お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』 第10話を見たよ①

☆ネタバレしています☆

 

<第10話のあらすじ>

ソは自分を拒絶したヘスを皇宮の外へ連れ出す。いつか共に来たいと思っていた海辺で、ヘスに心を打ち明けるソ。真摯に耳を傾けながらも「他に好きな人がいる」とヘスはソに伝えた。

ヘスとソの出官を知ったジョンとウクは二人を追い、発見するが、ソがヘスを想う気持ちは強い。危機感を募らせたウクは、ヘスにプロポーズする。「重陽節の宴で皇帝に申し出る。夫人の分まで幸せにしたい」。

オ尚宮は皇子2人に挟まれたヘスを心配。一緒に自分の故郷へ帰ろうと誘うが、ウクを信じるヘスに、尚宮の気持ちは通じない。

皇位を捨てヘスと静かに暮らしたい」と皇后ファンボ氏とヨンファに伝えたウク。母はそれを認めるが、一族と自身の将来が危ういと恐怖するヨンファは、宿敵である皇后ユ氏とあえて手を組み、正胤とヘスを一気に排除しようと画策に乗り出す。

次第に不穏になっていく皇政。皇帝は事態収拾のためソに信州へ戻るよう命ずる。

その元凶は母だと、怒りを直接皇后ユ氏に訴えるソだったが、逆に重陽節でのお茶による正胤毒殺計画を宣言される。綿密で、かつ信州に戻りたくないソの気持に付け込んだ計画のため、ソは簡単にそれを明かすことができない。

重陽節の日。皇后ユ氏の読み通り宴の最中に正胤は茶を求め、ソは暗殺計画を告発することを決意し立ちあがる。が、その直後、正胤に毒入り茶を持ってきたのは、何も知らない女官ヘスだった。母の策の全貌に気づいたソ。正胤と、そしてなによりヘスを守るため、ソは毒入りの茶を「忠誠のしるしに」と飲み干すのだった。

 

第10話のテーマは「決心」。それぞれのキャラの心が大きく動きだす回です。細かく色々あるので、(わかりずらいですが)ひとまずざっくりのあらすじです。

10話は見れば見るほど難しいし、よくできているんですよね。長セリフが多く、またセリフなしのお芝居ひとつひとつにも、今まで以上に多くの意味を感じます。その心情を私はきちんと汲み取れきれているのか…。今までで一番録画を見直した回でした。会話劇であり心理戦。登場人物たちの思惑が交錯します。特にソと皇后ユ氏の駆け引きの緊張感が半端ない。

 

時系列にまとめていくのは、私にはもはや不可能だという結論に達しまして(笑)、今回は動きのあったキャラごとの印象的なセリフと、ちょっとした考察をしていきたいと思います。順番はお話の流れに沿っているわけではありません。

 

 

第14皇子 ワン・ジョン

 「配慮は感謝しますが、このまま帰れません。出官が知れたらス姉上がどうなるかわからない。一緒に探します」

 ヘスがソに連れられて出官する場面を目撃したジョンは、ウクに報告。

 「ソ兄上が連れ出したのでしょう。見つかったら姉上だけが殺されます。早く探しに生きましょう…私も従者と馬で探しに…」って心配するジョンは、ウクに「帰れ。夜の外出はならぬ。私が探す」と断られます。その時に返したのがこのセリフ。

ヘスはジョンの命の恩人であり(4話)、異性として好意も抱いてますので、簡単には引き下がれない。ウクはジョンの強い意志を感じ、納得。

「そうか。お前を子供扱いしたようだ。すまない。信じておる」

ジョンが大人として初めて意見し、そして認められた瞬間でした。とても嬉しそう。自分を一人の人間として認めたウクと、ジョンはこれから共に過ごすようになります。

 

 「ソ兄上が上京して、母上もヨ兄上も変わりました。…ソ兄上がいなければ、母上とヨ兄上の本音も知らなかった。姉上、以前が恋しい。楽しかった頃だよ。ウク兄上の家で笑ってた頃」

ソの覚醒で皇宮内でのパワーゲームが激化しはじめ、母やヨの暗黒面を知ってしまったジョン。母に(恐らく意図的に)純粋培養され育っただけに、家族の誰にも共感できない今の状況はかなり辛いでしょう。ウクの家でふざけあっていた頃が、彼の心のよりどころになっているのがわかる。ウク側につくようになるのは、大事な思い出を共有しているのからなのかもしれない。そしてその思い出には、ヘスの天真爛漫な輝きがもちろん含まれています。かつてウンと取っ組み合いの喧嘩をしたヘスは、もう「皇子にデコピンはできない」。何もかも変わりつつある。

 

 

 第4皇子 ワン・ソ

 「このまま逃げようか?お前が望むなら、俺は構わぬ」

正直、私は何故ソが自分を拒絶するヘスをいきなり、命を懸けてまで海に連れて行ったのか、よくわかりませんでした。たぶん彼は「何のしがらみのない」場所で自分の気持ちを伝えなければ、と思ったのでしょう。皇子としてではなく、一人の人間として、ヘスと話さなければならないと。だから、皇宮から離れた。ウクとヘスにとっての「浴穴」のような場所が必要だった。「このまま逃げてもいい」というのはウクのプロポーズに相当。

この海のシーンのソには顔の傷がうっすら出ており、ここでは本心を語っていることを思わせます。

 

「俺はいつも去る役目だった。理由は今もわからぬ。俺は不運にさせたことも、冗談で獣を殺すことも、容易に人に刀を向けもせぬ。なのに俺が去らねばならぬか?」

「皇室から離れて暮らして」というヘスに対して。勝手に張られたレッテルと周りの都合で振り回されてきたソ。今まで偏見なく自分を見てきてくれたはずのヘスが、急に誰よりも理不尽な偏見で自分を避けた。ソはヘスを責めず、ただ静かに理解を求めています。

 

「ヨンファに打たれていた時、あの時からお前は俺のものだった。ありのままの俺を見る。説明も弁明を必要なかった。俺が怖いだなんて信じぬ。お前は唯一の理解者だ。それゆえ、謝らぬ。口づけしたことも、連れ出したことも、他の男に心を寄せるなと脅迫することも謝らない」 

ヨンファに打たれていた時から、と聞いて「なるほど」と思いました。ソは「何も悪いことをしていないのに痛めつけられる」ヘスの姿に、自分をみていたのだね。ヨから嫌味を言われるペクアを助けたのも、「強者から弱者への圧力が嫌だったから」と言っていた。ヘスの婚姻騒動の際、色々手を貸したのも同じ理由。

偏見なく接し、母親からの愛情の欠乏を埋めた存在としてだけでなく、ソはヘスを自分と同化して見ている。ヘスが変わったなんて信じないし、自分がヘスを想うことも悪いことだとは思わない。

 

「 俺はあれこれ情を抱く者ではない、愛情も友情も、俺にとっては同じだ」

 ソの気持を愛情としては受け取れない、というヘスに。ソは今まで人間関係を誰ともほぼ結ばないで生きてきたため、この発言は理解できます。人間関係が白か黒でしか築けない。

 

「母上を信じろと?」

母親から正胤の毒茶による暗殺計画を聞かされたソ。いつも正胤を助けてきたソですが、今回はギリギリまで助けるかどうか迷います。皇后ユ氏とソの会話の後に、ジモンが「正胤の星がなぜか揺れている」と言うシーンがわざわざ入っており、この状況で正胤を助けられるのはソしかいないので、迷っていたのは間違いない。(単に正胤の命が脅かされている、とも取れますが)

この時点で、母はワン・ムとワン・ソ正胤交代を画策し、ムとソの信頼関係にひびを入れています。また、計画をバラせば「ソを皇帝にするためだったと言う」と脅す母。

しかし迷いの最大の理由は「陛下に追い出されたのだぞ」という言葉です。皇帝は「ソを正胤に」と声が上がったため、信州に帰れとソに命じていた。皇后ユ氏は、ソが松岳から離れたくないことを知っているため、そこに付け込みます。だからおとなしく正胤になれ、私がお前を正胤にしてやる、と。

「皇帝になっても兄弟を殺さぬ言ったお前を信じる。それゆえ後押しする」という皇后ユ氏。母を信じるべきか。言葉に出さずとも葛藤するソ。

だが、ソは「茶を運んだ官女が死ねば」という、暗殺計画成功の条件を聞き流してしまっています。

 

 

第3皇子 ワン・ヨ

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 「俺は射るたびにある者を思う。英雄になった男。俺をひきずり下ろした男を射るつもりで放てば、外れはせぬ。お前は?標的は誰だ」

「標的がいない者はぶれやすい。俺は松岳を離れる。陛下が死地に送るゆえ、生きて戻らねば…もちろん、何事もなく戻ってくる。俺がいない間にお前も考えろ。誰を的にすれば面白いか。俺たちは、意外に合うかもしれぬ」

 ソによるヘスの出官事件の後、動揺し弓矢の的を外すウクに対して。ワン・ヨが欲しいものは皇位であり、それを脅かす存在となったワン・ソが心から邪魔だと思っている。ヨの皇帝への野心は全く揺らぎがなく、弓矢の的を外すことがありません。このままでは終わらない、という強い決意。だが、なぜ皇帝になりたいのか、皇帝になって何をしたいのか、彼は考えていない。ステータスとしての皇位

また、ヨは人の弱みを見抜く才があり、ウクがソを疎ましく思っていることに気づいています。この会話の直後、ウクは矢を的に的中させる。思惑は別として、ワン・ソは二人の共通の敵。ウクの欲しいものが決まった瞬間でもあります。

 

 

第8皇子 ワン・ウク

 

「ありえない…官女が出官とは!!」

ジョンからソがヘスを連れ去ったと聞いたウクは動揺し、怒りの感情を出してしまう。ウクはいつも失ってから、感情と行動が噴き出すタイプ。

 

「怒ってはおらぬ…自分に腹が立っている。私は方法にこだわりお前を茶美院に置いたが、ソは一気に連れ出した」 

ソと皇宮を抜け出したヘスに「怒っていますか?」と聞かれて。

「いい子」としてしか生きてこなかったため、ウクは欲しいものを欲しい時に欲しいと言えない。安全ではあるが、それでは欲しいものは決して手に入りません。一方、ソは自分の気持に常に正直であり、瞬間瞬間、自分の人生を生きている。ソへの敗北感と、自らの不甲斐なさを痛感するウク。

ただ、婚姻を皇帝に願い出るのを「重陽節に」としたあたり、彼は依然方法にとらわれています。皇帝に早々会うのも難しいのだろうけど…。

ヘスがソと「朝日を見た」というのがまた皮肉。「旭」はウクの名前なのに…。

 

「お前が消えたと聞いて、妃に選ばれた時を思い出した。今回もお前を失うか、気が気ではなかった。二度と過ちは繰り返さぬ。夫人が言う通り、私は常に夢見が悪かった。過度な期待をかけられ、将来が不安で、眠ることも罪を犯す気分だった。

そんな私に笑顔と軽いイタズラ、そして詩を思い出させたのは、お前だった。皇宮を離れ黄州で暮らしたい。夫人へ至らなかった分まで、お前に注ぎたい。だからスよ。伴侶になってくれないか」

「詩を思いださせたのは」というのが沁みた。それまでこの人にとって詩は教養や礼儀でしかなく、内容に共感することなどなかったのです。ヘスに出会い心が動いたことで、詩が表現する人間らしい感情を取り戻した。(だから思わずあんなストレートな詩をヘスに贈ったのだね。「何故か贈りたくなった」って言ってたけど、あの時すごく気持ちが生き返って嬉しかったんだ)

自分の人生を生きられなかったのも、夫人に心をうまく寄せられなかったのも、皇位を狙わなければいけない立場だったからと、ウクは気づいています。ウクがいま欲しいのは、ヘスとの幸せで穏やかな生活。他にはなにもいらない、とこの時は本気で強く思っています。浴穴でのウクの言葉に嘘はない。と思う。

 

重陽節の宴でヘスとの婚姻の許しを得る。スが出官したら黄州で暮らします。期待はわかりますが、皇位には興味はありません。政はうんざりです。ただ安らかに暮らしたい」

ヘスのプロポーズ以上に勇気がいったであろう、家族への皇位を捨てる宣言。恐らく彼の人生で、初めての大きな決断だろうし、そもそも「自分の人生を自分で決める」ということすら、今まで考えたことがなかったんじゃないか。真面目な性格だからこそ、現実逃避には聞こえない。

 

「どこで何になって再会しても、夫人への心の借りは忘れませぬ。これから約束を果たします。ヘスを心から大切にします。見守ってほしい」

亡き夫人の墓前にて。ヘスへの強い想いは、夫人へ愛情を素直に注げなかった後悔が後押ししています。夫人にヘスを託されたこともあり、ヘスと生きていくということは一時の浮ついた気持ちで決めたわけではない。むしろ婚姻決意までの道のりは、慎重すぎるほど慎重でした。

夫人が好きだったと思われる小物入れ?みたいなポーチを、花と共に墓前に供えていますね。(夫人は亡くなる前に、同じようなポーチを燃やしていた)

 

 

 皇后 ファンボ氏

「私が反対したことがあるか?望みか明らかなら好きにせよ。お前の女にするのだ。だが、容易ではない故覚悟せよ」

 良識ある人物として描かれていた皇后ファンボ氏。息子の大きな決断をむしろ応援します。ウクがヘスを好きなことは気づいていたでしょうし、へ夫人にも後添えにするようお願いされていましたね。ウクが皇位を取らないとなれば、一族は大きな転換をしなければならないので、「覚悟せよ」と言った母にも相当な覚悟があったはず。

 

「私も親族の欲にはうんざりしておるのだ。ウクの荷物は想像よりはるかに重かった 好きにさせよう」

「正胤と陛下はもう違う。情勢も違う。取り越し苦労で自分を苦しめるな」

 兄の決断にヒステリックに大反対するヨンファに。ウクの考えに共感、理解を示す一方で、母は娘の気持ちに寄り添うことができなかった。

 

 

 ヨンファ

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皇位を諦め、母と私を捨て夫として暮らすと?ではファンボ家は誰が守るのです」

 兄の決断に真っ向から反対するヨンファ。兄にずっと守られてきた妹。婚姻でどこに飛ばされるかもわからない中、ウクまでいなくなれば、彼女はひとりになってしまう。いや、実際にはひとりではないし、ウクは「皇帝にはならずとも守る道はある。信じろ」って言うんだけど、ヨンファはウク以外の人間を基本的に信じていない。

 

「陛下のお手つきを流産させたと言われ、追放されたのは10年前です。忠州院皇后の仕業だと知りながら、誰もが顔を背けた。皇位に就かなければ、再び我々を討ちます」

母にウクを止めなければと訴えながら、ついにファンボ家が都落ちした理由がはっきり明かされました。「お手つき」ってすごい言葉だな…と思いましたが、官女の愛人ということなので、それはすなわち…オ尚宮ですね。皇后ユ氏にハメられただけでなく、ヨンファはその際誰も助けてくれなかったことをはっきりと覚えてる。裏切った一族の名前まで事細かに。地獄を見たことは明らかです。幼かったヨンファにとってはトラウマでしょう。兄が皇帝にならなければどうなるかわからないという恐怖で、ヨンファはパニックに陥ってしまいます。

 

「私が母上から離れる時のようです。これからは目標を変えます。皇帝の娘や妹ではなく、皇帝の上の天帝になります。私を許さなくてもいい」

兄の背中を押す母に、見切りをつけ、自分で動くことを決めたヨンファ。このあと彼女が向かうのは、宿敵である皇后ユ氏のもと。憎いけれども、彼女以上に力を持っている女性はいない。計算高いヨンファは皇后ユ氏を利用して、へス排除に乗り出します。

 

「お前に頼んだことは皇后ユ氏には言わないように」

ヨンファは皇太子暗殺のための毒を手配。ヘスが毒入りの茶を給仕するよう、茶美院の官女へ秘密裏に指示させます。間に入った皇后ユ氏付きの尚宮に「内密に」と言ったヨンファでしたが、尚宮はあっさり皇后に耳打ち。皇后ユ氏にはかなわない。

 

もう少し続きます。