お出かけ手帳

誤字脱字病。書いては直す人生。

『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』 第17話を見たよ② ヘスとウクの高次元な会話

☆17話以降の展開を含めたネタバレをしています☆

☆まずはネタバレなしで見たほうが、圧倒的に面白いのでおすすめです☆

 

つづきです。 

 

あぁ、もう何度見てもヨの最期って胸に迫るものがある。

あのイケすかない極悪アイライン野郎がさ、泣いてさ、弱音吐いてさ…。ホン・ジョンヒョンは素晴らしいですよ(みんな知ってるだろうが、しつこく褒め称えたい笑)。

 

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そして、ワンヨはヘスに「お前が次の皇帝を選べ」って言ってるんだよね…。それで次の皇帝の名前だけ空欄になってる遺書だけじゃなく、筆も一緒に渡そうとしてるんだよ。ものすごい切実な顔してるんだよ。ヘスにその選択を託してるんだよ…泣(14話でソに「選べ!ヘスかワンムか」って威勢良く言ってた時のギャップを思い出して更に泣く)。

だから、ソの皇位奪還劇はとても強引であった一方で、ヘスはそうすることを許されてもいたのです。あの時、皇帝を選ぶことができたのはヘスだけ。

 

このドラマは、語っても語りつくせず、細部を拾っても拾いきれないよ全く…(前回の記事を書いてから、遅まきながらワンヨの筆に気づきました焦)。結構頑張ってみてるんですけどね、全然だめね。まだまだ見過ごしてるところが、必ずやたくさんあります。誰の立場で見るかでも、見る時のコンデションによっても、印象が違いますし。

そして、私は色々ここで書いてはいますけども、もちろんそれが正解だということではなくね。誰もが自由に見ていいのがテレビドラマですから。

これだけこねくり回してるのは、ただこのドラマが好きなのです。考えたいのです。語りたいのです(笑)。見当違いなところも多く恥ずかしいですが、作り手の意図をどこまで拾えるかっていうのが、受け手側が挑むべき戦いでもあります。

あと、誤字脱字が多いので本当にそこは申し訳ございません(爆)。たまに名前をはじめ固有名詞まで間違えたりしてて、ヒヤヒヤしながら直しています汗。

 

さて、「麗〜」は1話につき最大2記事までを基本方針にしていたのですが、そのルールを破る時がきました(「月の恋人」タイトルでも書いてるから、すでに破り気味だけど) 。

いま17話の後半について書いていますが、どう考えても分量が多すぎてこのままだとおかしなことに…苦笑。

 

そこで後半についてアップする前に1エントリを使って、考察したいあるシーンを見ていきたいと思います。

それは17話の最後の方に出てくる、ヘスとウクの会話シーン。2、3分ほどの静かなシーンですが、語るべきことが多すぎるのです。ちょっと今回は考えすぎかもしれないけど、とりあえず書いてあげてみる(笑)。間違ってるかもしれないが、ウクが見捨てられずこういう解釈になりました。

 

ワンソの即位後、かつて婚姻を約束するほどの仲だった二人が、久しぶりに言葉を交わします。彼らは出会ってからこの時点まで色々ありすぎるほどあり、同じ皇宮内にいながら、ここ数年はロクな会話もしていないはず。

 

ヘスとウクは察する能力が非常に高いので、会話の際はいつも言葉以上のメッセージのやりとりをかなりしています。一見ズレがあるようで、深いところでのコミュニケーションが成立してる。ついていくのが大変、というかついていけてるか疑問だけど、とにかく今回もすごかった(この二人は出会いから最後まで本当にすごい)。

 

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「ついに、あいつのところに。私には皇位と心を得るのは欲だと言ったのに、お前は皇帝の女人になった。俺はどう受け取ればいい?」

「あの方は正直でした。私も皇位も諦めたくないと。欲望も告白されました。私は理解しようと努力するほかなかったのです」

 

ウクは母である皇后ファンボ氏にも「ヘスが『すべてを求めたことが悪い』と言った」と訴えましたが(15話)、ヘスは言葉通りに「欲だ」とか「悪い」とは言っていません。

 

ウクが念頭に置いてるのは、13話でのヘスとの完全決別シーンにおける会話ですよね。

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「以前、おっしゃいましたね。松岳を去って暮らそうと。今ならできます。新皇帝なら許されます」 

「だとしても、別の問題が起きる。他に道はない」 

「私のために皇帝になると…皇子様は自分を欺いています。もう、以前の気持ちでは皇子様には会えません。距離を置きたいです」

「ソがいるからか?」 

「…一瞬でも、私の心に確信をもったことはないのですか?私を心から信じてくれたことは?」

「お前を取り戻す」 

「簡単ではありません」

 

道を逸らしたウクに「松岳を去って一緒に暮らそう」とヘスは誘い、ウクは速攻で断った。ウクにはウクの理由があり、ヘスを求めるからこそ、ヘスを信じたいからこそ、皇位を狙うことを止めるわけにはいかなかったからです。

 

しかし、その理由を知らないヘスは、ウクが皇位を狙うのは自分のためではなかったのだと感じる。「私と一緒にいることだけを望むなら、皇位争いをする必要はない。もう松岳を出よう」という誘いを断ったということは、皇位を狙う理由は別にある。ウクには野心があり、欲がある。この人は嘘をついている。もう一緒にいられない。

加えて、ワンソとの仲を疑われたヘスは、ウクを好きな自分の気持ちまで信じてもらえていないと悲しみます。あの流れならば、ウクから離れて当然だと思います。

 

ヘスは「ウクが皇位を狙わなければ、幸せになれる」と信じた人だし、基本的には「皇位と心」は両立しないと思っているはず(オ尚宮からも何度も忠告があった)。だから、今回皇帝になると本気で宣言したワンソにも「もう一緒にいられれば皇位はいらない、とおっしゃいませんね」と言ってるんだよね。

 

そのあたりのヘスの気持ちを理解しているから、ウクは皇帝の女人になったヘスに「どう受け入れろと?」と聞くわけです。「あの時お前は、皇位と心を欲しがった俺を拒絶したじゃないか」「皇位を獲った男と依然一緒にいるとはどういう要件か」と。

 

ウクのこの問いに対して、ヘスは「ワンソは正直だった」と説明します。

確かに、ワンソは皇位が欲しい理由と、それでもヘスにそばにいて欲しいという気持ちを、正直に話してます。ワンソが正直だったからこそ、ヘスも「ワンソと一緒にいたい」という正直な気持ちを優先させたのです。

(追記:だけど、ソが正直に「皇位も心もほしい」と言ったのは、ヘスがソを追いかけて行って「正直になって」と泣いたのが効いてるんだよなぁ。ソはヘスを守るためにヘスを避けてきたわけだし。このへん本当むずかしいなぁ)

 

 

でも、13話の話だけでいくと、ウクだって「皇位もヘスも諦めない」と言ってるのだよね。皇位を前にして姑息なやり方も嘘も多かったけど(ヘスはここを怒ったわけですが)、両方ほしいと言った部分は率直だった。だからこそ、ウクはここでヘスに「なぜ」と聞いてるはず。

ワンソだって、皇位はいらない→欲しいに気持ちを変えたのに。

それに、事情があったとはいえ、13話ではヘスもウクに嘘をつきました。

ウクがワンソと比べて正直でなかったのは、いつなのか。

 

ここからは私の妄想ですが、「あの方は正直でした~」とワンソについて言ってるのは、13話のウクと比べてだけではない。10話でヘスにプロポーズしたウクと比べているんじゃないでしょうかね。この言葉はそうも取れます。彼女は13話で既に、「あなたは私を本当に信じてくれたことはあったの?」って言ってて、親しかった頃のウクの気持ちに疑念がある。

 

ウクは秘密の洞窟で「皇宮を離れ黄州で暮らしたい」、つまり皇位はいらないから一緒にいたい、とヘスにプロポーズしました。その時点で嘘があったんじゃないかと、ヘスは指摘してるかもしれないのです。「あの方は正直でした。私も皇位も諦めたくないと。欲望も告白されました。」に対応するとしたら、13話のウクでなく、この時な気がするのですよね。ウクは「欲の世界から出て、静かに暮らしたい」(大意)と言ったのだから。

状況が変わったとはいえ、結局ウクだって皇位を欲しがったじゃないか、と。それに比べて、ワンソは皇位がいらない時はいらないと言うし、欲しい時は欲しいという。いつだってワンソは正直だよ、と。

ヘスはウクを責めているわけではありません。淡々と感じたことを話してる。

 

さらにディープな会話は続きます。

ここから17話以降のネタバレを含みます。

 

「いつも気になっていた。お前はなぜ俺が皇帝になれぬと思うのか…俺が皇帝の器ではないと判断を?

「そうではありません」

「では?」

「ワンソ皇子様は生まれながらに皇帝の星に。神聖皇帝もご存じでした。皇子様のせいではなく…順理であり運命です」 

「…皇帝の星?星ひとつのせいで…順理であり、運命?」

 

ウクの「いつも気になっていた~」という発言が、またとんでもなく大事でした。

なぜなら、ヘスは「ウクが皇帝になれない」とは今まで一度も言ってないからです。なのにウクは察してる。

(初見の時、私は「あれ?ヘスはいつそんなこと言ったっけね」ってポンコツよろしく呑気に流して書いてるんだけど、ウク暗黒化の動機のとてつもないヒントだった)

 

ウクは、「ワンソは皇帝になる」とヘスが思ってきたことに気づいています。9話でヘスから「ワンソに気をつけろ。行く手を阻んではならない。さもなくば皆死ぬ」と泣きつかれて警告されたことで、その真意を察してしまったのです。ヘスは自分の警告の背後の意味を、ウクが気づいているとはまだ知りません。

 

雨乞い成功後(同じく9話)から、ウクはワンソに対してざわつきが強まってるんだけど、この警告のせいで対抗心に拍車がかかった。ウクはヘスの中の人が未来人だなんて知らないので、「能力的に自分はワンソより劣ってると、ヘスに思わてれるんだな」っていうところから嫉妬が始まるのです。ここで「俺が皇帝の器じゃないと思ってたのか?」と聞いているのは、そういう意味からきているのだと思われます。

13話でウクがヘスの誘いを断ったのも、ワンソを皇帝にしたくなかったから。ヘスが皇帝になると思っているワンソに、負けるわけにはいかない。そのためには自分が「誰も攻撃できぬ傷のない皇帝」にならなければ。

 

だから、10話ウクが「皇位はいらない」と言ったのは嘘と、もしヘスが指摘したのだとすると、それは正しいのです。婚姻話を持ち出した時に、100%の気持ちで「皇位はいらない」と思っていたか、というと違う。野心はゼロではなかった。ウクも「ワンソは正直だったから、理解した」というヘスの発言に対し、「俺も正直だった」とは反論しません。ウクは13話で嘘をついただけじゃない。皇位に心残りがありながら、ヘスと結婚しようとしていた。あの頃から、ウクには嘘があった。

その小さな闇にいち早く気づいたのがヨンファでした。なんなら、雨乞いの時点で気づいてる。彼女は11話で雨乞い直後を振り返り「私は見ました。兄上は皇位を求めています」って断言してるのよ。そして、それも正しいのよ。

 

「 皇子様のせいではなく…順理であり運命です」

 

17話の会話に戻ると、このあとのヘスがまた凄くて、「そうではありません」って言うんだけど、「皇帝になれないと思ってた」こと自体は否定しない。ヘスは正直だから。ウクの「俺は皇帝の器でないのか?」という部分を否定します。ワンソが皇帝になり、ウクがなれないと思っていたことは否定しないのです。しかもその理由は能力ではなく、運命なのだと。ためらいながらも、ヘスは正直に言ってしまう。

戸惑いが止まらないウク。

 

「…皇帝の星?星ひとつのせいで…」

 

このシーンで、意図せずヘスは2つの点でウクを大否定する。すごく傷つけてます。

 

ひとつは、ウクのヘスに対する気持ちを否定したこと。

(以下はヘスの指摘する嘘が10話まで波及してるという前提で書きますが、「ウクは正直でなかった」というメッセージは確実にあるし、ウクもそう受け取ったはず。このあと流れる回想内容を見ると、ウクは少なくとも「どこまでが正直で、どこまでが嘘だったか」という問題について考えていると思う)

 

そりゃ、ウクの皇位への野心はゼロではなかったでしょうが、それってそんなに責められることでしょうか。ウクはそれでもヘスと生きようとした。グレーな部分を残しつつも、自分の欲しいものを得るために、皇位への野心に蓋をしたことは、そんなに悪いこと?(ただ、ヨンファを暴走させた引き金にはなってるので、すごく微妙なところではあるけど…。物語の流れは「それでも正直に生きるべき」に向かうし)

しかも、浴穴(秘密の洞窟)は何のしがらみもない正直になれる場所だから、あのプロポーズの瞬間のウクに、やっぱり嘘はなかったと思うんですよね。

 

ウクはヘスとの久しぶりの会話のあと、一人書斎でヘスと過ごした時間を思い出す。一緒に雪の上を歩いたこととか、腕輪をプレゼントした時のこととか。

楽しい思い出を回想するのはちょっと早いのでは?と初見の時は思ったんだけど(最終回を含めてあと3話残ってる)、ウクがここで思い出すのには意味があった。ウクが大切にしていた思い出までも、ヘスの発言によって否定されてしまったのだよ。

 

ウクはヘスが本当に好きでした。そこに嘘はない。でも、ヘスに遠回しに「あなたは正直ではなかった」「皇位はいらないと言ったのは嘘だった」と言われ、あの頃ヘスに向けた気持ち自体を完全に否定されてしまったと感じてるんだよね。だから、ヘスに贈った腕輪を潰す。ヘス冤罪事件以降のウクの話なら、ここまでにはならないと思うのです。自分でも暗黒化してるのは分かってるから。ウクの最も守りたい場所を、ヘスはある意味奪った。 

(追記:ヘスは13話の時点で「皇子様は自分を欺いています」と言ってるのだよね。「自分に正直ではない」と。ただ、今回状況が変わり、ウクの受け止め方はかなり深刻になってる。

ヘスもワン・ゴン崩御のときに嘘をついたけど、自分を欺きはしなかった。彼女はやっぱり心が聡い人だと思う。) 

 

もう一つは、ウクのこの長きにわたる皇位獲得への努力と我慢を、根底から否定したこと。頑張った者、能力がある者が勝つ、という世界観とは全く違う尺度で、へスは皇位争いを見ていました。「皇子様のせいではない。運命なのだ」というのは慰めにもなりえますが、ウクの苦労を一瞬にして打ちのめすほどの破壊力がある。

ウクが受けている打ちのめされた気持ちは、挫折者がみんな味わうある種普遍的な感情な気がしますね。頑張ったのに、全てを運のせいにされるのは辛すぎる。しかも、ウクが皇位を狙った動機は外ならぬヘス。

 

ヘスは自分の嘘が一因で、ウンとスンドクが死んでしまい、ワンソとも離れることになったと思っています。だからきっと余計に、正直さにこだわっている。自分にだけじゃなく、他者にも正直になろうとしている。

だけど、その正直な態度がウクを傷つけました。

ウクの心に怒りの火をつけたのは、ヘスの正直さなのです。

 

ワンソやヘスと違って、感情や行動理由が幾重にもある人だから、ウクをどうとらえるかっていうのは難しいです。ウクの努力は、人の道を踏み外した努力だからなぁ。ここから更に自分を見失っていくし。ドラマの発するメッセージを考えると「この人はこういう人です」と決める必要は全くないのですけど…。

 

 

つづきます。

次で17話は終えます!

(追記:終えてません…)

 

以下雨乞い成功後のウク暗黒化の歴史。ウクのヘスに対する心の動きに触れているエントリをざっくり集めてみた。皇位絡みだともっとありますね。

なんだろう、この貯金がたまってきた感のあるラインナップの数は(笑)。

 

 ワンソの雨乞い成功後のファンボ兄妹の反応

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 「第4皇子様に気を付けて」

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ウクのプロポーズ回

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ウクとヘスが別れることを決定づけた悲劇回

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ウク&ヘスが完全決別

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「スは…私がすべてを求めたことが悪いと。でもそれは何故です?家と心を守って何が悪い」

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