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『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』が今日公開だよ

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日付変わって本日初日!

映画『空と風と星の詩人 ~尹東柱ユン・ドンジュ)の生涯~』が、シネマート新宿で公開となります。来週は大阪でも始まるのかな?とてもいい映画なので、おすすめです。

もちろん詩人ドンジュや彼のいとこモンギュ、そして日韓の負の時代について知る機会を与えてくれるっていうよさもあるのですけれど、映画としてよくできているんですよ。映画として、ということは創作部分もあるということです。

 

私は昨年12月に立教大学のイベントでひと足早く鑑賞し、ガツンと感銘を受けまして、ドンジュさんについて細々と勉強したりしてたんですげれど、尹東柱という詩人は人によって受け止められ方が微妙に違う。同じファンであっても違うんです。それは歴史的背景をはじめ様々な理由があると思うのですが、やっぱり一番は「詩」っていうもの自体に、解釈の広がりがあるからなのかもしれないですね。尹東柱は韓国の国民的詩人で、海外でも多くの人に読まれているから、もうこれ大変なことですよ。その数だけドンジュがいるってことなんですよ。

そういう人物を脚本に落とし込んで、ひとつの映画にしたっていうのがね。いま改めて「すごいことだな」と思います。劇中、尹東柱の詩もちゃんと織り込まれてますしね。しかも絶妙なタイミングで。ドンジュとモンギュとの対比のさせ方なんかも、エグいほどにうまいです。サブキャラの配置もいい。政治的な部分は冷静な目線を保ちつつ、クライマックスはとてつもなくエモーショナル。お芝居も演出も素晴らしくて釘付けでしたが、それと同時に、物語の構成が際立っている作品です。映画が好きな人ならば是非おすすめしたいですね。

まぁ本心は「みんな見たらいいよ」なんだけど(笑)、やっぱりきっかけがないと、なかなかこういう作品は観ないような気がするのでね。予備知識なしでも大丈夫。今を生きる観客のための映画です。

 

<追記>

シネマート新宿にて、見てきました!

初見時からだいぶ時間が経っていたのと、ファンのひいき目、そして製作者の生の声を聞いてしまったせいで、脳内で素晴らしさを盛ってるかもしれない…って実はちょっと心配してたのですが(苦笑)、やっぱりいい作品でしたね。前回見たのは何しろ大学の講堂みたいなところだったので、劇場で見るモノクロの美しさに息をのみました。その美しい画面がどんどん残酷になっていく。つらいね。そして、日本人として改めて複雑な思いにもなりました。

 

それでですね、私あんまり役者さんたちのお芝居について言及してないんですが、そりゃもう素晴らしいですよ。特に尹東柱を演じたカン・ハヌルと宋夢奎を演じたパク・ジョンミンは異なる輝き方をしていて、二人とも本当に素晴らしい。ドンジュとモンギュの世界へのアプローチがまるで違ったように、カン・ハヌルとパク・ジョンミンのお芝居もとても対照的で、そのどちらが欠けてもこの映画は成立しなかったと思います。

 

まず、カン・ハヌルね。

上にも書いたように、尹東柱は本当に多くの人々に愛される詩人だし、また時代を背負う人物です。映画では強く描かれていませんが、敬虔なクリスチャンだったことから宗教的な目線も注がれています。演じるのはプレッシャーなんてものじゃないですよね。日本語で演技する分量も多いですし。大変な役だったと思います。

劇中のドンジュっていうのがまた、常に悩んでる人なんですよ。いつも葛藤がある。なかなか詩人としての人生を歩めないこと。モンギュに対しての劣等感があること。そういうドンジュを、カン・ハヌルは繊細に演じています。ドンジュが無邪気に喜んでるのって、「読みたかった本が手に入った!」って時だけですからね。あとは思い悩んで、詩を書いて…を繰り返している。

実際の尹東柱もかなり本を熱心に読んで、詩作も試行錯誤を重ねていたようです。文学に対して、とてつもない情熱があった。写真の中の尹東柱は控えめに微笑んでいて、静かで優しい人だったという証言も多いみたいなのですが、一方で内面には燃えるものを抱えていた。そういう複雑さがなければ、詩は書けないんですよね。「たやすく」なんて書いてない。

カン・ハヌルは写真の尹東柱のイメージを壊さずに、私たちが見たことのないドンジュの顔を見せています。落ち込んだり、戸惑ったり、怒ったり…そういう表情のひとつひとつが積み重なって、クライマックスのシーンでのドンジュの説得力が爆発する。見ていて絶句してしまいました。壮絶でした。彼はこの作品で相当悩んだんですよね。心を病んでしまうほどに。「その苦しさがあってこそ」とは決して言いたくないけれど、画面の中に確かにいるのは、表現者として深く葛藤する若き詩人で、それはやっぱりカン・ハヌルという俳優が心血を注いだから生まれたものなのだと思います。

 

そしてパク・ジョンミン

静かに燃えるドンジュに対して、モンギュの圧倒的な生命力ね。モノクロ映画なのにモンギュは色彩にあふれているんですよ。誰もがその名を知るドンジュ役とは逆に無名だった人物で、しかもドンジュが絶対に追いつけないと思うほど魅力的に見せなければならないっていう難しさがあったと思うのですが、見事すぎるほどに成功しています。「こういう青年がいたのだ」と全身全霊訴えるようなお芝居でした。モンギュの山場も圧巻です。

 

あとは特高を演じたキム・イヌ、ドンジュとモンギュの同級生役ミン・ジヌン、日本人女学生役チェ・ヒソ。このお三方も、印象に残りました。

キム・イヌとチェ・ヒソが演じるのは、日本人役でかつ架空の人物。見れば「日本語が上手いだけでキャスティングされたわけではない」ということがすぐにわかります。誠実にその演技力を発揮していました。そしてミン・ジヌンのひょうきんさね。彼がいなければ、観客は息をつく隙もなかったでしょう。

 

この映画の感想は、特に日本人は気軽に言いづらいっていうのがあって、私も今めちゃくちゃ悩みながら書いているんですけれども。映画は娯楽ですし、悩んでまで書かなくてもいいとは思うんですよね(笑)。皆が感想を表明すべきだとか、ましてや感動すべきだとかは全く思わないです。ただそうすると、この映画の評っていうのは、ものすごく限定された人たちが発する、難しかったり、ある種の型にはまったものが多くなってしまう。それらはもちろん必要だし有難いけど、映画は大衆の娯楽だから、それだけじゃつまらないとも思ってしまうのです。なんの知識もない、カンハヌルが好きだという理由だけでこの映画を見た大衆の一人が、拙いながらも色々考えてみるっていうのは、たぶんこの映画が目指すところのひとつでしょうし、まぁいいんじゃないかな、と自分なりに挑戦してみました。結局は型にはまってしまったな。人間って心動かされると何かしたくなってしまうんでしょうね。(2017/7/25)

 

12月に立教大学で見た時の感想など。

mikanmikan00.hatenablog.com

 上の続きですが、パネルディスカッションの内容も多く書いています。ネタバレ度は高いです。一部追記あり。

mikanmikan00.hatenablog.com