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お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『トッケビ』 心の健康とささやかな励まし

☆ネタバレしています☆

 

トッケビ』はあらゆる意味でユニークなドラマなのですが、驚いたシークエンスのひとつに、トッケビと死神が落ち込んで精神安定剤を飲むっていうくだりがありました。コミカルに描いてますが、ドキっとした。序盤の方の回だったと思います。いや、韓国ドラマもそうだし、色んな国のドラマでも安定剤って結構出てきたりするけど、トッケビと死神がすごくナチュラルに薬を飲んでるんですね。調子が悪いとか言って。鬼と死神よ?

 

で、トッケビ達が薬を飲んだ直後に、ヒロインであるウンタクがバイトしてるシーンに替わる。

バイト先のチキン屋にあるテレビでは、「家庭の医学」的な情報番組がやっていて、「体の健康も大事だけど、心の健康も大事ですよ」みたいな話をやっています。その番組の中で喋っているのは、命を授ける神とおぼしき女性(そういうキャラがいるのです)。「躁うつとか神経衰弱とか不眠症とか、そういう病に現代人はかかることがある」ということを続けて解説する。

すると、トッケビと死神のシーンにまた切り替わり、今度は視聴者に寸劇っぽく症状例まで見せます。「躁うつの症状として衝動買いをすることがあるし、神経衰弱から心気症になることがあるよ」っていうのを面白演出で。こんな人は周りにいませんか、と。

 

そう、『トッケビ』のテーマのひとつは、メンタルヘルスなのです。

このウンタクのバイト先シーンで流れる情報番組でも「メンタルヘルス」っていう言葉が(確か)はっきり出てたはず。 

トッケビは困ったり追い詰められた人の背中を少しだけ押すようなことを使命としてるんだけど、自殺寸前の人を助けるっていう直接的な描写が何度もある。幽霊となった精神科医に、死神がカウンセリングを受けるシーンもありました。

 

物語の後半ではウンタクまで心がさびれて、薬を飲むことになる。そして飲む必要がなくなった時に、彼女は医師にこう言います。

「私を生かしてくれてありがとうございます」

 

トッケビ』では、死神が出てくることでもわかるように、「死」が大きなモチーフとなっています。市井の人々の様々な死が出てくる。死に方も、それまでの生き方も、死の受け止め方も本当に人それぞれです。

それを見て思い知らされるのは、「誰にでも死は訪れるからこそ、与えられた生を精一杯生きねば」ということ。

 

だけど、心が元気でないとそれはできないんですよね。死は肉体だけに限らず、精神にも訪れることがある。心と体はつながっているから、心が健やかでなかったり、弱ってしまうと、肉体は生き抜くことができません。その最悪のケースが自死です。

このドラマはそのあたりをものすごく丁寧に、真摯に取り扱っていました。1000年の時を超えたファンタジーで、稀代のラブストーリーで、深淵なミステリーでもあるのに、更に現実的な問題を入れているのはすごいことだなぁ。心の健やかさの重要性みたいなものがじわじわ伝わるようになっていました。

 

登場人物たちに薬を飲ませているのは、もちろん薬自体を安易に推しているわけではなく、精神衛生に対する啓蒙ですよね。無理をして危険な状態になる前に、しかるべき治療を受けることも、また大事なのだ、と。 ウンタクが医師に感謝したのも、そう考えると非常に意味深いです。

 

生きることは楽しいばかりじゃない。だから人間にはトッケビが必要だし、トッケビトッケビのままなのでしょう。私たちには助けが必要なときがある。そっと背中を押してもらうほどの、小さなようで大きな助けが。

 

偶然分け与えられたサンドイッチ。知らない誰かのさりげない言葉。 

この世界に私たちをつなぎとめているのは、そんなささやかなものなのかもしれません。その小さな励ましに触れた瞬間のことを、「奇跡」とか「神様」と呼ぶのだと、このドラマは言います。

一方で、私たちはそんな瞬間を待つだけでなく、自ら起こすこともできる。

トッケビ』は「生きるのはこんなにも大変で、命には限りがあるのに、なぜ生きねばならないのか」という問いに、美しくあらがった物語なのだと感じました。

 

 

さくっと書くつもりが、まじめになってしまった!

えーと、ドクファとキム秘書が大好きでした(笑)。ドクファは聖なる愚者的存在なのかな。でも成長していくのよ。そしてサニーがあんなにカッコいい女性だとは。本筋に全然触れてないけど、ほんとに繊細でいいドラマでした。笑って、泣いて、切なくてね。劇的なのに大げさじゃない。伏線を張り巡らせながら、決してごちゃごちゃさせないバランス。高麗、ソウルときて、ケベックを舞台に選んだのがまた秀逸すぎる。

 

次は『麗~』あらすじ&感想の続きに戻ります。本気のミーハーに戻ります。第17話から!

 

 

私は「ささやかな励まし」を描いた物語が大好きなのですが、前にもそんな感想書いたなぁ、と思ったら結構あった。なんとなく張っておく(笑)。おんなじことばっかり書いてるなぁ。

mikanmikan00.hatenablog.com

 

 

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今までどれだけ「ささやかな励まし」をもらってきたことだろう。今月は特にたくさんいただきました。ありがとうございました。