お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『月の恋人』 18話 愛されたかった息子 愛せなかった母

☆ネタバレしています☆

 

やっぱり最終回前に書いて整理しておきたいので、『月の恋人』を優先させよう。

 

第18話は大きな出来事が次々起こるフラフラ回なんだけど、物語的に一番の山は皇后ユ氏が亡くなったことだと思います。ここでさらにドライブがかかる。

 

皇帝になったワンソは、同腹の弟ジョンを皇宮から追放。母方一族の地での幽閉を命じます。「松岳に戻れば殺す」と。ヨからの譲位を疑っているという理由で、死刑の次に重い刑に処す。

まぁ譲位の件でジョンは文句を言ってましたけど、一番はやっぱり母親を独占したいんですよね、ワンソが。

 

ソとジョンはここまでジワジワ敵対してきたけれど、ソがジョンを憎むのは母親の愛情を一身に受けてきたからっていうのが大きい。ソは以前「母を独り占めするジョンがうらやましく、消えてくれればいいのにと思ってた」みたいなことを言ってたし(14話)、想像以上に嫉妬がある。それで、ここぞとばかりに、ジョンと母を切り離します。

 

一方、母である皇后ユ氏は、ヨが亡き今、ジョンにしか愛情を注げないので、ジョンの追放を聞いた時点でショックのあまり倒れてしまう。「ジョンに会いたい」「ジョン」としか言わない母。それでも看病すら他の誰にもさせず、ワンソは完全に母親を自分のものにします。

 

ソから顔を拭かれることも嫌がり、水も粥?も受け付けず、衰弱する皇后ユ氏。

「見てください。もう完璧なヨも、お気に入りのジョンもいない。私だけです。私が王になり、母上を守っているのです」と訴えるワンソ。

 

かつて母のために、命を懸けて母の手下を皆殺しにし、それでも拒絶されたソは、

「今日を覚えててください。母上は私を捨てましたが、私は去りません。これからは私だけを見つめさせます」

って宣言したんだけど(4話)、本当にその通りになった。力づくで。

皇后ユ氏はもはや言葉も発せず、うなりながら、ワンソをじっと見つめています。

 

母はソの話をにらみながらも静かに聞く。

「母上のために高麗で一番大きく立派な寺をたてます。

それから私たちについての話を広めます。いかに母上は私を想い、私が慕っていたか。私たちは愛し合った母と息子になるのです。皆が知ることになるでしょう。私は母上の唯一無二の息子になります」

ここで皇后は途中で大きく反応する。

もう話す力がない皇后は「それだけはやめて」とばかりに呻きだす。

「これが、母上に捨てられた私の復讐です」

泣いて訴えるソに、皇后ユ氏は手を伸ばし、息子の頬に触れる。そしてその瞬間、皇后は苦しみの中で亡くなります。

亡くなって初めて母の手を握り、慟哭するソ。

 

皇后ユ氏の最期の心情って、言葉もないしすごく難しいんだけど、私なりに考えてみると、ワンソの中に自分を見たんじゃないかと。私は以前、皇后ユ氏は自分を最も愛している人物だって書いたんだけど、そうじゃない。この人は本来の自分を最も憎んでいる(というか自分に対する愛憎を両立させている)。

ワンソが憎いのは、自分の嫌いな部分を最も受け継いでいるから。考え方が実は似てるし(雨乞いの時の考え方なんて、まったく一緒だった)、皇后の醜態を顔の傷という形でいつまでも背負っている。完璧を求めるヨや、無垢なジョンは愛せるけれど、自分の正体を思い出させるソはどうしても愛せない。皇后自身も、愛されずに育った可能性大ですね。だから皇帝に愛されることに誰よりもこだわっていた。

 

皇后が最期に向き合ったのは、一番自分に似た息子であり、自分自身です。

オ尚宮が亡くなる直前に「どれだけ孤独に逝くか死後も見守っています」って皇后は言われたけど、孤独な息子に復讐されたことで、自分の孤独に気づきながら息を引き取ったのかな。

あの、頬に手を触れたのは「ごめん」でも「愛してる」でもなく、「これが私であり、私の息子なんだ」っていう実感なのかなぁと思います。

うーん、違うかな。ここ難しいところね。

皇后ユ氏役のパク・チヨンさんの演技が本当に壮絶すぎます。ワンソもね。イ・ジュンギさんの山場の一つでした。

 

同じ母親でも、ヨ、ソ、ジョンで母親の人柄も関係性も違うのがすごいですね。家族の中でも立場や感情が違えば、別人。頼りになる母。恐ろしい母。優しい母。

 

ワンソにとって、母が顔を触ってくれたって物凄いことなんだけど、ヘスはそれを一緒に喜ばない。ジョンに母親を看取らせなかったから。ヘスは内緒でジョンに母危篤の知らせを送り、亡くなった母にも合わせています。

 

ワンソは「何故俺の味方をしない?あいつは可哀そうなやつじゃない。いつも見捨てられてたのは俺だ。俺だけで看取って何がわるい」みたいな感じでヘスに怒ります。

ソの気持ちもわかるし、ジョンがいれば母は一生ワンソを見ることもなかったでしょうからね…。でも、徹底しすぎなんだよ(この徹底ぶりが母譲り)。

 

ソは母親が触れた頬をヘスには触らせないし、「お前は俺を理解すると言うべきだった」と捨て台詞。ヘスとソにひびが入ります。ヘスはいつも「理解する」と言ってくれていたからね。母親っていう一番ナーバスな問題のところで、思ったように寄り添ってもらえないのは確かにつらい。それでもヘスはソを思いやってるんですけど。

 

これが結構チェリョンの件の引き金になったりしてるんですよね、たぶん。

ソはヘスが離れることを恐れ、ヘスを強硬的に守ろうと、このタイミングでワンムの水銀の件や、ウンの死につながったワン・ギュの乱の真相を暴く。とっくに知ってたくせに。過去の罪や今後の危険を理由に、チェリョンを処刑してしまいます。

でも、母のために人を殺しても愛されなかったように、ヘスのために人を殺しても愛されない。むしろ離別へと推し進める。そして、それが余計に怒りに変わって、「全部ウクが悪い」になってしまう。ウクも悪いんだけど。悪循環過ぎる…。

 

あとチェリョンの処刑は、自分の味方をしなかったヘスに対して、罰的な意味もあったかもしれない。そこまで言うと、ソを悪い人間にとらえすぎてるかもしれないけど…(苦)。

ソは皇帝となり、政略結婚を遂げ、どんどん孤独な立場に逆戻りなんですよね。だから、ヘスに対しては更に感情的になりそう。権力ありまくりなので、なんでもできるのが怖い。愛してもらいたかった母は、もう亡くなってしまったし。もはや愛してほしいのはヘスだけ。

もう一人の「ネサラミ(私の者)」ペクアは、暴走し始めたワンソにどう対応するんだろう。

 

これでヘスがジョンのところに行くってなったら、ワンソは滅茶苦茶怒るよなぁ。「ジョンのやつ、母だけでなくヘスまで!!」ってなりそう…。

このタイミングでウクとの婚姻話を知るとかも…。

血の君主街道まっしぐらしか見えない。

 

もう1回くらい最終週までに、内容整理のエントリ書きたいな。もうほんと自分のためなんですけど。ヘスのことをね。ヒロインだしね。

 

あぁでも今日の13話も見直すとやっぱめちゃくちゃ面白いな!

 

 18話は4話からの伏線がかなり多いです。

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