お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

2023年7~9月 印象に残った作品

こんにちは!

 

このあいだまであんなに暑かったのに、もう完全に秋風…。

10月も終わりですが、7月から9月の記録です。

 

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韓国ドラマ

『ムービング』

かなりタイムリーなお話だと思います。

mikanmikan00.hatenablog.com

 

『悪鬼』

とてもよかった!タイトル通り悪鬼との闘いで、かなりホラー的な怖さがあるのですが、根本にあるのは社会批判で、完成度の高い作品でした。ただ、自死の描写が複数回出てくるので視聴注意です。民俗学的なモチーフは怖いけれどおもしろいですね。

 

ヘサン「自殺には見えない手があるんだよ。朝鮮時代初期の法制書「大明律直解」322条に威逼人到死の規定がある。威逼人到死。他人からの脅しや強要に抵抗できずに自ら命を絶った人のための法律だ。その人を死なせた者に法の力で復讐してくれる。”自殺の見えない手”を真犯人と見なすんだ」

ウジン「昔も今も無念の死を遂げた自殺者が多いってことだろ」

『悪鬼』より

 

タイトルにもある「悪鬼」は狙った人間を無理やり自死させる力があり、大変に恐ろしい悪霊なのですが、もとを辿るとこの悪鬼もまた、弱者であることから無理やり死に追いやられた犠牲者でした。その無念は図りしれません。キムテリさん演じる主人公もまた、社会に押しつぶされて自殺思念を持つ人物で、時代は変われど悪鬼と同じ立場に追いやられている社会的に弱い存在として描かれます(キム・ヘスクさんはこの同列にいながら、反転した人物)。

 

作中では大金持ちであるヘサン(演:オ・ジョンセ)「自分が富めることができるのは弱者の大きな犠牲があったからだった」という事実に直面し、あまりに絶望して生きる力を失ってしまう展開があるのですが、これを直視できるお金持ちは多くなさそうだな、と思ってしまいました。『シスターズ』と同様、この作品は富める者には楽しむことが難しいかもしれません。

 

韓国ではもちろん、日本でも自死は大きな社会問題となっていて、それは経済的な格差によって引き起こされてしまうことも多いです。先が見えない主人公を文字通り目が見えなくなるという描き方をしたストレートさに驚きつつ、最後まで弱者に寄り添ったドラマだったと思いました。

霊描写が本当に怖いので、真冬とかに見ると温かい部屋でも凍えてしまうかもしれません…笑。

 

『D.P. 2』

こちらもよかったです。映画的手法を多く使った前シリーズの方が、映像作品としての完成度は高かったと思いますが、テレビドラマの手法を使って前シリーズの宿題に対する答えをしっかりと提示していたと思います。

韓国において兵役制度は無関係な人は誰もおらず、なぜ兵役制度があるのかと考えると韓国だけの問題でもなく、見る者に問いを与え続けるよい作品でした。俳優さんも皆いいんですが、主役級以外で言うと、ニーナ役だった方がすごく印象的で歌もよかった。凛と美しい一方で辛くて悲しくてたまらない役でしたね涙。

 

『マスクガール』

おもしろかった!けどつらい!

ルッキズムの話から始まって、だんだん「これなんの話なんだっけ?」みたいになってきて、最後には「あぁそうかルッキズムのテーマはここに戻ってくるのね…」って感じのお話でした(ざっくりですみません)。

 

今作では、ルッキズムの根には誰もが持つ自己愛と「愛されたい」という欲望がある、ということを提示したうえで、それは本能的なもの故暴走することも多々ある、ということを強烈に描いています。また、それを乗り越えるために必要なのは、単純な自己肯定感よりも、孤独になる勇気であることも。

 

終盤、子どもを守るために孤独になる勇気を発動する様子が描かれるけれども、親がみな子どもを理由に勇気を発動するわけでもなく、また大切な人のために孤独になろうとして、結局慣れない人もいたり…。

しかもこの論理でいくと孤独になるためには他者が必要になる、ということになり、そもそもひとりぼっちの人は孤独にすら差が生まれてしまうのか、などと考えてしまいました。人間のままならなさを強く感じる作品です。

この結末でいくと単に「母の愛」的なまとめに受け止められかねないので、最後は少し微妙な気もしたけれど、ままならない人間が避けたいと思っていた孤独を受け入れる理由として、これが一番可能性は高いのかもしれない。その対立として、息子以上に自己を愛するヨムヘランさんが配置されているわけだし。

 

最近日本で感じるルッキズムは、今作のような「愛されたい」願望からではなく、「嫌われたくない」からだという気がしているのですが、それもやはり根本的に「孤独になりたくない」という思いが根本にあり、社会的な生物である人間にとってはいずれにせよ根深いテーマです。

 

日本ドラマ

『VIVANT』

一応毎週楽しみに見ていたのですが、最終的に「怖いな」という感想が残った作品。『ムービング』も最終的に「怖いな」と思ったのですが、『ムービング』の持つある種の怖さは意図して作られたもので反戦的なメッセージを受け取ることが可能ですが、今作はどこまで意識して作ったのかもわからないですし、好戦的な内容です(最後のメッセージが表面的な反戦なので、むしろ好戦的に見えてしまった)。作品全体にどこか万能感を伴う幼稚さがあって、日本もテントもバルカにめちゃくちゃ干渉してるし、宗教についても甘すぎるし(役所広司という説得力しかない俳優が言っても、やはり違和感が残った)、海外配信していいのこれ?と思ってしまいました。こういった作品が国内でヒットするのは、日本人が潜在的ナショナリズムを求めているような気がして、それが一番怖かったです。この物語を「冒険」と呼ぶこの国の倫理観が本気で心配になりました。

 

主人公の乃木も危ういキャラで、二重人格どうこうより、山本を殺したのが今も納得いってないです笑。確かにひどい男ですが、あんな小物を殺したってしょうがないのに殺すか?と思いました(別班てそういうもの…?)。刑務所にぶちこむとかじゃダメですか?乃木が国を「家族」扱いしてるのも怖いし(同じというわけではないけど『ムービング』のフランクに通じるなにかがある)。

あと薫さんが最終的に「待つ女」でお飾りでしかなかったのが悲しかったです。

 

ドラマの考察や謎解きは面白いけれど、考察や謎解きばかりになって、メッセージやテーマが浅いのはちょっと本末転倒かな…。驚きの展開を作るために、無理やりな状況設定になってしまっていたり。これだけお金も時間もかけて作られているので、もっと上を目指してほしいと思ってしまいました。伏線考察ブームより、物語やキャラクターの構造考察ブームが早く来て欲しいです(構造のほうが絶対大事だよ)。でも、編集の省略の仕方とかは結構よかったです。あと説明セリフが多すぎるのも気になったけど、誰も置いていきたくない日曜劇場としては仕方ないのかな。 

 

色々書いてしまいましたが、なんだかんだでYOUTUBEのナイツ塙さんの考察が本編よりも面白かったな、というのが一番印象に残ってしまいました…。自国のドラマで、これだけの人材が集まって作られただけに、どうしても厳しいことを書いてしまいます汗(期待があるからこそ)。日本のドラマも世界に配信してヒットできるようになるといいですね…(今年はハリウッドがストをして制作が止まったので、来年再来年は狙い時かも)。

 

『らんまん』

おもしろかったです。近年で最も端正でブレのない朝ドラだったと思います。万ちゃんすえちゃんの美しい関係が最後にこれでもかと咲き誇っていましたね。実際のモデルの方はここまで物分かりのいい方ではなく問題も色々あったようなので、あくまでフィクションとして楽しんだほうがよさそうですね。

『ブギウギ』も見ています。

 

あと、ドラマじゃないですが、配信で『Produce101 Japan the Girls』も今見てます。すごい身体に悪いのに(自律神経にまじで悪いです)、今回もつい見始めてしまいました。1pick(最推し)はまだ決まっていません。相変わらず残酷な番組です(でも見てしまう残酷な私)。

 

台湾ドラマ

『時をかける愛』

韓国リメイク版『いつかの君に』を1話見た時点で、「もしかしてオリジナルを見た方がいいかも」と思い、こちらの台湾オリジナル版を見ました。とても良かった!とにかくネタバレしないで見てください!

 

と言いつつ、ちょっとだけ書いちゃうけど、(以降軽くネタバレ)作品のイメージ写真とか見る限りだと、「青春時代の甘酸っぱい恋愛みたいな感じかなー、あんま自分と関係ないなー、ちょっと怠いなー」とか思っちゃってたけど笑、むしろ全然「こっち側」の人の話でした。普段、恋愛ドラマ、青春ドラマに乗れない人、もっと言っちゃうと忌み嫌ってる人に向けたお話と言っても過言ではないです。少なくとも寄り添ってくれてると思います。

 

ほのぼのとしたシーンが続いたかと思えば急に驚きの展開になる…というような緩急が面白く、メッセージもよく、演技も素晴らしかったので、未見の方にはおすすめです。

 

映画

君たちはどう生きるか』(2023年日本)

難解すぎてついていけないかも…と見る前は心配しましたが、一応楽しめました笑。ポニョとかよりは分かりやすいかと思います。宮崎駿の人生と数々の作品を思わせる内容で色々と頭を駆け巡り、「もう駿の新作映画を映画館で見るのは最後なんだな…」とさめざめと泣いてしまいましたが、実際にはご本人はまだまだやる気で次回作に取り組んでるらしいとの噂。90代のクリント・イーストウッドもまだまだ現役だし、駿は彼に比べればまだ若い!元気なうちは創作してほしいです。

 

『バービー』(2023年アメリカ)

『ムービング』もそういう傾向にありましたが、とにかく同じく全方位に疑問を投げかける作品で、さすがな面白さでした。

コメディーなので、小ネタが満載なのですが、思いのほか印象に残ったのは、ケンが「♪僕は何もできない~でも君の側にいたい~」(おぼろげな記憶で書いてます)みたいなどうしようもない曲を歌ってるっていうやつで、これ以前から私もJ-popでこういう曲にやや腹が立っていたので笑、非常に笑いました。「お金もないし、力もないし、地位も名誉もないけれど、君のこと守りたいんだ~」みたいな曲あるけど、「金力地位名誉ないのはいいとして、ないことを強調して弱さ演出すな!その態度で守りたいとか甘えでしかないわ!」と思っていたので(ご本人様ファンの皆様本当にすみません)、アメリカ男性歌手も同じような感じなんだということがわかってよかったです笑。

 

今年は3ヵ月ごとに記録をまとめてますが、予定通りいけば次回で2023年分も終わり!早い焦!

これから寒さ増す季節、みなさまご自愛ください!