お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

2023年4月~6月 印象に残った作品

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こんにちは!

またも時が流れてしまいましたが、記憶をたぐり寄せての投稿です。

 

韓国ドラマ

Netflix『ブラッドハウンド』

とてもおもしろかった!

優れた映像フィクションが、冒頭の数分で主人公の性格や舞台設定をすっかり見せてしまうように、この作品も1話の冒頭の5分くらいで主人公ゴヌの優しく強くてかわいくてひたむきに頑張っていることやコロナ時代が舞台であることがささっと描かれていて、すぐに主人公の味方となって物語に入ることができました。相棒ウジンのキャラもすごくよくて、ゴヌと相反するおしゃべりでお調子者の性格ながら、ボクシングだけでない心の共鳴がさっと始まる感じが伝わってくる。とにかく最初から安心して見ることができます。

金と暴力の激しいお話なので、序盤に安心感がないと見るのがキツかったはず。

 

で、このドラマは、映画『ミッドナイト・ランナー(青年警察)』のキム・ジュファン監督が演出とのこと。男性同士の描き方が相変わらずうまいですよね。ゴヌ・ウジンのバディだけでなく、アジョシ達のバディ、悪者達のバディとかも出てきて、バディだけでも色んなパターンがあるのだなぁと感心させられました。もちろんゴヌ・ウジンも青年警察とはちがう凸凹ですね。

 

あと、印象に残ったキャラはゴヌのお母さんで、この方すごい苦労してるし、ひどい目に遭わされて大変なんだけど、最高すぎる息子がいたり、息子経由でお金持ちに助けられたり、かなり運もある人だなと思いましたね。それが妙に心に残った笑。

 

キムセロンさんが降板したのは本当に大変だったと思うのですが、実際に見てみると「急に消えた感は否めないが、まぁこういう感じで消える人もいるかもしれない」といった感じですごく工夫を感じました。最後の後ろ姿のショットはもしかしたら別の人で後から撮ったのかもですね。

 

Netflix『良くも、悪くも、だって母親』

サスペンスシーンはすごくおもしろいんですが、コメディシーンがめちゃくちゃコメディすぎて少し困惑しまい…。でも、なんだかんだで最後まで見てしまいました笑。実際の人生も実はあのくらいシリアスとくだらなさとが混在しているから、リアルといっていいのかもしれないと思ったりもします。

 

お母さんが主役の物語なわけですが、このオンマは最初はホンワカだったのに、夫を失ったあと息子を育て上げるためにスパルタ方式の人になってしまうんですよね(もとから資質はあったのかもしれないけど)。勉強のためにご飯を食べさせなかったり、虐待レベルで息子を育ててしまう。で、当然のごとく息子とは溝ができちゃう。

それが色々あって、息子との関係を修復できる機会を得たのに、体が不自由になった息子にまたスパルタ方式でリハビリさせてしまうんですよ…。息子のために鬼になる。

見てると「またこんな鬼指導してどうするのさ…」とちょっとイラついてしまいましたが、これも現実で考えたら、人間なんて早々変われないからこっちの方がリアルな気もします。

 

しかも、その息子も実は大義のために、愛する彼女に対して鬼のような別れかたをしており、かなり似た者親子だなと思いました。これも実際にありそうな親子の似方です。

 

オンマが病気の設定などにせず、最後はオンマ含めみんなで幸せに暮らしてほしかったけど、そこも現実の反映なのでしょうか。オンマにいてほしい時にオンマはもういない。

 

原題は『悪い母』で、このままのタイトルでも「良くも」の意味合いも見ていれば必ず受け取るから、わざわざ邦題に入れるのはちょっと無粋?って最初は思ったけど、あまりにドタバタするので、もうタイトルなんてなんでもいいか…これもアリなのか…?と思ったりしているうちに見終わりました笑。

 

Netflix『医師チャ・ジョンスク』

こちらも面白かったです。SNS上でジョンスクの夫に対して「ひどいけど憎めない」というような感想を何度か見かけたんですが、私は純粋にひどいと思うし、憎めます笑。あの夫は本当にひどいよ…。義母も相当ひどいし。

 

それに対してジョンスクさんは本当にほとんど完璧な人ですよね。夫選び以外で、愚かな言動がほぼないと言ってもいいくらい。『良くも、悪くも~』のオンマみたいに見ててストレスは感じません。でも、その完璧さが夫と義母をつけあがらせていたというのが、とてもキツイ設定です。重い病気にもなっちゃって、しかもそのきっかけは実母が良かれと思ってくれた漢方?で肝臓が悪くなるっていう、こちらもキツイ設定。ジョンスクさんは薬が必要なほどの疲労状態だったから、病気はむしろそっちが本当の原因だとは思いますが。

 

『良くも、悪くも~」のオンマは孤独ゆえある意味悪になったけど、ジョンスクは孤独ゆえに善にまい進してしまっていて(もとから性格も頭もよかったんだろうけど)、母親の孤独が重く描かれる2作品でしたね。2人とも夫が何も背負わなかったために(モラハラで背負ってないのと亡くなって背負えないという違いはあるにせよ)、ひとりで全てを背負うことになり、方向性は違えども長期間自分をどこかに置いて生きるしかなかったというのは見ててつらかったです。しかしいまだ現状は多くの母親が、程度の差はあれ同じ状況にいるかと思います。

 

2人とも大きな病気をしているというところも共通していて、それが生き方を変えるきっかけにもなってくるのですが、病気がないと路線変更できないのか?と癪に思いつつも、病気になったからこそ「自分の人生を自分のものにするぞ」と奮起するのは説得力がありました(個人的にもこの気持ちはすごくわかる)。もうこういうのは自分で奮起しないと始まらないですから。

 

ジョンスクさんのような再出発には希望がありますが、彼女のようなキャリアの下地や資金がない場合には、どんな再出発ができるのだろう。

 

Netflix『サイレン』

警察、消防士、軍人、アスリート、SP、スタントの女性たちがチームとなって戦うサバイバルゲーム。ドラマではないのですが、すごくおもしろかった!

同じ肉体を使う仕事でも、職業気質というか、優先順位や哲学がそれぞれ違うのがとても興味深かったです。

 

特に印象に残ったのは、軍人の資金の使い方。勝ちたいがあまり、食べることを我慢して武器を買いますが、スタミナ切れで集中力を欠くことになり、結局負けてしまいます。

これは軍人が自分を犠牲にしてでも「勝ち」にこだわる教育をされてるように思えてなりませんでした。ギリギリでも突き進むしかないと体に染みついてしまっている。自分の安全やセルフケアを考慮する消防士やアスリートは、チーム力も高く、緊張状態でもどこか余裕をつくる努力をしていたと思います(社会的にも憧れられやすいのもよくわかるし実際とてもかっこいい)。どの職業も大変かとは思いますが、やはり軍人が一番えげつないことを強いられるのだなと感じました。

警察の捜査能力の高さとか、スタントのアグレッシブさとか、SPの存在を消してる感じとかも、なるほど~ってなるし、みんなかっこいいし、接戦だし、見てるとアドレナリンが大量に出てきます。

 

楽しみなあのドラマシーズン2

あと、韓国ドラマといえば、『イカゲーム2』の新しいキャストが発表されまして、なんとあのカンハヌルさんが出演するそうで!今から楽しみです!

私はハヌルペンではあるのですが、特にハヌル氏のクソ野郎役が大好きなので、イカゲームではその可能性が十分にあり大変楽しみにしております笑。あのゲームに参加すると、クソ野郎はよりクソに、普通の人もクソ野郎に変わらざるをえないので、どのクソ野郎パターンでもいいので待っています笑。ミセン以来のシワンくんとの共演も嬉しいですね。

シーズン2もビョン様レベルのサプライズキャストがこないかな~。

 

日本ドラマ

テレビ朝日『日曜の夜ぐらいは…』

おもしろいんだけど、全編通して切なすぎました。若者たちが主役なのに、なぜこんなにもつらいことばかりなのか(坂元裕二の『いつかこの恋を思い出して泣いてしまう』を見た時も同じこと思った)。でもこれが、同時代の反映ですね。コミュニケーションの欠如と渇望がひしひしと伝わる人物描写で、一応前向きに展開していきますが、「宝くじに当たらなかったらこの人たちはこの笑顔を得ることはできなかったんだな…」と思うとやるせないし、私も宝くじを買うしかないのかなと思ってしまいます。

 

物語の終盤、主人公サチがそれぞれのささやかな幸せを想像していくのですが、サチたち女子3人がウェディングドレス姿で登場して、みねくんに笑顔で駆け寄るっていう想像まであってかなり驚きました。本当にずっと一緒にいたいんだろうし、これ以上人間関係の広がりみたいなものも求めていないんだなと思うと胸に重いものを感じます。思い詰めているというか。そもそも想像でしかハッピーエンドを補完できないのが悲しい。

 

で、最後に主人公たちは「生まれ変わるならまた私だね」って言うんですよね。

昔『母さんに角が生えた』っていうキム・ヘジャさん主演の韓国ドラマがあって、それこそ中高年女性の再出発を描いた名作なんですが、いろいろあって自己実現のスタートを切った主人公は最後にそれでも「もし生まれ変わったら違う人生を生きたい」って言うんです。

『日曜の夜~』の最終回を見た時に、『母さん~』のラストを思い出したんですが、どっちがより欲を持っているかというと『母さん~』の方な気がします。私はこの母さんの率直な意志みたいなのが好きだったんですよね。

自己肯定や満足感は大事ですが、この若さで、この境遇で、今の自分を肯定すること自体が物語の到達点になっているというのが、今の時代の生きづらさを表しているような気がしました。

 

BS『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』

映画的手法を使って、家族のザラザラとした「美しくないところ」を描いているのがすごくよかった。実在の家族がモデルという条件のなかで、特に主人公のダメなところとか、家族に対して当たりがきつ過ぎるところとかを、むしろ避けずに見せているんですよね。「美しくないところ」を描いたことで、この家族の立体感のある美しさが伝わってきました。

 

日本テレビ『だが、情熱はある』

なぜ彼はあんなに若林に声と話し方が似ているのですか?似すぎて怖かったです笑。山ちゃん、しずちゃん、春日もすごく似てて、つい見てしまいました。日曜日に前述の2作品も合わせて3つのドラマが同時間に放送されていたのは、どうにかならなかったのか。TVerとか録画とかあるけれど、それでもドラマ好きはみんな困ったと思います笑。

 

テレビ西日本Netflix)『めんたいぴりり』/2013年

博多で明太子を作り売り始めた夫婦の物語。何気なく見たのですが、すごく興味深かった。というのも、この夫妻は植民地時代の釜山の日本人街で生まれ育っていて、そこで食べた明太子(ミョンテ)が忘れられず、引揚げ後に試行錯誤して「あの味を作りたい」となった人たちなんですよね。

韓国の作品で植民地時代が描かれることは結構ありますが、日本人の視点で描かれることが少ないのでしっかり見てしまいました。韓国では当然苦難の時代ですが、この夫婦にとってこの時代の釜山は「楽しかった子供時代を過ごしたふるさと」になるんですよね。こういう日本人は多かったのかもしれません。

ただ、もちろん戦争描写はシリアスでしたし、戦後何十年もたった後に釜山を再訪する際に妻が「私たちが釜山に帰ってもいいんだろうか。受け入れてもらえるだろうか」と不安になる描写があり、富田靖子さんがかなり繊細に演じていました。

基本は朝ドラみたいなコメディなんですが、植民地時代を日本人側から扱った数少ないテレビ作品だと思います。

 

アメリカドラマ

HBO『メディア王(サクセッション)』シーズン4

圧倒的な展開続きでファイナルシーズンが終わりました。この作品の凄いところは、あくまでも登場人物の心を言動からしっかり伝えきっているところ。例えば人が悲しい時に直接「悲しい」とセリフやナレーションを入れたら、わかりやすいけれど、現実には悲しい時に悲しいと素直に言う人は少ないわけで。でも物語の構築が弱いと、どうしてもそういうわかりやすい説明が入って来てしまいます。

この作品は一人ひとりのキャラクターに強度があるので、そういう説明を排しても、心情を表現することができるんですよね。一方で、そういう作りなので、ひたすら登場人物たちを見て行かなければ理解ができないし(笑っているけど実は怯えてる…みたいなわかりにくいことが多発する)、キャラクターを安易に決めつけることもできません。政治的には保守のファミリーを描いていますし、そこに対する批判も大きく込められていますが、かといってリベラルを推す作品かといえばそうではなく。あくまで人間についての、人間の愚かさについての物語で、勝ち負けに取りつかれた父親からの呪縛と自身のエゴを起因とする葛藤に襲われ続ける子供たちの、壮絶なもがきを見せつけられました。

大富豪の息子の一人ローマンが特に嫌いだったんだけど笑、最終回の彼の最後のシーンですごく好きになりました。彼は負けることでぬかるみから抜け出すことができたのでしょう。視聴者は彼のような「勝者」をずっと求めていたと思います。

 

映画

『ザ・ホエール』

映画は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と『ザ・ホエール』を劇場で見ました。すごい刺さったのは『ザ・ホエール』の方なんですが、SNSとかで挙げられている上半期映画ベストとか見ても、入れてる人が全然いなくて少し寂しい…笑。確かにすごくいいか?って言われると違う気もするんですが、あの主人公の優しいけど自分勝手な感じがいかにも人間らしくて目が離せなかったです。娘の辛辣なまでの率直さを肯定するのも、自身が自分の心に率直になり男性の恋人に走ったことを肯定したかったからかなと思ったりしました。すごい自分勝手だけど、娘や元妻以外でこの人のことを責められる人はあんまりいない気がするんですよね。

 

4月~6月はこんなところでした!

毎日なんだかすごい暑いので、みなさまご自愛ください^^