中できていません。この人がまた魅力的で、不器用だけどもまっすぐないい青年なんだ。佇まいは本物のバレエダンサーのようです。チェログは、ドクチュルにバレエを教えながら、ドクチュルから夢を追う勇気をもらいます。二人は、互いに与えあう存在で、同志のようなところもあり、世代を超えた信頼関係が美しかったです。

 

また、彼らだけでなく多くの登場人物が「自分のやりたいこと」が上手くできずに葛藤しています。

 

ドクチュルの長男は幼い頃に貧しさからやりたいことを我慢していたことが未だに心の傷になっていて、彼の妻は子育てで長い間仕事に復帰できずふさぎ込んでいた時期がありました。長女は夫がいつまでもモラトリアム気味で夢を追っているせいで子供を持つことが難しい状況。末っ子次男は医師でしたが、患者を亡くしたことをきっかけに退職してしまい、今はぶらぶらしています。長男の娘(孫)は恵まれた環境で育ちましたが、幼い頃から自分の意志とは関係なく競争社会にさらされてきたため、大学を卒業する歳になっても本当は何をしたいのか分かりません。チェロクのかつての同級生は、サッカー選手を目指すも挫折し、目標を見失ったままです。また、チェログのバレエ教師は、故障により突然の引退を余儀なくされた人物でした。

 

ドクチュルの妻・へナムは唯一、自分だけの夢がないというか、夫の夢を自分の夢とする人でしたね。配偶者がいようと、子がいようと、自分の夢を追い求めること断たれるのは悲しいことですが、誰もが自分だけの「夢」を求めて生きなければいけないということでもない。ドクチュルは「定年退職まで働けたのは半分は妻のおかげ」と考えるタイプで、へナムも夫がそう言ったことを嬉しく思っており、二人が素晴らしいパートナーシップを築いてきたことは分かります。だからこそ、夫の夢を自分の夢と心から思うことができるのかもしれない。へナムさんも自分だけの好きなことをもっとしてほしいなと思ったりもするけれど…どのようなことを自分の夢とするかは、自分で決めればそれでいいのかな。へナムさんの状況で「自分だけの夢」を追い求めるのは、とても大変だと思うので、単純に「自分で決めればいい」っていうだけの話でもないんですけれどもね。彼女は、夫の夢も最初は「子供たちに迷惑がかかる」と反対してたくらいですし。

 

そんな感じで、ドクチュルさんやチェログ、そしてサブキャラクター達の自己実現のお話なのですが、見続けていくと更なる展開があり、ドクチュルはより大きな限界にも挑んでいくようになります。あぁそうなのか…と涙しつつも、ドクチュルとチェログの挑戦からたくさんの勇気ももらいました。踊るということは、芸術であり、スポーツ的な面もある一方で、コミュニケーションや記憶そのものにもなるのだな、と心震えました。

 

「おじいさんがバレエをする」という設定が挑戦的であると同時に、その設定自体が視聴者への大きなエールになっていて、今年のベスト級の良作だったと思います。セリフのひとつひとつが生きていて、演技も皆さん素晴らしかった。原作漫画でのドクチュルは50代のようですが、70代に設定したのは意味のある改変でした。原作も読んでみたいです。

 

あと、「家長や長男が全てを背負う必要はない」というメッセージも力強く、老いた父は子達を頼っていいし、その長男も家族の為に我慢を貯めず自分らしく生きていいんだ、という新しい家族の在り方を見せていました。最終回、ドクチュルがかつて乗っていた車を引きついた孫娘ウノが、両親を乗せてその車を運転するシーンは象徴的で、胸が熱くなりました。

 

スポーツの負の部分、体罰による指導について描いていることもよかったですね。なんのためにそれをやるのか。自分を大切にし、大切にされる環境でなければ、それは悲しい行為になってしまいます。 

 

韓国ドラマ『Sweet Home -俺と世界の絶望-』(2020年)

Sweet Home

『ナビレラ』のソン・ガンさんがこちらでも主演。グロい描写が多いけど面白かった!パンデミックにより人々がモンスターになってしまうんだけれども、単純な感染→発症ではなく、人それぞれの欲望がモンスター化の源となっているところが新しい(感染してもモンスター化しない人もいる)。しかも、その人の欲望が具現化されたようなモンスターになってしまうんですよね。薄毛を気にしているおじさんが発症したら毛だらけモンスターになってしまう展開に、ヘアレスな私は胸が痛みました笑。人格的に超ひどい奴だけど、その気持ちはわからんでもないよアジョッシ…涙。

 

団地で多種多様な住民が力を合わせてたてこもり、モンスターと戦いつつ、仲間うちでも発症者が出つつ、パンデミックの謎に迫ります。キャラも一人一人存在感があり、それぞれにドラマがあり、手に汗を握り続けました。続きが早く見たい!

 

韓国ドラマ『ストーブリーグ』(2019年)

스토브리그 대표 이미지

 

こちらも面白かったです!

野球についてほとんど知らない私ですが、楽しみました。奇をてらわず、登場人物同士での不自然な恋愛もなく、真摯に球団運営について描いているのがとてもよかったです。スポーツ選手の薬物の使用や、韓国社会で兵役に行かなかったことがどれほど大きなインパクトを人生に与え続けるか、といったシビアな問題を描いているのも興味深かった。

 

また、『ナビレラ』と同じく、この作品でも「男性が全てを背負おうとしなくていい」というメッセージを強く打ち出していたことも印象に残りました。主人公は今まで大切な人やモノを守り切れず、深い罪悪感を抱いているのですが、球団で仕事を進める中で彼が仲間たちから信頼や癒しを得る過程を描くことで、視聴者にも勇気を与えていると思いました。『ミナリ』でも同じテーマが描かれていましたね。ここ数年、そういったメッセージがフィクションで多く描かれているのは嬉しいです。

 

あと、『麗~』でずるっこいウォン皇子を演じていたユン・ソヌさんが、とても人柄のいい主人公の弟役をされていたのも嬉しかったです笑(大事な役どころでした)。

 

映画『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(2019年)

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とてもいい作品でした。ハード系ドラマーの主人公が突然耳が聞こえなくなってしまうお話で、あまりのリアリティに見てて辛いのに最後まで目が離せません。音響効果で音が聞こえなくなるとどんな風に感じるかを表現しているのですが、これがまた本当に怖い。しかも、主人公は症状が出てすぐに「もう治らない」と宣告されてしまいます。誰がなってもつらい状況ですが、ミュージシャンとしての自分にアイデンティティを持つ主人公にとっては自己の存在すら揺るがすことです。ガールフレンドとも音楽を通じてつながっていたし。今までとは違う自分を受容する過程が、誠実に描かれていました。自分が変わり何もかも失ったようでも、心の中には揺るがないその人の核がある。でも、それは心がピタリと静寂に包まれていなければ聞こえてきません。自分の心に耳を澄ますためには、心の静寂が必要なのです。禅にも近い考え方なのかな。

にしても、手術前に人工内耳の説明ちゃんとしてあげてよ病院…って思ったよ。。。そして主人公がジタバタするのはめっちゃ分かる。急に病気になったり、体に変化が起きたら、ほんと焦るのよ。人間だもの。

 

 

日本の春ドラマなど

日本の春ドラマも複数見ています。『コントが始まる』脚本、演技、演出の全てが丁寧で一押し。笑って泣いて切なくなる。言うことなしに面白い。『今ここにある危機とぼくの好感度について』社会批判を正面からするブラックコメディで驚きました。かなり政治的です。面白い。松坂桃李さんの薄っぺらい人の演技がよくて笑。鈴木杏さんも素晴らしかった。大豆田とわ子と三人の元夫』こちらも挑戦的な作り込んだ世界観で面白く見つつも、実は最近脱落しかけていました。というのも、主人公のとわ子は設計会社の社長ポストを引き継いだばかりという設定なのですが、私は前の会社が建築関係で社長の事業継承でめちゃくちゃ苦労したので(とわ子と同様、図面を書くのが好きなのに指名されて社長になってしまったパターンだった)、素直に楽しめないというか、何か色々思っちゃうというか…笑。とわ子も3人の元夫たちも、あんまり現実感がないし…。ただ今週の回で、とわ子の親友・かごめの背景が明かされたことで俄然面白くなってきました。恋愛をしないかごめが裏のヒロインであり、物語のテーマの鍵を握っているのかもしれません。それならば、主人公が3回結婚した設定の意味も少し見えてくる気がします。今後も視聴します。3作とも好きな脚本家さんで、今期は嬉しいです。

 

そして、この3作含め多くの日本のドラマ作品がナレーションを多用していて驚いています。前からこんなにナレあったっけ?って言うほどに多い。特に『今ここ~』と『大豆田~』は、主人公などの声ではなく、別の俳優さんをわざわざナレーションに入れている。もちろん、わかりやすさの重視もあるかもしれないけれど、それ以上に共感性を持たせたいのかな。『進撃の巨人』のような説明の少なく話が込み入った作品もヒットしているし、わかりやすさだけの問題ではない気がするんですよね。バラエティー番組などのナレのような冷笑的なツッコミが一般化していることも関係あるかな。寓話性を高めたい、ということもあるでしょう。3作の脚本家さんたちはナレなしでも十分に物語を伝える筆力をお持ちなので、余計にそんなことをあれこれと考えています。

 

ドラマ以外では『PRODUCE101 JAPAN』シーズン2も懲りなく見ているし笑、遂には別のオーディション番組である『The First』にも手を付けてしまいました(SKY-HIさんが素敵なのよ)。オーディション番組って、色々辛い要素が多いのに見ると面白いんですよね(残酷)。みんな幸せになってくれ!

 

ちょっと最近遊びすぎな気もしますが、まだまだヤケなモードなのでいいんです笑。話題の『ヴィンチェンツォ』も見ようかな。

 

感染症の流行の勢いがなかなか収まらない今日この頃ですが、皆さま無理せずご自愛くださいませ。疲れた時は、ゆっくり休みましょう。