お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『マレフィセント』

☆ネタバレしています☆

 

おとぎ話なんだけれど、扱っているのは女の美しくて悲しいリアルな感情。アンジェリーナ・ジョリーはちょっとした表情で、複雑な気持ちを繊細に表現していますね。本当に素晴らしかった。

 

人間の最上級につらいことのひとつに、自分の子供がひどい目にあうことっていうのが、あって。しかも自分のせいで、ということになれば、もうどうしたらいいんだ。

同じ悲劇が後に彼女自身に返ってくるって展開は皮肉です。

 

何よりこころを打つのは、マレフィセントがオーロラの成長を見守る中で、見せる母性。危険から守るためだといいながら、へき地でほったらかしにされ育ってきたオーロラ姫は孤独なんですよね。マレフィセントにはそれがちゃんとわかっていて、そっと陰から見守り続ける。

オーロラもまた誰かが見ていてくれている、という安心感があったからこそ、健やかに育ったのだと思います。

 

我を忘れる程の怒り、慟哭の中で、人は本当に本当にひどいことをします。

だけれどたいてい人間はずっと悪者ではいられないのです。いい人だけでも、もちろん。

 

自分の感情に振り回されない為には、自分でさえ気づいていない感情もを察して、時には気持ちを肩代わりくれる理解者が必要であり、あのカラスの相棒がいてくれたことはマレフィセントにとってとても幸運なことだったとおもいます。(逆に王はその不在の為に自滅してしまいました)

またこの二人が恋愛関係にあるわけではない、というのが素晴らしかった。恋愛はエゴから逃れられないけど、この映画ではまさにそれが諸悪の根源だったわけですから。

 

物語の最後、陰陽あわせもった者が世界をひとつにしたのです。みたいなナレーションがあって、それは字面の正しさとは違った本当に慎ましい優しさが感じられました。じんときました。

市井に生きる普通で移ろいやすい私たちを肯定してくれる。そんな気にさえさせてくれる暖かさがそこにはあったからです。

 

女優さんのプライベートを引き合いに出すのはあまりよくないことかもしれませんが、世界中から養子を引き取り、母となった彼女と重なったのはいうまでもありません。